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2016年11月30日12:13

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11-17 西丹沢2016 紅葉 見納め

2016年11月17日(木)

西丹沢自然教室を起点に白石林道沿いの
沢を覗いて歩く紅葉散策

(画像は
紅葉を前景に朝の大室山を遠望する、
モロクボ沢 大滝(30m)、
用木沢の大ブナ終焉を彩る紅葉)

アルバムは日記末尾に貼ってあります)


0、紅葉の見納めは丹沢で

10月31日の西丹沢(大室山)に始まり、11月6日の奥秩父(西仙波)、13日の奥多摩(ヨコスズ尾根・カロー大滝・タワ尾根) と続いた紅葉山行。

やはり締めは こよなく愛する丹沢で!!というわけで有給休暇を使って出掛ける事にした。

水曜木曜と2日間の休暇を取得したが、予報では水曜は「晴れ 夕方から曇り」、木曜は「曇り 昼過ぎから晴れ」。

水曜のほうが天気は良さそうだが夜は塾の仕事があるので、山は木曜になってしまう。

青天を期待しながら横浜の実家で迎えた木曜日の未明 、ふと目を覚まして窓から射しこむ光跡を辿ると南西の空にくっきりと明るい月が浮かんでおり、絶好の山日和を確信する。



1、プロの仕事

西丹沢行きの始発バスは松田警察署前で署員たちが降り、玄倉でユーシンブルーを目指すハイカーが降り、玄倉から乗った三保小学校の児童たちが学校前で降りると、後はほんの数名を残すのみとなった。

自分は運転席のすぐ後ろに座っていたが、初老の運転手さんは 小学生をバス停まで見送りに来た保護者に挨拶し、多くの運転手が苦労する山間部の狭い道でも運転は滑らかで正確で、朝の散歩中のお婆さんにも手を振るその背中に人柄と技術を兼ね備えたプロの姿を見たような思いだ。

西丹沢自然教室に着くと若い眼鏡の職員に声を掛けられた。
自分はそんなに頻繁に自然教室を起点に歩いているわけではないのだが、彼は数ヶ月ぶりに会っても個人として認識している。
登山届に書くルートが一般登山道ではないから、覚えられてしまっているのだろうか。

観察眼も優れていて、西丹沢に慣れていなさそうな人やコースの下調べをしてきていないと思われる人には 細かく諸注意を与えているし、自分と話している時でも常に周囲の登山者への目配りを欠かさない。
登山基地の職員に求められる能力として登山者を見る眼力や遭難を防ぐアドバイス力が重要で、その意味では彼もまたプロなのだと思う。

今月 奥秩父や奥多摩に行った話をすると、話の流れで「常連さんにだけ教えるトリビアです」とツツジ新道のカラマツの話をしてくれた。

平日に仕事を休んで出かけると、いつもより仔細に人の仕事ぶりを見てしまう。



2、東沢出合の山神社

ゆっくりと準備し、西丹沢公園橋を見に行くと焼山や西沢出合は紅葉最盛期を迎え、朝陽に照らされて眩しいほどに輝いている。

職員は「先週辺りまでは色がくすんで どうかな、と思ってましたが今週になってやっと少し綺麗に色づいてきました。」と言う。

ザックを背負った時、白い軽トラックが走ってきて自販機の横に停まった。
60歳くらいの男性が降りてきて山神様の社の前で何かしている。
お参りだろうか。

社の横の斜面には10月に畦ヶ丸と大室山でお世話になったポール代わりの「相棒」が置いてある。
それに、山神様に御挨拶してから出発したい。男性がお参りを終えるのを待つ事にした。

これまで何度も何度も歩いているのに気付かなかったのだが、石段の脇に木札が立っており、「東沢出合の山神」と書いてある。
説明の文は山神の一般的な位置づけについてだが、文章が「丹沢・桂秋山域の山の神々」などの著書で知られる山神研究家の佐藤芝明 氏のそれに酷似している。
ひょっとして佐藤氏が書いたものだろうか。
「ここは山麓の箒沢との境界であり、ここから奥の山は山神の領域である」とも書かれていた。

男性は蝋燭に火を灯したり、新しいお供え物を袋から出したりしている。それを見ていて、ハッと気付いた。
今日は17日、「山の神の日」だ。
ということは山麓の箒沢辺りの集落の方か、この山神に所縁のある方に違いない。

自分の視線に気付いて、男性が石段を下りてきた。
山神について尋ねてみると「以前はもっと奥の東沢にあったが、大水で流されてきたのをここに祀ったと聞いている。」との事だった。

自分はてっきり西丹沢自然教室が登山安全祈願に設置した社だろうくらいに思っていたのだが、もっと古くからある地元の山神様であるとわかった。

大変ありがたいお話を聞かせていただいた。

脇の斜面にはちゃんと相棒があり、今日も相棒をお供に出発だ。



3、トリキ沢

白石林道を北上しながら見回すと塩地窪沢ノ頭や善六山の紅葉が眩しく、北には大室山などの稜線が青空に明瞭な陰影を刻んでいる。

いつもなら山に取り付くまでの準備運動のような緊張感のある歩きだが、今日は登るつもりが無いので何とも気楽だ。

用木沢出合のゲートを過ぎ、太陽の位置や高度を見ながら 明るい沢の出合を探す。

まずは「トリキ沢」に入ってみる事にした。 トリキ沢右岸尾根は南から大室山に登るバリエーションルートの一つとしてVR愛好家には知られている。
しかしトリキ沢そのものは無名で、沢屋さんも全然 入らない。

堰堤を3つ越えて奥に入って行くと小滝が現れた。沢屋さんは滝とは呼ばないだろうが底が摩耗した登山靴を履いている自分にとっては手強い。
7mの細い樋状で、水流の右を登って越える。

越えはしたが、周囲の斜面が立ってきたのでここまでとする。
引き返して出合に戻る。



4、モロクボ沢 大滝(30m) (室窪沢)

太陽が少し高くなってきた。
続いてモロクボ沢を目指す。ここは丹沢の沢屋さんには有名で、F1(30m)までなら登山靴でも行けるらしい。

キャンプ場の跡地に入り、やまびこ橋を渡って入渓する。
谷は広くて水流はそこそこ多いが、平坦なので歩きやすく飛び石での徒渉も容易だ。

奥に進むにつれて自然度が高まり、滝への期待も高まってくる。
平坦な沢の遡行を続け、滝はまだかと焦れてきた頃にそれらしい大滝が見えてきた。ここまで誰にも会っていないが、滝の前にも誰も居なかった。

近づいていくと、滝の姿に驚いた。
人工的な堰堤なのでは、と目を疑うほどに横に鋭く一直線に切れた岩壁の上から奔流がなだれ落ちている。
一見して男性的な印象の滝だ。

釜は見えず、黒光りする巨大な台座のような岩が前方に張り出していて登山靴では近付く事ができない。
もっとよく見ようと左岸から右岸に渡ってみたが、やはりよく研かれた滑る岩なので接近は無理だ。

滝はまだ日陰で薄暗く、落ち口の上にかろうじて陽光が届いている。

暫く観ていたが、なぜか感動があまり湧いてこない。
確かに大きな滝で見応えはあるのだが、なんというか、拒絶されているような感じがする。一言で表すとすれば雰囲気が冷たい。
滝に相対してこんな風に感じたのは初めてで、先週 訪ねた奥多摩のカロー大滝が素晴らし過ぎて感覚が鈍磨したのかな、とも思うがどうなのだろう。

陽射しが当たれば印象が違うのかな、と大休憩を取って待ってみたが、おそらく谷底まで光は届かない、と諦めた。

(その後 ネットで調べてみたところ「冷たい印象の滝」との評価があった。全く同感なのだがこれは滝の形状による印象なのだろうか、またいずれ再訪してみたい)

やまびこ橋まで戻り、陽当たりの良いところで昼休憩とする。
僅かに雲は出ているが 穏やかな青天に恵まれた。



5、水元ノ沢

続いて、水元ノ沢に入る。
出合の水流が少ないので涸れ沢 同然だろうと思いながらも堰堤を次々と越えていくが、なぜ水がほとんど無い沢にこんなに堰堤を造る必要があったのか不思議だ。
ふだん涸れていると大雨で一気に増水するのだろうか。

少し戻り、水流のある右俣に近づくが3mくらいのボロボロの壁が邪魔で奥を覗けない。
諦めようかと思った瞬間に残置ロープに気付いた。
等間隔にコブが結ばれたトラロープは泥で汚れていたが これを使って這い上がると、水流が僅かしかない狭い谷が奥に続いていた。
ちょっと先まで様子を見てから引き返す。

水元ノ沢、という名前なのに水が極僅かしかない。名の由来が気になる沢だ。



6、源太罠場沢で転倒

最後に用木沢と、その支流である源太罠場沢の様子を見に行く事にした。

用木沢出合からは一般登山道で、入ってすぐに50代と20代らしい父娘と擦れ違う。今日は快晴だったので稜線からは展望が素晴らしかっただろう。

用木沢の紅葉を眺めながら進むと、いかにも山好きな風貌の40代男性に出会い、「これからですか!」と聞かれた。
下山者には、自分は犬越路の避難小屋にでも泊まるように見えるのかもしれない。

やがて源太罠場沢出合に至る。
用木沢の支沢の中では最も大きく、水流もそこそこあるが出合から暫くは平坦で広いのでどこでも歩ける。

ここは丹沢の中でも名前が興味深い沢の一つだ。
想像するに源太は猟師の名前で、昔々 彼がこの沢を縄張りとして巧みな罠を仕掛けて狩りをしていたのだろう。

見回しながら歩き、一瞬 足元への注意を欠いた瞬間、石に躓いてそのままばったりと前に転倒してしまった。
爪先を支点として90度の扇形の弧を描くような転び方で、その衝撃から左手に持っていたスマホが砕け散ったかと覚悟したが、反射的に庇っていたようで無傷だった。
その代わり 右手 薬指からは出血している。
躓いたとはいえ、雪面に大の字で倒れて人型をつける時のような見事な転びっぷりに我ながら唖然とする。

まるで見えない罠に嵌まったかのようで、草葉の陰で源太が嗤っているような気がした。
この沢は奥が深そうで興味深いが時間も無いので、また出直す事にして用木沢に引き返す。

傷の手当てをしていると、若い単独男性が下っていった。



7、命の襷

あとはこの日 最後に確認したい場所に向かう。

用木沢出合と犬越路のちょうど中間地点にある「用木沢の大ブナ」だ。
樹齢400年とも言われていたが、主幹の下部を残して今年9月の台風で倒壊してしまった。

沢床に落ちた枝が黄葉しているとすればこの秋が見納めとなるので見ておきたい。
ブナの残った幹が見えてくると、その左右を周囲の木々の紅葉が彩り、ちょうど陽も射してまるで油絵のように一つの風景に収まっている。

沢床に落ちた枝の葉は既に枯れてしまっていた。

幾つもの季節を乗り越えて枝葉を育んできた大木の幹がもうそのすべての役割を終えて朽ちていくだけの姿を見ていると、すぐには立ち去り難く 名残惜しい。

暮れゆく晩秋の陽射しが山の端に翳るまでここに居ようと決め、その苔蒸した幹に触れてあらためて見上げた時、すっと視線が一点に吸い寄せられて釘付けになった。

それまでは逆光で見えなかったのだが、上部の折れ口に近いところに新たに植物が育っている。
葉の形状や付き方はブナではないので、鳥か風に運ばれてきた何かの種がそこで芽を出して根づき、成長したらしい。
茎は細いが5枚の葉が輪生の形に綺麗に並んでいる。

いずれ倒れてしまうであろう枯木の上で今後も育つ事ができるのかはわからないが、幾百年を経たブナの上で命の襷が確かに繋がっているのを見る事ができたのは感動的だった。

西丹沢 用木沢 孤高の大ブナ
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7、帰路

西丹沢自然教室に戻ると、眼鏡の職員が「おかえりなさい。今日は気楽に散歩だったんですね 」と声をかけてきた。
「紅葉を満喫してきました。今日は快晴だったから山の上のほうは楽しめたでしょうね。」と返すと、「(檜洞丸 山頂の)青ヶ岳山荘の管理人さんにさっき聞いたんですが『紅葉がいいのはツツジ新道までで上はもうほとんど終わってる』とおっしゃってました。」との事だった。

ペレットストーブがある教室に入ってザックを下ろし、本棚の本を見ると丹沢に関する蔵書が豊富なので、いつか一度腰を据えて蔵書や過去のビジターセンターの自然情報などにじっくりと目を通してみたいものだ。

今年の紅葉は夏と秋口が天候不順だった為か 今一つ鮮やかさに欠けて外れ年とも言われるが、自分としては奥秩父・奥多摩、そして丹沢の紅葉を楽しむ事ができて思い出深い秋となった。

いよいよ山は冬支度。冬晴れの山歩きや新雪スノーハイクが楽しみだ。

(山行アルバム 写真37枚)
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モリカワ

(現 事務局長)





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