<strong>《ノルウェイの森(上)(下)/村上春樹》</strong>
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本作の魅力は、ある種のクールさにあります。シックな虚無感とでもいえば良いのでしょうか。それは、主人公の目線によるものだと思われます。彼は自らの人生でさえ、距離を取って生きているようなところがあります。どんな状況にあっても、ものごとを必要最低限の言葉で表現し、感情移入することは、極力抑えられています。けれどそれは、あきらめや絶望によるものではありません。事実を事実として受け入れ、そのことをうまく処理できないでいる無力さからくるものだと思われます。その対極にあるものとして、学生運動が提示されているのではないでしょうか。当時の学生運動のことはよく知りませんが、革命だのなんだの、薄っぺらな思想の押売りと、中身のない流行だったように描かれています。
人生とは、死ぬまで続く自身との対話によって形成され、絶対的な孤独の中で起こっているものなのだということを、かつて何かで読んだことがあります。
人は他者との関係を持ちながらも、本質的には人生を独りで生きています。ですから、孤独とは単なる事実にすぎず、けっして悲観すべきものではありません。孤独とは、孤立した寂しさというだけでなく、人が人として生きるための、ひとつの理なのではないでしょうか。
おそらく人は皆、得体のしれない不安にさいなまれ、迷いながら生きているのだと思います。この主人公と同じように。それはたぶん、年齢を重ねても同じなのでしょう。なぜなら、誰もが人生について、常に初心者だからです。人は人生を二度生きることはできないのですから。
私たちには、死と同じように避けられないものがあります。それは生きることです。この作品を読んで、そのような言葉を思い出しました。
べそかきアルルカンの詩的日常
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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