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2017年08月05日18:48

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魅惑のランプ

特別展がいつも楽しい、古代オリエント博物館。今回は、“魅惑のランプ”でした。
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何故か、3時半を過ぎたら、お客さんが増えた。なので、私は、4時に出てしまったが。学生さんも多かったな。自由研究かな?

中山コレクションが中心となった展示(だったと思う)。
入ると、古代シリアの家屋とランプの再現があった。雨風を凌ぐ為、古代の家は窓が小さい。かなり暗かったんだね。因みに、土製ランプはそれほど出土しておらず、松明を使用してたのではないか?とのコト。当時は油も高価な物だったろうしね。

78万年前の中近東の遺跡で炉址(火の址)は見つかっている。
人面装飾土製竈という物の展示があった。前2500〜前3000年。南コーカサス地方。正面部分に顔と刻線文が入っている。住居の内部に置く物らしい。お風呂で使う椅子を逆さにしたような形だった。

で、ランプのお話。
西アジアの土器ランプ。前5500年頃からあったらしい。形としては、土器に灯芯を置く折れ口を作ったランプ。それが後に皿型ランプになる。ランプは、西アジア→地中海→東方と伝わって行く。因みに、シュメルドは貝殻ランプ使用。

土製皿型ランプ。パレスティナ 前20〜前6C。浅い皿状。土色のランプ。口の一部が指で摘まんだ形になっている。こういう形の和菓子あるよね?って思った(笑)。十字型のもあって、コレは口が4つあるので、4つ灯芯が置ける。墓から出土するコトも多かったらしい。太古の昔から、お墓には火(明かり)なんだな。

土製管状ランプ 前7〜前6C メソポタミア。発展すると、摘まんだ部分をくっつけるようになってくる。大分ランプっぽいぞ!

地中海を見てみる。前15〜前8C。フェニキュア人は轆轤製の皿状ランプを使っていた。前6Cには灯芯口ランプが出来、前3Cには、型でランプを作るようになる。型ってことは、大量生産が出来る!
ローマ時代は、上面が広くなり、そこに神話や演劇の場面を表すのが人気になった。芯の長さも調節可能に。長いと炎は大きく、短いと小さくなる。

土製ランプ 前2〜前1C エジプト。型作りのランプ。筒口に髭を生やした人物が描かれている。これ、誰?
同じような土製ランプ。前2〜後1。欠けてたケド、元はとって付きの二口灯芯口ランプだったらしい(とってが欠損)。中央に蔦の葉を被るデュオニソスがいる。口周りには、飾り文も。もう完全にランプの形だ。ランプって、結構早くからランプの形になり、あとは、アレンジなんだなぁ。

古代ローマのランプ。注油口が小さくなり上面スペースが出来た。そのスペースには、神話、動物、演劇、スポーツ競技等が描かれる。ループ状のとってもある(店頭に吊るす用らしい)。

土製ランプ 2〜3C チュニジア 愛と美の女神ウェヌスに捧げられるミルテ(銀梅花)の花冠がぐるりとデザインされお洒落。ウェヌスの儀式に使ったんじゃないか?とのコト。儀式用のランプなんだね。
同じく、土製ランプ。スフィンクスに食べられた人間の頭蓋骨を弄ぶスフィンクスの姿が描かれる。神話の一場面だけど、何も、こんな怖い絵柄にしなくとも・・・(^_^;)。
同じく、土製ランプ。こちらはパレスティナ。レダと白鳥が交わる場面が描かれてる。こっちはエロかい!(笑) 寝室で使ったのかなぁ。でも、このランプ素敵でした。他にも、仮面演劇やら、剣闘士の姿やら、グリフォンやら色々あって楽しい。絵柄が選べたってコトだよ?凄くない?

青銅製ランプ 1〜2C イタリア ランプのとっての先端が馬の頭になっている。もう、金属のランプ出て来ちゃった。裕福な家の調度品だったらしい。

エジプトのランプ。エジプトの神々を象った作りの物も出てくる。ヒマシ油を使っていたらしい。

土製ランプ エジプト 1〜3C 神ベスの姿。目を見開き舌を出す。右にタンバリンを叩く女性がいる。どうやらベスは踊っているらしい。ベスは毛むくじゃらで恐ろしい顔なのだが、この姿でサソリや毒蛇を遠ざけてくれるんだって。母子を守る神様でもある。他、アテナの姿のもあった。「アテナ?ギリシャ神じゃん。」って思ったら、どうやら、イシスと同一視されていたらしい。

土製蛙ランプ エジプト 2〜4C 上面に蛙をあしらったランプ。蛙は繁殖力が強く、復活、多産のシンボルなんだそうな。縁起担ぎだよね?日本だったらさしずめ「無事カエルランプ」

キリスト教とランプ。キリスト教では、神=光。最初に「光あれ〜」って神様言うしな。十字架の装飾が付いたランプがあった。十字架のは、儀式用かなぁ?パレスティナで、5〜8Cの物。ヘロデ朝の遺跡から出たヘロデランプもあったが、こちらは、十字架もなく、素朴な作り。前1〜後1Cの物。

ランプ製作用漆喰型 チュニジア 4C 上部それぞれに凹凸がつき、ピッタリと嵌る。XP(キリストのシンボル)も中央に書かれている。横に、これに似たランプ本体(ちょっと小さい?)の展示もあった。型があるってコトは、大量生産が出来たってコトよね?

ローマ帝国が衰退すると、各属州で独自のランプが作られる。

シリア・パレスティナの5〜6Cの六芒星(ダビデの星)が描かれたランプが恰好良かった。

イスラームとランプ。イスラームは偶像崇拝禁止の為、人等は描かれない。持ち運びの安定性等、機能性が重視される。釉薬をかけた陶製ランプが広く作られた。

施釉ランプ イラン 8〜15C 皿の縁を摘まんで灯芯口を作り、丸いとっての付く小さなランプ。青色や茶等の釉薬が綺麗。今あってもお洒落。
他、長い灯芯口があったり、足が付いたり、足の下に受け皿が付いたり、実用性が高そうなランプが結構ある。横で観てたおじちゃんが、感心してた。「使いやすそう」って。

青釉陶製ランプ イラン 19C 時代が一気に進む。灯芯口が6個あり、蝋燭挿しが4個ある。デカくて重いと思う。陶製だし。でも、当時で考えたら、明るかったろうね。青緑の釉薬が綺麗。涼しげだしね。

金属製ランプ セルジューク朝(1038〜1194)で、金属製のランプが作られる。セルジューク朝は、シリア、パレスティナ、イラクを治めていたそうな。

青銅製ランプ イラン 12C 蓋はライオンのような動物の顔。このライオン、引き目でゆるキャラ風なんだ(^_^;)。注油口にはペイズリー模様がある。銅には星が線刻されていた。*(アスタリスク)みたいな形の星だった。

青銅製星形ランプ イラン 10〜12C 六角形の星形ランプ。内面には中央にイクラみたいなつぶつぶ二重丸が描かれている。星の先端の1つはとって。蹄のような形になっている。このつぶつぶイクラ文様は何か意味があるのかな?

中央アジアのランプ イスラム世界に組み込まれ、轆轤陶製ランプを作る。一方で、石のランプも残っているらしい。

石製ランプ トルコ? 16〜18C 全体的に文様を刻んである。側面に植物文様。背面に動物の顔。牛・・かな?儀式用じゃないか?と思うんだケド・・・。

古代オリエント博物館が、1970年代に北シリア、ユーフラテス川中流域のローマ・ビザンツ時代の墓を発掘したところ、ランプが出土した。墓は扉を開ければ暗くないので、照明以外の用途だったのでは?とのこと。4〜7Cの土製のランプだった。他、ガラス製の杯も出土(いづれも観られる)。やはり、儀式に使ったってコトよね?杯はお酒を捧げたのかも。魂=光(火)って言うイメージが、どの地域にもあるんじゃないかな?とも思うんだ。火は浄化(清め)のイメージもあるし。

南アジア・東南アジアのランプ。 ヒンドゥー教・仏教寺院で、蝋燭やランプを使っていた。神に捧げる火として、特別の意味を持っていたらしい。

真鍮製ランプ インド 19〜20C 比較的新しい物ですね。女神ラクシュミーが手にする容器(葉っぱを集める大きなチリトリっぽい)がランプ。ラクシュミーの肩には鸚鵡もとまっている。

鉄製ランプ インド 19C 3つの軸で支えられたコマ。ああ!無限独楽みたいなやつだ!どの方向にも回転出来る仕組み。どう回転しても真ん中の火の部分が立っているランプ。正倉院の香炉も同じ仕組みらしい。

青銅製迦陵頻伽形ランプ インドネシア。顔は女性、おっぱいはあるが、体は鳥な迦陵頻伽が立っている姿のランプ。
他、チベットのバターランプの展示も。(バターを使って火を灯すランプな)

東アジアのランプ 中国の漢時代は、青銅製。唐時代は青磁。油と灯芯、蝋燭を使用。動物油の場合は、灯芯に麻や竹を細く切って束ねた太い物を使うので、灯皿に釘のような物が付く。植物油の場合は柔らかいイグサを用いたので、灯皿に突起はない。

青銅製蝋燭灯 中国 前2〜後3C 蓋の半分を回転軸を使い、起こして灯皿にする。前2Cにして、結構なアイディア賞かと。

褐釉灯 中国 6〜9C 容器が二重底になっており、上方に突き出た丸い口から水を入れ、皿部分に油を満たす。水で冷却することで、油の蒸発を防いだのだそうな。コレも、アイディ賞。

褐釉熊形灯 中国 3C 灯皿を支える台座が熊の形。熊?猪っぽくも見えたのだが・・・(^_^;)。

日本のランプ。江戸期に菜種油を量産出来るようになり、灯火具が盛んに作られるようになる。

火打金 日本19C 装飾細工してある金属。板を開けると火口や火打石が収納出来る皮袋になっている。火打金が取り付けられている。

日本には、携帯用の行燈や、ガススタンド、船行燈等の展示もあった。ガス灯を間近で初めて見た。

燭台と芯切鋏 日本 19〜20C 時代劇でも良く見るやつである。蝋燭を立てる台。横に朱塗りの和鋏が下がっているのだが、蝋燭の炎が大きくなるのを防ぐ為、芯を切るのに使う。でも、こんなの使えたのって、大名や裕福な商人とかじゃないのかな?庶民の物ではないよね?

デカイ徳利があり。「何だコレ?」と思ったら、これは、臭水徳利という物(日本 19C)で、れっきとした照明器具だった。臭水は石油の原油のコト。日本でも、越後で石油がとれたらしい。徳利に石油を入れ、口にボロ布等を挿して灯芯にし、火を灯していたそうな。

近代ヨーロッパ 18Cには照明にも変化が現れる。ガス灯が出来、1879年にはエジソンが白熱電球を作る。電気やガスの時代が来るんだね。

陶製ランプ フランス 6〜7C メロヴィング朝のフランスの物。基本はローマのランプと同じような物。茶色い小さいランプだった。

陶製把手付きランプ イタリア 19C 植物っぽい模様がある。摘まみを持つ皿形は数千年変わらない。下に受け皿があるのも変わってない。数千年前に、既にランプの原型は出来てるってことだよね?

ピューター製レンズランプ イギリスかアメリカ 19C 鯨油を入れる中空の容器の上に灯芯が2つあり、ガラス製レンズで挟んでいる。2方向に特定の場所を明るくする為、レンズ付きなんだそうな。銅部分は、大判焼きみたいな形だった。
アルコールランプの展示もあったが、19Cの時点で、今と同じ形のアルコールランプだった。

錫製ランプ アメリカ 19C前半 頭(帽子の前)にひっかける形のランプ。今で言うヘッドライトなんだケド、ランプの火で髪の毛が燃えそうで・・・。筒が2重構造になって、ワックスが溶けやすい仕組みなんだそうな。

陶製ランプ イタリア19C カンテラのように柄があり、カンテラのように持って使った・・のかも。灯芯口の周囲に覆いが付いているので、外用なのか?とも思った。

ユダヤ教のランプ 7枝の燭台とその上に置く灯火皿。芯切り鋏、芯取皿が指示され、純粋なオリーブ油による灯火を夕暮れ〜夜明けまで守るんだそうな。旧約聖書に、そう出て来るらしい。

真鍮製ハヌッキヤー ヨーロッパ 19C ハヌカー祭で使われるランプで、モーセの十戒石版を両側から挟んだライオンがいる。下には8つのランプが並ぶ。儀式に使う物だけど、綺麗な物なんですね。
ひょうそくという、手のひらサイズの灯芯具もあった。

パルミラの地下墓地のイメージが再現してあり、古代のランプを模したLEDランプで、中が見学できた。中には、死者の肖像画や、飛翔する女神のレリーフがあった。やはり、かなり薄暗いんだね。肖像画の前にもいくつかランプが捧げられていた。

こんな感じでした。ランプは、かなり古代からランプの形をしており、後は、使いやすいように、あるいはお洒落にアレンジをされているんだな・・と思いました。

ランプ展のチケットで、縮小版の常設展も観られた。
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面白かった物をざっと紹介。
ハンドアックス。シリア。約100万〜70万年前。火打石を割って作った石器だそうな。

目の偶像。シリア。紀元前3600年頃。北シリアに眼の神殿があり、目を強調した像が作られた。何かに似てると思ったら、寄生獣のミギーだった(笑)。

エジプト。金製のスカラベ形飾り板。心臓スカラベとして、ミイラの包帯に縫い付けられた物ではないか?とのコト。

プタハ・ソルカ・オシリスの像 エジプト 前4〜前1C ミイラの姿をした葬祭神。“死者の書”や再生を祈る呪物を入れる容器。彩色してある神像。これ、死者の書展でも同じようなの観たなぁ。

プセムテクのウシェブティ エジプト 前7〜前4C あの世で死者の代わりに働かせる人形。人形を働かさる為に呪文がヒエログリフで刻まれている。これも、死者の書展で、同じような物を観た。

私の好きなコロコロ円筒印章もあった。これ、カワイイよね。

ストゥッコ製仏陀像頭部 ガンダーラ・パキスタン 3〜4Cと、ポセイドン塑像 パキスタン・ガンダーラが並んでいた。どちらもガンダーラ産だが、こう見ると、ガンダーラの像は、ギリシャ・ローマの神像彫刻の影響を受けてるんだなぁ・・というのが良く分かる。彫りが深くて写実的。イケメン。

ガラス製杯 東地中海沿岸 2〜4C 銀化ガラスの器が綺麗。
マーブル文ガラス小壺 地中海沿岸 1C 青いマーブルのガラスが涼しげだ。

コインもあった。フヴィシカ王金貨 パキスタン。2C後半。裏にはアルドクショー(ゾロアスターの豊饒の女神)が彫ってある。
アケメネス朝ペルシアの金貨。前5〜前4C。疾走する王様の姿。

青銅製ベルト 東トルコ 前8C ライオン(獅子)が細かくデザインされたベルト。革帯に付けたらしい。青銅だから、重いと思うんだケド・・・。

西アジアの国々は征服と侵略を熱心に行った。
アキナケス型短剣 イラン 前6C〜前4C アケメネス朝ペルシアや南ロシアのスキタイ族が使っていたらしい。

金粒装飾付ペンダント イラン 前6C〜4C 大きなV字形の縞瑪瑙のビーズに細粒装飾付きの金製キャップが付いた装身具。黄金展でも観たケド、粒金が細かい!

多彩魚文筒形壺 バローチスターン地方 前3000〜前2500 マヌケ顔の魚の絵。線部分は、土器を焼く前に描かれ、焼いた後に様々な色の顔料で塗られた。

バローチスターンとは、パキスタン西部からイラン東部アフガニスタン南部に広がる乾燥地帯のコト。
ジョーブ式女性土偶 バローチスターン地方 前2500年 ツリ目の女性の土偶。髪が長く、乳房もある。
コブウシ土偶 丸い目の牛の土偶。マヌケ顔で可愛い。これもバロー〜からで、前2200年〜前2000年頃の物。

お土産は、マイミクさんにクリアファイルをお土産として買った。ランプ関係は図録の他に何かあるのかな?と思ったら、そのものずばりのランプがあった。5000円くらい。アラジンの魔法のランプのようなランプだった。

こんな感じの展示でした。魅惑のランプは9月10日までやっています。ランプ好き、歴史好きは是非どうぞ。
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