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2017年08月18日23:22

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夏休みと自転車の修理

 今年の職場の夏休みは11日(金・祝)から16日(水)という、中途半端な日程だったので、水増しされたふつうの週末みたいで、夏休みという実感は最後までなかった。

 天気も曇りか雨ばかりで、過ごしやすくはあったのだけれど、なんとなく出歩こうという気分にはなれなかった。
 一日で片付けるべき掃除をだらだらと三日がかりで終わらせたりしていた。なまじ予定を立てずに臨んだせいで、このていたらくともいえるけれど、立てた瞬間からその予定に支配されがちな性分なので、無意識のうちに立案を忌避してしまうことが多い。

 いちおう、夏ごとにスイカを買って食べることと、サーティワンアイスクリーム(近所の島忠ホームズのフードコートに入っている)でアイスを食べることを自分へのミッションとして課しているのだけれど、当初の予想が外れてあまり夏らしい夏ではないので、これらは未達成のままとなる公算が高い。


 そんな閉塞状況の連休最終日、やっとのこと重い腰をあげて自転車のタイヤに空気を入れたのだけど、どういうわけか前輪の空気がすぐ抜けるようになってしまった。

 ここで勘のいい方なら、「ああ、虫ゴムだな」と気がつかれたことと思う。結論からいうと、実際にそうだった。前に似たようなことがあった折、知り合いに同様の指摘を受けたことがあり、これは自分でもすぐ直せるらしいとは知っていたのだけれど、今から虫ゴムを買ってきてネットでやり方を調べるのも億劫だった(あらためて便利な時代になったとは思うけれど)。

 これが夏休みの序盤ならば、虫ゴムの交換をミッションに設定して挑むことができるのだけれど、最終日なのだからどうしようもない。最悪、しくじって直せないままだと、翌日は徒歩で出勤ということになる。健康のためには、その方がいいくらいなのだけれど、面倒くさい。

 結局、いつもの自分らしからぬ、金で解決するという手段を選択することになった。最寄りの自転車屋さんには、タイヤが酷く裂けた時に対応してもらっている。修理中にスペアの自転車を貸してくれたのだけれど、そのキーが店のあらゆるところに置いてあるどのキーなのか判然とせず、片っ端から試した挙句、見つからなくて最後はチェーンを切断するという顛末の一部始終を目撃してしまったため、やや離れた別の自転車屋さんへ行ってみることにした。

 大規模スーパーが廉価な自転車を引っ提げて小売市場を荒らしまくっているこのご時世、けっこう近くに自転車屋が並立する界隈の不思議さを思いつつ、そちらを目指す。店頭での呼びかけに応じて出てきた店主に、念のために状況を説明した方がいいと思ってかいつまんで話し始めたところ、彼はそれを遮って、「一通り見てみないとわからないから」と言い、調べたただけで手数料はかかるがそれでいいかと確認してきた。

 たとえば大手のサイクルショップのチェーン店が存在したとすれば、そこのマニュアルには、手数料としていくらかかるが、それでもやるかという質問をするように書かれると思う。彼は金額については言及しなかった。
 もちろん、その額はちょっと視線をずらせば紙に書いて大きく壁に貼り出してある。1200円だから、妥当なところだと思う。パンクのチェックごときで暴利を貪るわけがないという社会通念がそこにも貫かれている。『ベニスの商人』のシャイロックのような自転車屋は存在しないのである。むしろ、自転車屋の敷居をまたぐこと自体は実はややレアなイベントであるとはいえ、こっちの方が妙なことを気にしすぎといえる。

 ちなみに、高校生のころにパンクを調べてもらったら、その店では手数料がかかるともなんとも言わず、最終的に「500円」とだけ言われたから、そのころからするとかなり進歩してはいる。

 ちょっと思ったのは、昔ながらの自転車屋気質とでもいうべきものがあるとして、そこでは「虫ゴムの交換で金をとるわけにはいかん」という考えが前提として存在しているのではないかということだった。

 前述の通り、原因は虫ゴムの摩滅で、チューブに穴はなかった。彼は手早く虫ゴムを取り換え、「パンクのチェックをしたので1200円」と言った。あくまで代金はパンクのチェックによる手数料であって、虫ゴムの交換はそれにともなうサービスであるということらしい。

 そういうものかと思った。断わっておくと、私はこの取引にまったく不満はない。1200円は自分にしてはそれなりの出費ながら、翌日の出勤のことを考慮するなら、十分に納得のいく取引である。どころか、今の自転車はいろいろとガタがきており、最悪のケースとして買い替えすら想定していたのだから、それと比較すれば望外のコストカットともいえる。

 だから、最初から虫ゴムだけ調べて交換しておけば600円ですんだだろ、と言いたいわけではない。実際問題として、店としては、客一人の相手をする時点で確保しておきたい売り上げが存在すると思う。それが現在においては1200円ということなのかもしれない。

 なんというか、供給側が名目として立てたサービスの外見と、需要側が受け取った実質の乖離がおもしろいと思ったのである。もちろん、この間を埋める方策がないではない。
 たとえば、虫ゴムの交換をオプション扱いにするというやり方もありうると思う。もっとも、個人店ではそれすら価格構成として煩雑すぎるのかもしれない。
 とはいえ、どこかの資本がサイクルショップのチェーンを新たに立ち上げる場合(ありえない仮定だけれども)、あえてこれを分けることで「わかりにくかった価格を明確化」とアピールすることはありうる。
 実態としてはほとんど変わらないとしても、この場合は新しさを訴えることこそが大切であろうから。

 しかし、自転車屋に行くたびにそういうことをいちいち考えていては疲れて仕方がないから、数年に一度ほどの頻度しかないとはいえ、虫ゴムぐらいは自分で取り換えられるようになった方がいいかなと思わなくもないのだった。

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