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2017年02月11日13:32

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平安五神伝二作目 発つ鳥跡を濁す 1章−2 救出

序章   http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954301029&owner_id=51444815
1章ー1 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1957642461&owner_id=51444815


「ギャアァァ!」

目を射られたかのような衝撃に羽ばたきを止める怪鳥。その隙を見逃す追手組ではない。玄武が長い袖を振るい、小さな銀の煌めきを飛ばす。飛刀は茶色の羽毛を散らして怪鳥の羽に突き立つ。縫い止められたかのように動きを止めた怪鳥は、獲物と自身の重さに引きずられるようにして地上へと落下していく。

「あーーーーーー!!」
光元の絶叫が響く中、樹上でその様子を見ていた玄武は飛刀を飛ばしたままの姿勢を戻した。その横を黄金色の疾風が駆けていく。

「掴まれ光元!」

落下地点へ跳躍した黄龍が腕を伸ばす。あとは主人を回収すれば全てが丸く収まるはず・・・だったが、

「ギュオォ・・・オオ・・・」

刃物まみれの翼が開き、空気を掴んだ。落下の勢いが急停止し、逆に浮き上がる。主人の足を掴もうと下で待ち構えていた黄龍の手は寸でのところで空を掴んだ。黄龍は舌打ちして玄武の横に着地する。

「おいクー、効いてねぇみたいだぞ!」
「案外、毒への耐性があるようだな。それなりに実績のある麻痺毒を使ったんだが・・・」
「毒より刃物の方をどうにかした方がいいんじゃねぇか?てめぇが非力すぎて刃が届いてねぇんだろ」
「馬鹿力と同列に扱うな、オレの品位が下がる」
「あ?誰が馬鹿だって?」

再び進み始めた怪鳥に運ばれつつ、光元は落胆の表情。

「あ〜あ、せっかく二人で頑張る機会が出来たと思ったのにコレだよ。いい加減にしてよね〜。こういう空飛ぶ敵にはシーちゃんの風が一番向いてるんだろうけど、まだ帰ってきてないし・・・今なら高度も下がったし、真下に二人がいるから落ちて死ぬって事はないだろうし、もういっそ自力で抜け出しちゃうかな〜」

光元が自由な方の片手で懐を探り出したその時、甲高い子供の声を聞いた気がした。現状にそぐわない幻聴に今まで食われてきた子供達の怨霊かな、などと考えていると、

「キャハハハハハ」

今度はもっとはっきりとした笑い声が聞こえてきた。

「キャハハハハ!!もっと!もっと速くーー!」

声の方を向くと、青い大空の中に赤い点があった。視界の赤い点はどんどん大きくなり、楕円になり、翼を広げた人の形となる。それは深紅の羽を広げた男だった。年の頃は玄武と黄龍の中間辺りだろうか、羽と同色の瞳と短髪が、白を基調とした衣装によく映えている。
そんな男は脇に少女を抱えていた。彼女の背に羽は見当たらないが、男と同色の髪と瞳の色をしている。新手か、と光元は身を固くする。
赤髪の二人組は怪鳥に並走してきた。少女が無邪気な笑みで光元を指さす。

「お兄ちゃんも空の旅?それ、お兄ちゃんのお友達?私はね、燿(よう)お兄ちゃんと一緒にお空の旅をしているんだよ!」
「そ、そうなんだ・・・」

身構えていた光元は呑気な質問に脱力感を覚える。

「僕は好きで飛んでる訳じゃないんだよねぇ・・・むしろ、そろそろ地面に足を着けて歩きたいかな」
「じゃあなんで飛んでるの?」
「なんと言えばいいか・・・誘拐?」
「ユーカイ?」
「強制連行?かどわかし?どう説明すればいいかな?」
「ん〜、人の嫌がる事をしたら駄目だよね。うん!助けてあげようよ、燿お兄ちゃん!」

お願いしてくる少女に視線を向ける男。無機質な瞳に僅かな戸惑いの色が見て取れる。続けて彼の視線は真下に落ちた。赤い瞳は山中を走る玄武と黄龍を追っている。二人は新手の出方を伺っているようで攻撃の素振りは見せていない。光元を盾にされた場合を懸念しているのだろう。

「あ、二人の事なら心配しないで下さい。僕の仲間ですから」

光元の言葉に燿は値踏みするような視線を向けたが、やがて納得したのか少女を抱え直し上空に舞い上がり光元の視界から消える。そして怪鳥の前方に再び姿を現した。
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