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2017年02月25日17:00

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かつて作成した声劇台本を公表します。「裏の顔。」

裏の顔。


想定人数:3人(男:女=2:1)

所要時間:22分程度。


※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




樫本猛←根暗な男の子。

鈴風葉月←強引な男の子。

神楽坂佳代子兼ナレーション←明るくて思慮深い女の子。





ナレーション「夏休み明けの学校というのはふつう、すごく億劫なものだろう。しかし私、神楽坂佳代子(かぐらざかかよこ)にとっては夏休み明けといえど、沢山の友達に直接会うことができる学校という場所は楽しくて仕方がなかった。」

佳代子「あーあ、今日の学校はこれで終わりかあ。始業式の日ってあっという間に学校終わりだからつまんないなー。」

猛「あ、あの!神楽坂さん!もうお帰りですか?」

ナレーション「話しかけてきたのはいつも一人で、クラスになじめないでいる男の子、樫本猛(かしもとたける)君だった。」

佳代子「んー?なに?そうだよ。今日は部活もないし。」

猛「……ぁぇ…あの…。」

佳代子「あれ、別に話とかないのであれば私はもう帰るよ?」

猛「神楽坂さん、あの…。」

佳代子「え?なぁに?」

葉月「うぉぃ!神楽ちょっと待て!」

ナレーション「今私をあだ名で呼んだ声の大きい男の子は同じくクラスメイトの鈴風葉月(すずかぜはづき)君だ。この子はこの子で突っ走りがちな性格が災いしてクラスになじめないでいる。私は一応友達だと思ってはいるけど、浮きすぎているということで正直そこまで話したりはしていない。」

佳代子「え!?どうしたのいきなり。」

葉月「お前雰囲気で分かったぞ。今神楽に告白しようとしてたんだろ!?ええ!?お前ずっと神楽のことそういう目で見てたからな!俺の目はごまかせないぞ。」

猛「な!なにを言って!」

ナレーション「この二人は決して仲が良いわけではないが、二人組を作らされる時は余り者同士同性の友達居ない者同士で不本意ながらいつも組む羽目になっているため、お互いを観察する機会は多かったのだろう。」

葉月「あからさまに動揺してるのがその証拠!神楽は俺が1年の頃から少しずつ外堀を埋めてやっとここまで来たんだ。3年になって初めて同じクラスになって初めて知り合ったお前ごときにチャンスなどくれてやるものか!」

佳代子「え、なに、なに。」

葉月「…あ?」

猛「ぐ…。」

佳代子「え?え?」

葉月「……うん?……あ。」

佳代子「それって本人の目の前で言うことじゃないよねぇ…うん。」

葉月「し、しまった!」

佳代子「えっと、樫本君、それで、樫本君の話したかったことは、実際それなの?」

猛「は、はい…。」

佳代子「おおぅ…人生の中でもこんなドタバタと人の好意を知る羽目になったのは初めてだ…。い、いやぁ、二人の気持ちは嬉しいのだけど…。」

葉月「そうだよな!まだ足りないよな。だけど待ってくれ俺は今自分を磨いている最中で、まだ途中なんだ。卒業までにはもっとちゃんとしてな、お前に惚れこんでもらえるようになってだな!」

佳代子「い、いやそうじゃなくて…私…こ…いや、えっと…。」

猛「いったい何が足りないのか教えてください!」

佳代子「意外と積極的だね、君…。」

ナレーション「この時私が考えていたことは3つ。1つは、クラス内でこのやり取りが注目され始めていて、正直恥ずかしいから早く帰りたいということ。もう2つは…。」

佳代子「あ、そうだ!ほら、この学校には7つの難行って呼ばれるものがあるでしょ?」

猛「ええ、はい。」

葉月「7つの難行?」

猛「1.テストで全教科100点取る。2.足をつけずに1000メートルを泳ぎ切る。3.1学期に一回行われる小論文発表会で最優秀賞を取る。4.校庭に咲く花全ての名前を覚える。5.全校生徒の名前を覚える。6.クラスメイト一人の望みを叶える。7.以上のことを全てクリアするまでの間無遅刻無欠席無早退でいる。」

佳代子「そう、その7つの難行。誰が言い出したか分からないけど卒業までに達成できたら願いが1つ叶うという言い伝えがあるの。それを達成できたらちゃんと真剣に考えても良いかなー、なんて…。」

葉月「本当にそれで良いのか!?」

猛「1000メートル…。」

佳代子「う、うん、まあ、達成できたら考えはするかなー、うん、うん。」

葉月「よっしゃああああああ!ありがとな神楽!俺は絶対こいつより早くそれを達成して、お前にちゃんと気持ちを伝えるからな!」

猛「同級生から望みを聞きだす…。」

佳代子「う、うん、それじゃあ今日のところは解散ってことで、またねー…。」

ナレーション「こうして私はようやく二人から解放された。翌日学校に行くと、驚きの光景を目の当たりにすることとなる。」

葉月「先生!ここに書いてある公式がこの問題では使えて、次のこの問題では使えないのはどうしてですか!?」

佳代子「おぉぉぅ…。」

ナレーション「あの鈴風君が、先生を捕まえて質問攻めにしている。にわかには信じられない状況だったが、驚きの光景それだけではなかった。」

猛「おはようございます、先生。今日は蒸しますねえ。」

ナレーション「あの樫本君が、満面の作り笑いで先生に話しかけている…。」

佳代子「樫本君、さっきは先生に話しかけてたみたいだけど、め、珍しいね。」

猛「あ、お、おは、おはようございます、神楽坂さん。クラスメイトから望みを聞き出すためにはまず人に話しかけられるようにならないとと思いまして、それで…。」

ナレーション「この二人は本気だった。即日二人とも水泳部に入部し鈴風君は入部して1ヶ月も経たないうちに1000メートルを泳ぎ切り、一方ではもともと成績優秀だった樫本君は二学期の中間試験でいきなり全教科100点を取り、更に2学期に行われた小論文発表会で樫本君は最優秀賞を受賞した。もちろん2人とも、それだけでは済まなかった。」

葉月「先生!3学期の小論文発表会のための小論文を試作したのですが、体裁面で何か不備があれば教えてください!」

猛「先生!この花と、図鑑のこのページに載っている花は同じものですよね!?」

葉月「先生!俺どうにかして後期の生徒会役員になりたいんです!え、いや、その…役員になれば生徒名簿が見られるチャンスも…い、いえ!何か皆の力になれることがしたいんです!」

猛「先生!今度の生徒会の仕事で使うので1年から3年までの生徒名簿の貸し出しをお願いできないでしょうか!」

佳代子「ふ、二人ともがんばるなあ。というかもしかして二人とも…。」

ナレーション「そんなある日、二人が久しぶりに会話をする機会があった。」

葉月「おい、お前。植物図鑑早く図書室に返せよ。俺まだ花の名前覚えきれてねえんだよ。」

猛「は、はい。たしかに今日が期限だったので…。」

葉月「知ってる。だから言った。」

猛「では今から返しにいきますが、ついてきますか?」

葉月「おう。」

猛「…。」

葉月「…。」

猛「…。」

葉月「お前、ずいぶん勉強できるんだな。」

猛「え。」

葉月「勉強だけじゃねえ。花の名前だってほとんど覚えたみたいだし、小論文でも最優秀賞取ったし。そういったことが得意なのか?」

猛「え、ええ。まあそれしか取り柄がないですからね。」

葉月「まあそうだな。暗いし表情もぜんぜん何考えてるのか読み取れねえし。…でも、生徒会入って知ったんだが、前期役員だったお前のこと先生めちゃくちゃ褒めてたぞ。頑張ってくれてたって。」

猛「そうです、か…。でも、鈴風君は絶対勉強の才能ありますよ。僕なんかよりもね。いざ勉強がんばり出してからの成績の伸び方が異常ですから。それに、生徒会の仕事頑張ってるのは鈴風君もでしょ。最初は名簿見るだけのために入ったっていうのに。」

葉月「………まあ、俺が入ったことで落ちた奴が居るんだからそりゃ当然だろ。」

ナレーション「これ以降二人が会話をすることはなく、そのまま2学期を終え、3学期の半ばに差し迫ろうとしたある日…。」

猛「…ぷは!見ててくれましたか!」

佳代子「凄い…本当に20週、つまり1000メートル泳ぎ切った。」

猛「別に学校外の市民プールはダメなんて決まりはなかった筈ですよね!?つまり、これであとは“クラスメイトの願いを叶える”と“無遅刻無欠席無早退を守り切る”だけですね!」

佳代子「にわかに現実味を帯びてきた…。鈴風君も最優秀賞取ったって連絡があったから後は“全教科100点”と“クラスメイトの願いを叶える”、そして“無遅刻無欠席無早退を守りきる”だけ…。これはもしかしたら…。でもこれは私の予定と違うというか、なんというか…。」

猛「あと少し、あと少し…。」

ナレーション「しかし、二人の7つの難行達成目前に事件が起こる。」

葉月「ここまでのテストは自己採点で100点、今日のテストを乗り切れば…んぁ!?」

ナレーション「そこには、坂の下り道を自転車を押して進む猛君が居た。」

葉月「おい!お前どうした!」

猛「あ、おはようございます…鈴風君。どうやら自転車で、割れた空き瓶を踏んでしまったようで、それでパンクしてしまって…。」

葉月「お、おう、危なかったな。見たところ転んだような怪我はないみたいだが…いや、ちょっと待てお前。ここから学校まで自転車引いてたら間に合わねえだろうが!自転車はとりあえずここに置いて、俺の後ろに乗れ。」

猛「な、いえ、それは…。」

葉月「さっさと乗れ!俺まで遅刻するだろうが!」

猛「だから、なおさら…。」

葉月「…分かった。お前は俺のクラスメイトだ。“助けてください。”と言え。それを叶えてやる。それで貸し借りは無しだ。」

猛「……それなら…。“助けてください。”諦めたくないんです。」

葉月「よっし!二人乗りはスピードが中々出ないんでな、急いで行くぞ!」

ナレーション「その日、けっきょく二人はなんとかギリギリで間に合い、無事遅刻せず試験を受けることができた。」

葉月「とりあえず、あとは鬼門の英語だけか…。」

猛「鈴風君。」

葉月「なんだよ。今忙しいから…。」

猛「昨日先生と個人的にお話をしていたところ、先生がぽろっと口にしていたのですが、今回の試験は特にここからここの単元が中心となるそうです。」

葉月「お、おう…?」

猛「がんばってください。せっかく今まで使わないでいたせいで眠り続けていた勉強の才能が目覚めようとしているんですから。」

ナレーション「鈴風君は3学期中間試験で見事に全教科100点を取った。因みに私は平均83点だった。」

葉月「よっしゃ!悪いな樫本!俺が先にクリアしたみたいだぜ!」

猛「それはどうですかね。」

葉月「な!?」

猛「たしか鈴風君、あの時こういいましたよね。“助けてくださいと言え”と。そして鈴風君はクラスメイト。つまり僕はあの時点で6つ目をクリアし、遅刻せず間に合ったことで7つ目もクリアしていた。」

葉月「なんだと!?きたねえぞ!?…ん?でもなんで、もう達成したのに…。」

猛「僕にも義理というものがありますからね。さあ、二人で行きましょう。」

ナレーション「二人が目の前にやってきた。用件は分かっている。ここまで来たら私も覚悟を決めていた。あることを、伝える覚悟を。」

佳代子「誰も居ない空き教室にいこうか…。」

ナレーション「生物準備室。生物部という部活が存在し、その部室になっているらしいが彼等の活動は金曜日だけ。火曜日である今日は空き教室となっている。」

葉月「神楽。俺達二人はこうして7つ全てを達成した。」

佳代子「うん。まさか本当にやり切るとはね…。」

葉月「俺は…。」

佳代子「ちゃんと聞くよ。」

葉月「俺は、樫本のことが嫌いだった。最初はいかにこいつの先を行くかしか考えていなかったし、最初の1つ目、水泳1000メートルを達成した時はあいつの先に立てたことがうれしかった。」

ナレーション「その言葉は私への告白ではなかった。意外だったが、まったく想像していなかったものでもなかった。」

猛「僕も鈴風君のことが嫌いでした。うるさいし、口も悪いし。だから最初先を越された時は悔しかったし、テストや小論文で抜け駆けできたことはうれしかったし、生徒名簿を見せてもらえた時は勝利が頭によぎってそれはもう気分が高揚しました。」

佳代子「…そっか。」

猛「でも、ぜんぜん勉強できなかった筈の彼が毎日毎日遅くまで居残って勉強を続けていたり、下心から入った筈の生徒会で、ちゃんと仕事を全うしていたり。意外とスイッチ一つで真面目になれるんだなってことが分かって。段々と、負けたくはないけど、頑張って欲しいとも思うようになって。」

葉月「勉強したり生徒会入ったりして分かったことは、こいつは今まで俺が知らなかっただけで本当に凄い奴だったんだなってことだ。あんな辛い勉強をずっとやり抜いていて、あんなに面倒くさくて大変な生徒会の仕事をちゃんとこなしていた。」

佳代子「…どうなることかと思っていたけど、ちゃんと伝わったみたいだね。なんで私が7つの難行を提案したのか。」

葉月「俺達にお互いの良さを知って仲良くなって欲しかった。」

佳代子「その通り。本当は樫本君が勉強を見てあげて、鈴風君が水泳の指導をしてあげるっていうのが理想だったんだけど、まあ結果オーライってところだよね。」

猛「勉強なら、ほんの少しだけアドバイスすることはありましたけどね…。僕達は神楽坂さんの掌の上に居たってことですね。」

佳代子「ごめんね、でも、やり切ったらちゃんと真剣に考えるっていうのも本当だから…。とは言え、やっぱり私は…実は、ね、私…。」

ナレーション「やはり中々言い出せなかった。けれど私は言わなければならない。」

佳代子「二人は頑張ってくれたんだから、私もちゃんと言わないといけないと思うんだ。…あの、…あの、ね…。………その…やっぱり二人の気持ちには応えられない。友達としてなら二人とも好きなんだけど、やっぱりそれを超えられなくて………それは、その、理由があって、私、私は、こ、こえ…。」

ナレーション「それでもやはり尻込みしてしまって中々言えず、そのまま数分の時が流れた。すると見かねた樫本君が口を挟んだ。」

猛「いえ、良いんです。ちゃんと真剣に考えて、ちゃんと真剣にダメと答えてくれただけで十分、言いたくないことを無理に言わせる気はありませんよ。ねえ。」

葉月「そうだな。」

佳代子「で、でも、だって…。」

猛「罪悪感があるというのなら…一つお願いを聞いていただけませんか?7つの難行を突破したら、願いが一つ叶うのでしょう?」

佳代子「お願い?」

猛「神楽坂さんが望んでいたことに僕の望みを加えて、期末試験の前にこの三人で集まって勉強会をしませんか?それでみんなで期末試験、勝負しましょう。」

葉月「たまには良いこと言うな!でもそれ元々勉強できるお前が一番有利じゃねえか!」

猛「全教科100点取った男が何を弱気なことを言っているんです?」

佳代子「べ、べつに良いけど…実はこの中で今一番勉強できないの私だからね?最下位に罰ゲームとか無しだからね…?」

猛「それはもちろん無しで。」

葉月「ようし、そうと決まったら早速自習室に行って今日の復習してくるか!負けねーぞ二人とも!」

猛「抜け駆けはやめてください!僕も明日の予習をしに行きます!」

ナレーション「そうして二人は私を置き去りにして自習室へと走って行ってしまった。中間試験が終わったばかりだというのになんと気の早くやる気のあることだろう。」





佳代子「………行った、か…。良かった…言う覚悟をしてはいたけど、結局言わなくて済んだ…。私が実は、声変わりしてない小学生の男の子しかそういう目で見られないということを。」



完。



※最後の佳代子の発言は、思想信条に反し無理だという方は何か適当に特殊性癖等を告白してくだされば大丈夫です。なお、その場合、佳代子がそれらを告白しようとして「こ」「こえ」と言いかけているシーンについても適宜つじつまが合うように変えてください。

(例1)担任の先生と付き合っている。

(例2)声変わりしてない小学生の女の子しかそういう目で見られない。
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