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2017年03月19日02:32

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古本にまつわる話

古本にまつわる話を集めた本を買って読み始めると、自分の色々な思い出が浮き出してくる

最も大きな転機だったのは就職して3日目 会社は今ではサラリーマンの聖地と呼ばれる新橋にあった 前日つまり就職して2日目の昼休みに都営三田線内幸町駅から地下鉄に乗って神保町に行き古本屋を見て回ったんだが、昼休みの1時間から地下鉄の往復時間と食事時間を引くと、どうにも思い通りに本探しができないのだ そこで3日目の午前中に同期入社した同僚に「会社、やめる」と告げた
同僚が課長に伝えに行くと、同僚と一緒に会社近くの喫茶店に呼ばれ、やめる理由を聞かれた
「本を探せないからです」
「・・・」
「毎日東京に来ればいくらでも古本屋に行けると思っていたんですが、甘かったみたいです」
「あのさ〜、3日坊主って言葉、知ってる? 今日やめたら、まんまじゃん」
当時社員60人のうち大卒は8人 そのうちの1人が入社早々退社したいと言い出したので、直属の上司は慌てていた すると隣りのテーブルにいた40前後の男性が声をかけてきた
「お話が聞こえてきてしまったので…」と断った上で、その人は私に言った
「あなたは本を集める時間が欲しいんですか、それとも集めた本を読む時間が欲しいんですか?」
私は本の収集が好きだったわけで、読む読まないにはこだわらなかった
「それなら、話は簡単です 本を集めるためのお金を貯めるために働きなさい」
そうアドバイスしてくれた方は帰り際に名刺を下さった そこには北青山の骨董店の店主の名があった

それから23年、私はその会社をやめずに働いた 最高の役職は営業部長までだったが、退社の挨拶に行った時、最初の上司だった課長は専務取締役になっていた 私は、言葉には出さなかったが、目で23年前の礼を言った

骨董店の方の名刺は今でも保管してある 
 
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