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2017年05月05日20:54

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初めて見たもの - 吉田嘉七 復員第一詩集 やけあと 虎座社より



初めて見たもの

      吉田嘉七

米もないでせう
金もないでせう
あなたの背負ふリュックサックも
生活の苦しみも重いでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

生きてゆくため、食ふためには
人は何でも捨てるでせう
復員列車にわり込んで
他人の足を踏むくらい
そいつは何でもないでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

通り道から便所まで
なるほど兵隊でいっぱいです
あなたの入る場所もない
けれどのらねばならぬとすれば
ガラスの壊れた窓しかない
これは止むを得ぬことでせう

だけど
女が窓から汽車にのる

シンタも心も弾丸傷だらけ   たまきずだらけ
だうにか生きて帰つて来た
わたくしたちが日本を見る
その最初の汽車の窓から

ああ
女が窓から汽車にのる


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