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2016年11月26日17:13

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キューバ音楽との出会いの旅/ロス・ナランホス

2002年6月29日発行の「そんりさ」VOL.74に掲載した原稿です。最近のロス・ナランホスの動向については、さかぐちとおるさんの新刊『キューバ音楽を歩く旅』(彩流社)に載っています。
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ロス・ナランホスは一九二六年、キューバ中部の都市シエンフエゴスで結成され、一九二〇年代から三〇年代にかけてのソンの興隆期を担った、名門バンドのひとつである。ロス・ナランホスが結成された一九二六年はまた、キューバの音楽史に燦然と輝くソンの名門バンド、セプテート・ナシオナルがイグナシオ・ピニェイロによって結成された年でもあり、ちなみにその前年の二五年には、すでにセステート(セプテート編成になるのは二七年のこと)・アバネーロが、ようやく、初のレコーディングを行っている。ロス・ナランホスはまさに、そんなソンの創成期に結成されたバンドなのだ。
もちろん、現在のセプテート・ナシオナールやセプテート・アバネーロがそうであるように、ロス・ナランホスには、その結成当時のオリジナル・メンバーは、現在、ひとりも在籍していない。結成当時、その中心メンバー(ヴォーカル)であったといわれているグメルシンド・ソリアーノ・サジェスはすでに一〇年以上も前に死亡しており、結成時の他のオリジナル・メンバーの詳細な資料も、また、当時の音源も、何ひとつ残ってはいないのが実態だ(もちろん、今後、新たに発掘される可能性はある)。しかしながら、ロス・ナランホスはその結成当時のセプテート(七重奏)・スタイルを今もなお、かたくなに守り抜き、一九二〇〜三〇年代の、いわば黄金期のソンの伝統を今日に伝える貴重なグループの、間違いなくひとつである。
二年前に出版されたさかぐちとおる氏の『キューバ音楽紀行』(東京書籍)には、シエンフエゴスの街の様子と共に、彼が街で偶然出会ったロス・ナランホスのメンバーに連れられて、彼らの演奏を聴きに行った時のエピソードが、紹介されている。
「(ロス・ナランホスは)一〇人くらいの編成だが、ソンの七人編成が音の厚みを増したような楽団だ。歌手のうち二人は八〇代、演奏者の大部分もかなり高齢で、奏でる音は年季の入ったものであり、その厚みのある演奏は素晴らしいものだった」と、そうさかぐち氏は書いている。氏は続けて、その彼らの日本公演が同年中に予定されていることにも触れているが、筆者は青山の決して大きくはないライブハウスで行われた、その彼らの日本公演を幸運にも聴くことが出来たひとりである。
彼らのアルバムは現在、アオラ・コーポレーションから日本語の解説付きで二枚出ており、その一枚は『褐色のソン』(CRACD213)、もう一枚は『オレンジの樹の下のソン』(CRACD219)である。後者は彼らの来日記念盤として発売されたもので、新たな女性メンバーも加わった最新の録音盤である。
よっぽどのキューバ音楽ファンでなければおそらくその名を聞いたこともないであろうロス・ナランホスの日本公演が実現したのは、いうまでもなく映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の大ヒットと、それにより突如巻き起こり、そしてそれこそ台風のようにあっという間に通り過ぎていった感のある日本における「キューバ音楽ブーム」によるものである。この映画のヒットによるにわかキューバ音楽ファンの急増は、年季の入った古参キューバ音楽ファンの眉を大いにひそめさせたが、私としてはそれにより多くのキューバ人ミュージシャンの来日公演が実現し、また、大手CDショップのキューバ音楽コーナーがさらに充実するなど、たとえ一過性のものであれ、ブームはむしろ大歓迎であった。
ロス・ナランホスの日本公演は、素晴らしいの一言に尽きるものであった。八〇代という高齢をまったく感じさせないヴォーカル、厚みと軽快さを併せ持った演奏、そして何よりも彼らのパフォーマンスの楽しさ、すべてが超一級品だった。皆さん、是非、彼らのCDを聴いて下さい。

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