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2017年08月19日21:02

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月岡芳年 妖怪百物語

「もうし・・・。そこ行くアナタ。いえいえ、振り向きなさいますな。そのままで。ちょっと私の話を聞いちゃくれませんかねぇ?・・・おやまあ、察しの宜しいことで。仰るように、私は人ではございません。・・・いえいえ、私などは、たかが先触れ。小者の人外にございます。・・・いえね。私の仲間のお話を、ちょっと聞いて頂けないかと思いまして。・・・・いえいえ、けっして振り向きなさいますな。え?私の正体が気になると?ハハ・・いえいえ、どうぞ、そのまま、そのままで・・・。」

場所は、太田記念美術館でございます。
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月岡芳年様が描かれた、私の仲間がいるのでございます。
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芳年様は、天保10年生まれ。明治25年に亡くなるまで、沢山、私の仲間を描いて下さいました。芳年様も、度々、幽霊等をご覧になる方だったとか。養女に怖い話もなさっていたそうですよ。いえね、ここだけの話。私は、芳年様も、私らの仲間なのではないか?と思うておるんでございます。

羅城門渡辺綱鬼腕斬之図。おや、お久しい。茨木童子殿。朱塗りの門の上におられるのが茨木殿。その下で、馬に乗り、キッとそれを見上げているのが、渡辺綱様でございます。綱様は左手に禁札の看板。雨風の表現が、恰好良いですな。

不知藪八幡之実怪。八幡の藪には、1度入ると出られぬそうで。そこに、水戸光圀様が入って行った。すると、屍を積んだ洞窟の中に老人がいる。老人は光圀様を投げ飛ばし、洞窟から放りだしたと。右に光圀様。鉄扇で老人を指していらっしゃる。その後ろに、西洋吸血鬼のような剽軽な顔の妖かし。中央に白髪の老人が座り、その下には髑髏。左には美女の妖かし。他にも、口の大きな物の怪等、なかなか可愛らしいじゃありませんか。

芳年様は、江戸は新橋南大坂生まれ。12歳で、国芳門下に入りました。ここからは、芳年様が描かれた、初期の私の仲間をば。

桃太郎豆蒔之図。中央に豆をまく桃太郎殿。左に慌てふためく鬼達。後ろの暗闇には、国芳様の妖怪絵を彷彿とさせる妖怪達がうごめいている。中には、朱の盆のようなお姿も。左は、大黒殿と恵比寿殿。これは、芳年様21歳の時の作品。既に、私どもに関心がおありだったのですなぁ。

正清朝臣焼山越ニ而志村政蔵山姥生捕図。佐藤清正・・・まぁ、加藤清正様でございますね・・・の家臣、志村政蔵殿が、山姥を生け捕る場面でございます。中央に志村様。左に山姥。志村様は、山姥の髪をむんずと掴み、青い山姥は、苦悶の表情で逃げようとしております。右の崖には、小さく、清正様一行の姿も見られます。山姥殿もお強い方なんですけれど、志村様の剛胆さときたら・・・。

於吹島之館直之古狸退治図。秀旦右衛門直之様・・つまりは、塙団衛門直之様が、吹嶋正則様・・つまりは、福島正則様の屋敷に出た妖怪を退治したお話でございます。中央に直之様。どっかり座り動じておりません。右には、直之様に茶を出す小妖怪。ろくろ首のような大顔の妖怪等、妖怪まみれの中で、直之様は、どこ吹く風。襖の影で様子を見てらっしゃるのは、正則様ですね。横に美少年の小姓も連れておりますよ。

魁題百撰相 金吾中納言秀秋。右に秀秋様。その左後ろに幽鬼となった青白い顔の大谷吉継様が恨みがましく、秀秋様を見ております。秀秋様は刀を掴み、大谷様を斬ろうとなさっているのか・・・。天下分け目の関ヶ原。小早川が西軍から東軍に寝返った、あの出来事。それから2年後、秀秋様は急に亡くなってしまったのです。ええ・・・私もそう思っておりますよ。あれは、裏切られた大谷様が幽鬼となり秀秋様を連れ去ったのであろう・・と。

一魁随筆 朝比奈三郎義秀。鎌倉の武将である義秀様。亡くなった際、義秀様は閻魔を叩きのめし、天国への道案内をさせたんでございます。ええ。あの時は大騒ぎで・・・。まさに、この絵のまんま。閻魔様は「もう、きゃつは何なのだ?やめてくれ!」と言わんばかりの情けない顔。獄卒は驚き従者は呆れる者、笑う者。しかし、芳年様は、何故この場面を、こうも正確にご存知で?

芳年様の作品に、和漢百物語という日本や中国の怪奇物語が題材の初期妖怪画の代表作品がございます。今回は、この作品が全て観られるそうですよ。

和漢百物語 貞信公。藤原忠平様が宮中へ向かう際、毛むくじゃらの鬼が現れまして。この鬼、忠平様の太刀を掴むも、忠平様は一喝。刀を抜き鬼の手を掴むと、鬼は驚き逃げて行ったのです。この絵では、茶色の鬼が御簾の影から、忠平様を覗いております。忠平様は、真直ぐ前を見て、凛と歩いております。このお話。大鏡に載っているんですよ。

和漢百物語 清姫。おどろ髪の清姫様。髪を一筋口に咥えているのが、恐ろしくも色っぽい。足元には川。桜も舞っております。安珍に恋い焦がれるあまり、蛇に変化し、安珍を追った清姫様。恐ろしきは人の情。この絵の清姫様は、髪がぬめりと蛇のよう。これから蛇に変化なさるのを、分かってらっしゃるんでしょうか・・・。

和漢百物語 田原藤太秀郷。瀬田の竜女に頼まれ、三上山に住む百足(むかで)を退治した秀郷様。秀郷様は弓矢を構え上を見る。左上には大百足。大百足は唐風の衣装を着て、擬人化されております。秀郷様の横で妖艶に微笑む竜女も、どうも私の仲間に見えまする。美女はいずれも、妖かし者なのかも。

和漢百物語 鷺池平九郎。巴蛇・・うわばみですね・・・巴蛇退治の物語。釣竿をたれた池にうっすら巴蛇が映っている。しかし、この絵の平九郎様は、頭上の美しい紫陽花にみとれ、まだ、巴蛇に気付いていない様子。

和漢百物語 白藤源太。力士の白藤源太殿が川端で涼んでいると、河童が力比べを挑んできた。源太殿は河童を投げ殺してしまったそうです。何も、殺さずとも・・・。しかし、この絵の源太殿は、柳の下で団扇を扇ぎ、河合らしい河童の相撲を見ております。

和漢百物語 小野川喜三郎。横綱の喜三郎殿が大名屋敷に出る妖怪を見張っております。首の長い三つ目入道が現れるも、喜三郎殿は煙草をふかし、入道に煙を吹きかける。入道は、迷惑顔をしています。

和漢百物語 登喜大四郎。甲州の猪の原山の古寺で仁王と相撲をとる大四郎殿の絵でございます。大四郎殿は、仁王とがっつり組み合い投げ飛ばす瞬間!非常に迫力があります。しかし、私が気になるのは、その後ろ。テンションアゲアゲ・・と言うのでしょう?今の方は。そんな状態で、手を上げ燥ぐ阿弥陀如来の姿。後ろの骸骨もノリノリです。・・・ノリノリって言うのでしょう?今の方は。大四郎殿は実は架空の人物。“古今奇談紫双紙”が典拠でございます。

和漢百物語 華陽夫人。おやまぁ、華陽夫人、お久しゅう。華陽夫人は印度の斑足王の后でございます。しかし、その正体は、金毛の九尾の狐。玉藻御前はご存知でしょう?その前のお姿なのです。華陽夫人は夫を誑かし、千人もの人間の首を刎ねさせました。この絵の中央で妖艶に笑うのが華陽夫人。手には生首を持ち、指をさし何かを指図しているよう。その指先を辿れば、そこには、槍に刺さった血みどろの生首が・・・。

和漢百物語 入雲龍公孫勝。水滸伝の豪傑公孫勝殿。剣を上に向け、龍と対峙しております。水は逆巻き、風で服も煽られていらっしゃる。岩に乗る公孫勝殿。左下には龍の頭が見え、公孫勝殿を狙っております。芳年様は、この絵を描く際、国芳様の先例を参考になさったとか。

和漢百物語 宮本無三四。山伏姿の天狗。無三四殿が刀で、ザンバと天狗の羽を斬り落とす。血の軌道で羽の落下を描く、斬新な表現が面白いですよ。無三四殿が信州で山伏と手合せの末、斬り倒すと、山伏は天狗となって飛び去った・・・そんなお話が“絵本二島英雄記”にあるのでございます。

和漢百物語 酒呑童子。おや、これもお久しゅう、酒呑童子殿。童子殿は女官を侍らせ寝転がり、半裸姿の女官と小鬼が手ぬぐいを引っ張る力比べを眺めてらっしゃる。手前の皿には猪の足つき肉が盛られている。童子殿の前には大きな杯も。この宴、私も呼ばれたいですなぁ。

芳年様は円熟期に入られますと、菊池容斎の歴史上の人物伝記集である、前賢故事に強い影響を受けたのでございます。 油絵を意識し、陰影表現も行うようになっていきます。

大日本名将鑑 平惟茂。戸隠山の鬼女伝説でございます。戸隠山で鬼女に襲われる惟茂様。この絵では、惟茂様は女の衣をバサリとはぎ取った瞬間。頭上には鬼女が不気味に笑っております。惟茂様は刀を振り上げる。迫力ある構図が見事です。はぎ取った袴の緋色も色味を添え、美しい。

皇国二十四功 田宮坊太郎宗親。頭上に金毘羅大権現の眷属である天狗。扇子で何か指示しております。ふわりと浮かぶ白い髭の、なかなかに渋く男前の天狗でございますよ。しゃがんでいるのは坊太郎殿。刀を構え真直ぐに左を見つめております。実は、坊太郎殿は、父親の仇討ちをしに来たのでございます。坊太郎殿は信心深く、大権現を祈っておりました故、天狗が仇討ちの手助けをしたのです。

偐紫田舎源氏。中央に足利光氏と女がおります。古寺に泊まると鬼の面をつけた凌晨と言う女が鉄杖を手に襲ってきた。左には山伏姿の仁木喜代之助秋定殿。襖から数珠を握り腕まくりし構えています。蚊やりの煙。屏風には観音や小鬼の姿。凌晨はひょいと足をあげている。柳亭種彦様の作品の一場面でございます。

祐天不動の長剣を吞む図。物覚えの悪い祐天。成田山新勝寺で断食修行すると、満願前夜の夢に不動明王様が現れ、「英知を得る為に長剣を呑むか、短剣を呑むか?」と迫られた。長剣を呑むことを選ぶ祐天。絵は、まさにこの場面。中央に、跪き、今まさに長剣を呑もうとする祐天。不動様は祐天の襟元をむんずと掴み、手に持った長剣を呑ませようとしている。両側には、不動明王様の眷属である制多迦童子殿と矜羯羅童子殿の姿も見える。苦しげな祐天だが、この後、彼は、記憶力が向上した・・・とか。

袴垂保輔鬼童丸術競図。上に袴垂。下には鬼童丸。妖術合戦の絵でございます。袴垂には鬼童丸の妖術で召喚された大蛇が体に巻き付いているが、キッと鬼童丸を見下ろすと妖鳥を呼び、大蛇を撃退させている。鬼童丸は、口に巻物を咥え、妖術をかけているところ。曲亭馬琴様の“四天王剿盗異録”の一場面でございます。しかし、竪2枚で描かれたこの絵、恰好良いですなぁ。

平維茂戸隠山鬼女退治之図。先ほども出て参りました、戸隠山の鬼女伝説。こちらでは、維茂様は、川面に映った鬼女の姿を見て、刀に手をかけている。しかし、後ろにいる鬼女は白い打掛をまとい、美女に化けている。いえ・・魅惑的な美女は、全て鬼・・なのかも知れませぬよ。

ここからは、新形三十六怪撰。こちらは芳年様の晩年に描かれた物でございます。

新形三十六怪撰 貞信公夜宮中に怪を懼しむの図。先ほどもありました、藤原忠平様と鬼とのバトル場面でございます。鬼は忠平様の刀をむんずと掴んだは良いが、刀はピクリとも動かない。「えー!?」と大口を開けて驚くマッチョな茶鬼はユーモラスで可愛いですよ。反面、忠平様はギロリと鬼を睨んでおります。

新形三十六怪撰 武田勝千代月夜に老狸を撃の図。幼き信玄公が勝千代様です。ある日、木馬が急に話しかけて来た。勝千代様が木馬に斬りつけると、正体は狸。刀をふるう勝千代様に、激しく上向く木馬。転がる狸。構図の妙が光ります。“絵本甲越軍記”にある物語です。

新形三十六怪撰 清玄の霊桜姫を慕ふ乃図。怯える桜姫の姿。影で襖に映るのは、彼女を恋い慕う清玄の霊。窓の外には雪も降っている。“清玄清姫物語”。歌舞伎にもありますね。清姫の色香に堕落した僧侶の清玄。憐れな気も致します。

新形三十六怪撰 老婆鬼腕を持去る図。渡辺綱様が斬った鬼女の腕を奪い返し、得意げな顔の鬼女。“平家物語”などに伝わる物語です。一条戻橋で道に迷った女と出会い馬に乗せると、女は鬼の姿に変じ、綱様は腕を斬り落とす。鬼女は伯母に化け、自分の腕を取戻しに行くのです。これは取り戻した直後でしょうね。

新形三十六怪撰 為朝の武威痘鬼神を退く図。中央少し右に為朝様。頭上に痘鬼神。この痘鬼神。「マンボウやしろさんっぽい」と我が主が申しておりました。え?主とは誰かと?それは、まぁ、お気になさらずに。“椿説弓張月”に八丈島に流れ着いた痘鬼神を為朝が退けた・・という話があるのでございます。

新形三十六怪撰 内裏に猪早太鵺を刺図。“平家物語”で知られる源頼政様の鵺退治でございます。頼政様は矢を射て鵺を落とす。この絵は郎党の猪早太殿が太刀で、その落ちて来た鵺を仕留めているところ。太刀でぶすりと刺され、鵺は驚いた顔をしています。

新形三十六怪撰 鍾馗夢中捉鬼之図。刀を手に空を睨む鍾馗様。傍で小鬼が縮こまって怯えている。玄宗様がマラリアにかかると、夢の中に小鬼が現れる。やがて大きな鬼が現れ、小鬼を退治。大鬼は自らを「昔、科挙の試験に落ち、自殺した鍾馗である。」と名乗った。玄宗様が目覚めると、病はすっかり治っていたそうです。それ以降、鍾馗様は、祀られるようになったのですね。
しかし・・・。鍾馗様って、科挙の試験に落ちて自殺したんですねぇ。よほど自分の頭の良さに自身があったのでしょうか?いやはや、小者の外道には、分からぬことで。

新形三十六怪撰 地獄太夫悟道の図 座る地獄太夫。何か思考しているようにも見えまする。地獄太夫殿は、和泉国高須町の遊女。衣装に地獄変相図をあしらっていたので、そう呼ばれました。地獄太夫殿は、元は良い身分の方だったそうなのですが、賊に売られて遊女になった。後ろには白に骸骨が薄闇に浮かぶ。これには、骸骨のない後摺り版もあるのです。私は、骸骨があった方が好みですケドねぇ・・・。

新形三十六怪撰 平惟茂戸隠山に悪鬼を退治す図 三度、惟茂様の戸隠譚。惟茂一行が美女に酒宴に誘われた。酒に酔って惟茂様が寝ると。夢の中に武内の神が現れ「美女の正体は鬼である。」と告げる。この絵では、惟茂様は頬づえをつき、杯に映る鬼の姿を見ている。その横に兵庫髷の美しい女が妖しく微笑んでいる。惟茂様はもう正体に気付き、刀に手をかけています。

新形三十六怪撰 葛の葉きつね童子にわかるるの図。葛の葉姫。障子に映る影は狐の姿。童子丸・・・幼い頃の晴明様でございます・・は、狐姿の女の着物の裾を掴み、行くのを止めようとしている。葛の葉姫と晴明様の別れの場面でございます。信太の森の白狐が葛の葉という女に化け、命を救ってもらった安保の元へ来て、嫁として契ります。しかし正体がばれてしまった今となっては、森へ帰らねばならぬ。幼い子・・・童子丸とも別れて・・・。傍らには、葛の葉の心を慰めるように、桃色の葛の花も咲いている。

新形三十六怪撰 奈須野原殺生石之図。先ほど、華陽夫人が出て参りましたが、その後に変化したのが、玉藻の前。この絵では、玉藻の前は殺生石に寄りかかり、傍らの雁は、殺生石の毒気にあてられたのか、墜落しているようにも見える。鳥羽上皇に愛された玉藻御前は実は、華陽夫人同様、金色九尾狐。那須野で追い詰められしとめられるも、殺生石となり、この石は毒を吐き続けたという。

新形三十六怪撰 ほたむとうろう こちらは有名な怪談話牡丹灯籠。美女が下女に連れられて歩いている。下女の手には灯籠。2人の足は透け、幽霊であるというのが分かる。我が主様は「下女が鷲尾真知子さんっぽい。」と言っておりました。

新形三十六怪撰 大物之浦ニ霊平知盛海上ニ出現之図。平知盛様が海上に現れ右向きに立っています。義経の行方はばむ為であろう、右手には薙刀を持っています。

新形三十六怪撰 二十四孝狐火之図。訪法性の兜を手に踊るように立つ八重垣姫。周りには狐火が舞う。八重垣姫は、謙信が許婚の武田勝頼を殺そうとしているのを知り、氷の張った諏訪湖を渡り、その旨を勝頼に伝えたと。ここの八重垣姫は赤地に菊の柄の着物を着て、とても華やです。

新形三十六怪撰 清盛福原に数百の人頭を見る図。寝所の清盛様。襖に映る骸骨を睨み、刀を握っている。骸骨の目が襖の引き手部分になっているのも楽しいですな。

少し、新形から離れましょう。
美勇水滸伝 大蛇丸 高木午之助。右と左で、違う絵が描かれている物です。1粒で2度美味しいというやつですな。右には大蛇丸。大蛇丸は田毎姫に懸想し、思いを遂げる為、龍王が瀧で離魂の法の修行をする。左には滝。右手に刀、口に払子のような物を咥え、左手には鐘を持っております。左には手之助。巨大な猪の妖怪が出るも、顎に手を乗せ動じません。

この辺りで、実録系は如何でしょう? 郵便報知新聞 第六百六十三号。12時になると女房に真っ黒な坊主が覆いかぶさり寝ている女房の顔を舐めまわした・・という出来事が発生。顔を舐める妖怪は、芳年様の絵では尻尾があるように見えるので、好色な狸なのかも。女房の横では大仰に驚く旦那殿の姿が。

和漢奇談鑑 佐倉宗吾/ 酒呑童子 こちらは上下で違う絵が描かれております。上には宗吾殿。堀田氏の悪政を訴え磔にされ幽霊になった宗吾殿が堀田の屋敷の女中を驚かしています。屏風から抜け出るように描かれた宗吾殿。頭を下げ怯える女中。下の絵は、これまた、酒呑童子殿。血みどろの生首を眺め、うっとりとしています。手を頬で組み、随分と乙女チックなポーズをなさってますが、見ている物が人の生首では・・・ねぇ。

芳年漫画 渡辺綱と茨木童子。前述した新形三十六怪撰 老婆鬼腕を持去る図の前段階の絵でございます。右に綱様。左に綱の伯母様・・なのですが、実はこれは、茨木童子殿が化けた姿。伯母の姿の茨木童子殿は、つづらの中を見ておりますが、この中には、綱様に斬り落とされた童子殿の腕が入っているのでございます。綱様の伯母様が夜半近くにやってきて、「茨木童子の腕を見せてくれ」としつこく言う。根負けした綱様は唐ひつを開けて見せる。この後、正体を現し、茨木童子殿は腕を持ち去るのです。

芳年漫画 土蜘蛛の精と酒田公時。頼光様の命を狙う土蜘蛛が女に化けて来る。女の体からは蜘蛛の巣が。公時殿は、碁盤に体をつっぷしているが、怖がっているわけではなく、目をあけ、土蜘蛛の精の様子を見ている。土蜘蛛は兵庫髷の美女に化けてはいるが、妖気漂う女の姿。

芳年存画 左に窮鬼・・貧乏神のことですな。風邪の神と一緒に歩いている。右には、それを見て怯えて大黒殿の大きな袋の影に隠れる恵比寿殿と大黒殿。2人はともに「勘弁してくれよ〜」といった表情です。反面、窮鬼と風邪の神の楽しそうなこと!

おや、まだ紹介して欲しそうな仲間が・・・。
和漢百物語 伊賀局。伊賀局様が団扇を持って座り、頭上に出て来た烏天狗のような風貌の藤原仲成様の霊を見つめています。伊賀局は笑顔で霊になど怯えていない様子。弔いの約束をすると、仲成様の霊は退散したそうな。

岩見重太郎兼亮 怪を窺ふ図。森の中。左に巨大な狒狒の姿をした邪神がおります。おや、中央に赤い腰巻のみの姿の生贄の女性が。女性は苦しげな様子でございます。周りには恐ろしげな妖怪達。狒々の傍にも小妖怪。右にいる岩見殿は、邪神を退治する機会をうかがっているようでございます。

「さて、私の仲間は如何でしたか?主が、お土産として、百鬼夜行のハンカチと、絵葉書を2枚買うて来て下さいました。月岡芳年様の“妖怪百物語”は、8月27日までやっております。」
「・・・え?まだ私の正体が気になると?・・・いえ・・好奇心は猫をも殺すと申します。今暫くは振り向かない方が・・・。・・・そうですか。仕方ない。それでは、振り返ってごらんなさいまし。どうぞ、私の姿を・・・。今一つ、御忠告を。ご覧になったその後は・・・・・・」

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月岡芳年の展示は、日記を遡ると、やたら出て来て、同じ絵の話ばかりになると思うので、今回は物語形式にしてみました。
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