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2017年06月05日23:54

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MONSTER LIVE!

 『黄金のコメディフェスティバル2016』はとても優れた企画だったし、おもしろくもあったけれど、基本的には小劇場界という枠の中の話であって、いま世間でもてはやされている、いわゆるお笑いとはつながっていなかった。それはもったいないことだと思っていたのだけれど、コメフェスで評価された作家さんたちにコント台本の依頼があって、それが上演されるという。

http://solid-star.net/monsterlive2/

 なんというか、誰かが少しずつでもなにかをやっているうちに、それらがつながってなにかしらの動きになっていくのかなあという感慨をおぼえ、いそいそと出かけていった。まさか自分が新宿のお笑いライブに足を運ぶような人種だとは思っていなかったので、本当に不思議な気がした。

 JR新宿駅東口を出てすぐ、シアターモリエールは本当に久しぶり。15年ぶりぐらいかもしれない。贈られてきている花の量に驚きながら、階段を下りて地下の劇場を目指す。大きな劇団ならそれなりに花が贈られることはあるけれど、こんな量は見たことがない。

 上のアドレスのページをあらためて見てみると、末尾の方に花を贈る際についての注意があらかじめなされてあった。その他、プレゼントの取り扱いについてや入待ちや出待ちの禁止も明確にルール化されている。
 あらためて小劇場とはまるで違う世界だなとは思ったのだけれど、でも、基本的に出演者たちは俳優らしいのである。それは後述するトークのなかで何度も強調されていた。

 だからといって、もちろん、大手の芸能会社が仕切っているような商業演劇とも違う。あえていえばその中間にある存在といえるけれど、足して2で割った存在でもなく、もっと独特な立ち位置にあるっぽい。芸能プロダクションがタレントの育成と売りこみのために持っている劇団(半分近くが招待席の公演とかあって驚いたことがある)に近いけれど、既存のものとはまた雰囲気が違う気がする。

 実際、席についてまわりを見回した感じだと、ふつうの観劇客に加えてアイドルのファンのような人たちもそれなりにいるみたいだった。
 チケットが\4800に対して、グッズ類はパンフレットが\2000、ブロマイドが4枚1組で\1000、Tシャツが\3000、トートバッグが\800、すべて買うと\6800だけど全種セットというものがあってこちらは\300割引の\6500。
 しかも、コントやゲストが日替わりで、リピーターが多いらしい。ということは、数はそこそこながら、熱量の大きいファンがついているのかもしれない。

 一般のアイドルグループが歌や踊りをメインにするのに対して、ここは芝居を主なフィールドにしているということだろうか。実際、上記のリンクからたどれるメインの出演者たちはみんな若くてかわいかったり、きれいだったり、かっこよかったりしている。写真がいいというだけでなくて、実地で見てもオーディションなどなんらかの選別をへて一定のクオリティをクリアした人たちという印象を受けた。
 アイドル寄りの俳優というか、アイドルもできる俳優というか、アイドルも売れれば演技が必要になるので最初から仕込んでおくということなのか、とにかくプロ志向がきわめて強い感じだったし、実際にもうプロとして活動している人もいそうだった。
 さらにいうと、チケットのチェックなどをしていた一部のスタッフは妙にかわいかったので、研修生みたいな存在かもしれない。一方、専任のスタッフについていえば、運営進行の手際からして、それこそプロの人たちで、ふだんは実際に現場で働いているのではなかろうか。


 上のリンクのウェブページの構成で少し奇異な印象を受けるのは、まずコント作者が列挙され、次に演者が並び、最後にゲストの紹介となっていることである。ゲストが最後なのはトリということだろうけれど、ふつうは作者と演者なら演者が先だと思う。作者はあくまで裏方である。末尾にまとめてもいいと思うけど、そうなっていないのは、キングオブコントのファイナリストなど、見る人が見れば錚々たる顔ぶれがそろっていて、主催者側としてはこの知名度が動員のキーになると踏んだからだろう。

 しかし、実際には演者の中の井波杏樹という人が有名な声優さんで、この人の出演する日はそれこそ販売開始15分で完売したそうな。声優、すごすぎ。


 また前置きばかり長くなってしまったけれど、まず最初に司会として出てきたのがノッチと女優さん(名前失念。ウェブページを見ても、二人まで絞れるけど特定はできない)で、前説のようなことを始めたのだった。実物のノッチはイメージよりちょっと小柄だった。個人的にはテレビに映っているのは異世界の出来事だと思ってしまっているので、そこでしか知らない人間が目の前にいるとなんとなく落ち着かなかったけど、さすがに手慣れた感じの進行ぶりで要所にギャグを挟んで客席を沸かせつつ、最初のコントへと巧みに誘導していた。

 コントは4つ、ナンセンス・ホラー・サスペンス・学園物とバラエティに富み、どれもかなり笑った。前の方の席だったので全体を見渡すことはできなかったけれど、会場の盛り上がりも上々だったと思う。間にゲストの漫才もあって、これもさすがのおもしろさだった。ゲストで私が知っているのはとにかく明るい安村だけだったけど、さすがにもう「履いてまーす」はやらなかった。

 コントの中で日本一偏差値の低い学園に新任教師が赴任してくるコントはバブル村松のものだったけれど、ここでも登場人物たちが口で「ガチャ」とドアノブを回しドアを開ける仕草をしてから部屋へ入ってきていた。とすると、あの「ガチャ」は脚本に書きこまれているものであるらしい。劇団鋼鉄村松は不思議とこれをやる。あまり必要とは思えないところでも、やっている気がする。
 演出の裁量で削っても問題はないと思うし、ホラーのゾンビもののコントで銃口を合わせるたびにカチャという効果音を重ねるという難易度の高いことをやっていた(難しすぎてさすがに遅れ気味だった)ことからしても、口で言うのはここの演出としてふだんはやらないことだと思う。しかし、あくまで脚本に忠実に演出したらしく、それが妙に印象に残った。
 このコントの、頭の悪すぎる高校生が3人しかいないのに四天王を名乗っているというネタ(4人組のチャンバラトリオが元ネタだろうか)を、終わってから出てきた女性司会者が理解できておらず、「先生もいれて4人ってことですかね」とボケをかまし、さすがのノッチも絶句して「この後、楽屋で説明しましょう」と問題を先送りしていた。

 この後、全員が出演するロングコントがあって1時間半ぐらいでいったん終了した。ちょっと早いなと思ったのだけれど、ここから一部出演者が舞台に戻り、反省会ということで話を始めたので、客も退出する人は一人もいなかった。反省会と称しながら、実際はトークコーナーでこれも合わせて2時間ぐらいでオーラスだった。

 トークのメインは俳優から見た芸人、芸人から見た俳優ということで、いかにもこの企画らしく、こちらとしても興味をそそられる内容でこれもおもしろかった。
 俳優というものは、裏方もあわせて決められたストーリーに沿って動く必要がある。アドリブを挟んでも、最終的にはそこに戻ってこないと他の人間は身動きがとれなくなってしまう。
 一方、芸人というのは当人同士でわかりあえさえすれば、どうとでも変えられるし、むしろ、不測の事態をいかに取りこんで対応し、笑いに変えるかが腕でもあるわけだから、俳優と芸人はトラブルについての認識がけっこう異なるみたいな話だった。もちろん、突き詰めれば同じなのだろうけれど、俳優陣はまだ若い人が多く、なかなかそこまでは思いきれないみたいだった。

 全員が出演するロングコントの揉み合うところで、芸人はなんとか若い女優さんに触ろうとするのだけれど、回を重ねるごとに女優さんが距離を置くようになって近づけなかった話の締めで、当の芸人が「舞台の上では法律はありませんから」と言ったのも興味深かった。たしかに、ウケさえすればセクハラもあり、みたいなところはある気がする。

 あと、この反省会の司会は本来は裏方のディレクターが担当したのだけれど、前の回まで司会だったノッチが降格させられたのだと芸人の一人がすっぱ抜いていた。ノッチはちょくちょく反省会の流れを止めてしまっていたらしい。
 しかし、ディレクターは、「リピーターが多いですから、ちょっと雰囲気を変えてみただけです」と大人のフォローをしていた。

 芸人たちによると、笑いにシビアな客の多い自分たちのライブに較べて、この企画の方がウケることが多くやりやすいとのことだった。もっとも、それだけにトガったネタはやりにくいということもありそうではある。
 ノッチが唐突に例のオバマの真似で"Yes, we can"と言うところがあって、基本的には「もうトランプなのにまだオバマかよ」というところが狙いだとは思うのだけれど、テレビのネタを目の前でも見れた安堵からの拍手も多かったような気はする。

 お笑いと小劇場にコント台本を求め、それをまた混合チームで上演するというなかなかリスキーな企画だったと思うのだけれど、しっかり保険もかけつつきちんとした形にまとめあげていて、よくできていたしおもしろかった。
 プロデューサーの仕事というものが、どういうものなのかよくわかる企画だった。これからもその独特の立ち位置を活かして、いろんなものを混ぜこんでいってもらいたいと思う。その方がおもしろそうだから。

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