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2017年05月21日11:44

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「人生タクシー」乗客に見るイラン情勢

イラン政府によって、「20年間の映画製作禁止」「出国禁止」という
ジャファル・パナヒ監督。自分の家庭生活を撮影し、
「これは映画ではない」(原題「This Is Not a Film」)と題して、
USBで国外に持ち出して、カンヌ映画祭で賞を得た。

パナヒ監督が、タクシーの運転手に扮し、搭載カメラで撮る、
乗客とのやり取りに、イランの情勢が浮き彫りにされる。

この映画は、演出ナシ? 編集の力でここまで?と、
迷うくらいに、次々乗り込んでくる乗客が思いもよらぬ人たち。

「人生タクシー」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4193460
http://jinsei-taxi.jp/

パナヒ監督の運転するタクシーの中で、
「タイヤ2本を盗んだ窃盗犯は死刑にすべきだ」という男性と、
それに反対する女性の乗客が議論を繰り広げる。
男性の捨て台詞はホントなの? まさか、ね…。

「パナヒ監督でしょ」と気付いたのは貸しビデオ屋の男性。
ちゃっかり監督を利用して儲けようとの企みが可笑しい。
おお、どのDVDも海賊版なんだ! イランでは当たり前?

そこに交通事故に合った男性とその妻が「病院へ」と。
「妻に遺言を残さないと」と監督の携帯に必死で吹き込む男性。

遺言がないと、女性は遺産すら貰えないらしい。
ここでもイスラム社会が見えてくる。

金魚を12時に泉に戻さないと、自分たちが死んでしまうと必死の
2人の老女につかまるが、ガラス容器が割れて大騒ぎ。

姪を学校に迎えに行って車に乗せる。この少女がおしゃまで可愛い。
学校で映画を撮る宿題が出たとのことで、撮影し続ける。

先生の話として「上映できない場合のシーン」が挙げられる。
少女は何のためらいもなく素直に口にするのだが、
まさにこれがイランの言論統制を浮き彫りにする。

そのあと、携帯で要請されて回る先は、幼馴染の男性。
強盗に襲われてお金をとられたが、その話を聴いてもらいたかったと。

パナヒ監督が見かけたバラの花を抱えた女性は知人の弁護士。
乗り込んできて交わす会話に驚かされる。

スポーツ観戦をした若い女性が4人、それで当局に捕まり、
うち一人はまだ釈放されず、その女性に会いに行くと。

なんと、イランでは、スタジアムで男女が同席しての
スポーツ観戦が、女性に禁じられているのだ。

最後のシーンにエッと驚く。この映像ホントなんだ?

「映画を撮りたいが、何を撮っていいか分からない」という
学生に語った言葉が、監督の真髄を表しているようだ。

「いいかい。映画はすでに撮られ、本は書かれている。
他を探すんだ。題材はどこかに存在している。
誰も教えてやれない。自分で見つけるんだ」

淡々としたドキュメンタリータッチでありながら、
テヘランの風景や市民生活が垣間見え、ユーモラスに
厳しいイラン情勢を描いていて、とてつもなく面白い。

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