mixiユーザー(id:168675)

2017年02月14日01:19

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天と地と、読了

海音寺潮五郎「天と地と」読了。

いや素晴らしかった。

最大の見せ場、謙信と信玄の激突する「第四次 川中島の戦い」が、まだなのに。

みるみる残りページが少なくなるから。


「あれ?ページ配分間違えてるよ?」

「行くぜ俺たちの川中島の戦いは、これからだ!海音寺潮五郎先生の次回作にご期待ください!」

な、打ち切りエンドかと思ったら!

見事!

武田の「啄木鳥作戦」も
謙信の「車がかりの陣」も

漏らさず、登場!


武田の本陣に殴りこんだ謙信が斬りかかり、信玄が扇で受ける名シーンも、あるじゃないですか!ジャーン!


そうか!いちいちアクションは書かなくていいんですね!


戦国小説は、火力じゃない!


お互いに「俺が上だ」と思ってる謙信と信玄の、デスノートばりの心理戦!

敵に「よし、今だ!100パーセント勝てる!」と思わせて、出てきた所を150パーセントで叩くという。


さらに!


さらにさらに!


海音寺潮五郎先生、上杉謙信の童貞力を300パーセント、アップ!


川中島の決戦を前に、童貞武将、上杉謙信が、片思いし続けてきた年上の姫様が、病で明日をも知れない命に!


いても立ってもいられなくなった謙信、早速駆けつけ、「俺は、お前が好きだ!」と男子中学生ライクにド直球に告白!


姫様も「ずっと前から好きでした」と、ボカロの歌詞の様な相思相愛!


「私はもう死にます!最後の思い出に抱いて!」とすがりつく姫様に、「やべっ、セックスってどうやんだっけ」と焦る謙信。


姫様の体を案じた謙信は、その時はセックスせず、「武田信玄を倒したら結婚しよう」と、バリバリに不吉なフラグを立てて、清い体のまま、川中島へ向かいます。


激戦を終え、「武田信玄に一泡吹かせた」と、ご機嫌で越後に帰ってきた謙信に届いたのは、姫様が死んだという知らせ。


姫様が死んだのは、ちょうど謙信が、武田の本陣で信玄に斬りかかった頃。


「俺を勝たせる為に、あいつは…」


ここで、昔の香港映画の様に。

ウルトラセブンのエレキングの回の様に。

余計なエピローグなく、いきなり劇終!


泣きましたね。


夕飯食ってた中華料理屋で、思わず泣いちゃった。

姫様が死んで、バッサリ終わるのがいいよな。


続く、あとがきで、海音寺潮五郎先生が、「いや〜、自分で書いたのに、読み返すと面白くてビックリ」みたいな事を書いていて、納得です。


あとがきで、朝日新聞社から「成長物語を書いて欲しい」と依頼を受け。

「わかりました。上杉謙信の話にします」
「ちょ、成長物語と言ったでしょ!」
「だから、謙信が赤ちゃんの時から書きます!」というやり取りがあったそうですが。


謎に満ちた武将、上杉謙信を、「愛に飢えながらも、愛を求めず、遂に愛を得なかった、永遠の少年」として描いたのは、さすがです。

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