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2016年10月24日16:02

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10-10 丹沢湖から秦野峠林道を歩く

2016年10月10日(月)(祝)

玄倉(丹沢湖)→大ノ山 南面徘徊→秦野峠林道→日影山 撤退→林道秦野峠→
寄大橋→寄


添付画像は
玄倉ノ野(右)と大杉山(左)「平坦の共演」

断念した日影山、
秦野峠林道 竣工記念碑

アルバム
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0、1ヶ月半ぶりの山へ

気象庁によると10月10日は晴れの特異日で、統計では晴れる確率70%だという。
「この3連休では最終日の10日 体育の日がお出かけ日和です」と気象サイトでも喧伝していた。
尤も、前日夜には晴れマーク一色にまで好転していた各サイトの予報も、当日朝には曇りマークが増え、実際 朝から曇っていた。
天気が昼にかけて次第に回復し、秋晴れが広がる事を期待しての出発である。

臨時バスの後の西丹沢自然教室行きの本来の始発バスには空席もあり、一人席を確保できて一安心。
しかし天候は冴えない。

丹沢湖畔の玄倉で降りる人多数。最近人気の「ユーシン渓谷」を目指すようだ。この日はツーリング族も集結して賑やかなので玄倉商店のベンチは避け、丹沢湖ロッヂのベンチで準備を開始。

いつもの事だが、山に来た途端に孤独癖が日常よりさらに強く発動する。
ところが、ザックを下ろした瞬間に目の前にミニバンが横付けし、総勢8人の中高年グループが賑やかに登場。
「最近ユーシンに行く人増えたからねえ!」とオバチャンが大声を出したので「アンタもな!」と心の中でツッコミを入れる。

玄倉商店の人が出てきて駐車場の手続きをしていたが、「今年は長雨続きでヒルが多く発生しているので草むらに入らないように」というアドバイスが聴こえてきた。

西丹沢はまだ侵食を免れているが、玄倉周辺の中央丹沢にもヒルが増えてきたというのは憂鬱な話だ。
「大丈夫だよ、まだそんな時間じゃないから」「はいはいヒルは昼からね」という彼らの会話には釣られて笑いそうになったが、実際ヒルと聞いて自分も怯んだのは確かだ。

遠望すれば標高1000m以上の山は霧に沈み、空には灰色の雲が犇めいて湿度も高い。まさに絶好のヒル日和である。



1、不遇の「大ノ山」 を徘徊

丹沢湖を挟んで玄倉の集落の対岸には幾つかの山がある。
玄倉バス停の真正面にあるのが「大ノ山」だが知名度は極めて低く、山歩きの対象としては全く顧みられていない。

この大ノ山の背後には遠見山(880)、大杉山(861)、馬草山(692)といった低山が立ち並び、この地味な山域は読図山行の訓練の場として、渋好みの静山派ハイカーには知られている。

一方、丹沢湖を挟んで南西にあるのが有名な「大野山」で、同じ読みであるだけでなく標高までもが大ノ山と同じ723m。

こちらは最近まで山頂に県営の乳牛育成牧場があったのと、富士見百景として展望が抜群に良い事でファミリーにも人気の山だ。

丹沢で「おおのやま」と言えば100人中99人 、いや1000人中999人までがこの大野山を思い浮かべるだろうから、大ノ山のほうは全く以て不遇の山という他無い。

西丹沢登山詳細図には今日沢橋の袂から取り付くルート記載があり、2014年の春に歩いた。2015年の春にはルートを少し変えて三椏の花の群落を満喫し、2016年春にはこの山の懐に入る境ノ沢を遡行してみた。そして秋、またちょっと取り付く尾根を変えて登ってみようというのがこの日の計画だ。

この山域では前回もそうだったが山に入ってほんの数分で鹿の警戒鳴きを聴く。
姿は見えないがわりと近いところから暫く鳴き声が続いていた。

尾根を拾いながら登っていくと今日沢橋からのルートに合流し、いったん鹿柵に沿って下ってから登り返す。
女郎蜘蛛の巣が次々と現れるのでそのたびに蜘蛛が地面に落ちないように端を破るが、せっかく時間をかけて丁寧に張ったであろう網を壊すのは申し訳なく、ごめんよー、と蜘蛛に声をかけながら進む。

柵の向こうには玄倉周辺の山々が見える。
登っていくと次第に足元が藪めいてきて、間もなく前方を腰までの高さの藪に阻まれた。
正規の登山道ではないとはいえ登山詳細図に載っているルート、物好きが歩いてそれなりに踏み跡がある事を期待していたが、ちょっと甘かったようだ。

今年は長雨が続いた為か藪が繁茂しており、昨日の雨でまだ濡れている。
今日は藪装備ではなく無防備なので、ダニとヒルの二重奏でも奏でられては堪らない。

仕方なく引き返す事にした。探索がてら、地図も見ないで西の尾根を下ってみたが次第に急傾斜となって沢音が高まる。
春に遡行した境ノ沢だろうが崖に出ては困るので登り返す。

そこで今度は南に下ってみたが今度は湖岸道路の擁壁の上に出そうな雰囲気なのでまた登り返す。

標高500mちょっとのところをひたすら徘徊する何とも冴えない山歩きだが、山を歩けるだけで嬉しい。

結局、地図でRFして今日沢橋に下り立つ事ができた。

ウロウロしている最中に気になる斜面や尾根を見つけたので、いずれまたじっくり歩き回って、この知られざる大ノ山をもっと知りたくなってしまった。


2、賑わう丹沢湖

11時過ぎ。湖岸の道路を本格的に走っているのは大学生らしい男子の一団、橋の上には大きな望遠レンズを空に向けて鷹を探すグループ、道路を行き交うサイクリスト、 そしてツーリング族。
これからユーシン渓谷に向かうらしい軽装のカップルもいた。

財政緊縮策で丹沢湖ビジターセンターが閉鎖された後になって「ユーシンブルー」が各種メディアで紹介され、玄倉林道を歩く人が急増したのはまったく皮肉というしかない。

工事フェンスで囲まれたビジターセンターの建物の近くの空き地は最近 無料駐車場となり、数十台の車が置かれていた。
これも大半はユーシン目当てだろう。



3、秦野峠林道を歩く

林道に入るとすぐに本格派の自転車の大学生たち3人が追い抜いていった。
お揃いのあのピチッとしたヒーロー物のようなコスチューム、あれは何と呼ぶのだろう。自転車ではなくロードバイクなら、彼らはロードバイカーとでも呼べばいいのだろうか?
そのジャンルに疎いので用語はわからないが、山越え峠越えを「輪行」と言うそうだ。

この林道は昨年夏8月に丹沢湖花火大会を見に行く為に松田町 寄(やどりき)から林道秦野峠を越えて山北町 玄倉へと通しで歩いたが、今日は逆から歩く。

幅員5mの全面舗装路だが落石や崩落、亀裂、斜面から出水している箇所も多く、自転車では走りづらいだろう。

車も人も通らない林道をひたすら黙々と歩いていく。何か楽しみを見つけようと山を眺めたりするのだが、やはり退屈には変わりない。

前方を見上げると遥か彼方の山肌に巻きつくガードレールが見えて、山腹を延々と羊腸する林道の長ったらしさに辟易する。

蕗平橋は山神峠への登山道(廃道)の取り付きだったが、藪に埋もれて跡形も無い。
さらにその先には秦野峠への旧 径路があるがここも藪が繁茂して人が入っている形跡は無い。

高度を上げていくと次第に背後の展望が開けてくる。目立つのは山頂が平らで長い玄倉ノ野(856)と、こちらも山頂が東西に長く平坦な大杉山(861)だ。
その向こうには石棚山稜と西丹沢の山々が濃い霧に烟っている。



4、日影山 嫌な予感で撤退

やがて日影山(876)への分岐であるブッツェ峠に到着。林道が貫いているので峠の趣きは無いが、元の地形が峠なのはわかる。ここから山頂までは僅か400m。せっかく山歩きに来たんだから一つくらいはピークを踏んでおかなきゃな、と寄り道する事にした。

昨年春に歩いた時には、距離は僅かだがガレ混じりの荒涼とした急傾斜の尾根だった記憶がある。
14時。両手を使う場面に備えて軍手をはめて、山道に入る。

薄暗い樹間を縫って進むと、尾根が痩せて角度が立ってくる。
東にダルマ沢ノ頭とタケ山が見えたので一瞥した瞬間、足元の土が崩れて思わず膝をついた。

油断は禁物、と気を引き締める。
ところが、僅か10mほど進んだところで身体を引き上げようと手をかけた背の高い立ち木が突然ポッキリと折れて、今度は大きくバランスを崩してしまった。

僅かな距離で二度の躓き、士気が下がる。
あらためてガレた急斜面を見上げると、重苦しい曇天に支配された灰色の視界にふと凶相が過った気がして足が止まる。

山頂まで距離は僅か300m、しかし気が進まない。端的に言えば、何やら悪い予感がする。

足に故障は無いが、引き返そうと決めた。
最近は直感に正直に従うようになっている。
直感にはきっと理由があるし、40歳を過ぎて急に迷信深くなったわけでは無いが無理に直感に逆らう事もあるまい。

林道に出てあらためて日影山を眺めると、昨年春の事を思い出した。
山頂は展望が利かず、赤錆びた柵の向こうには薄暗い人工林が立ち並び、手前には蔦が絡み付いた木々が疎らに立っていた。
山頂を踏んですぐに引き返して急斜面を下りる時には難儀し、緊張の中で眼にしたマメザクラの小さな花は寒風にちりちりと震えていた。

日影山の名の由来はわからないが、この山の影で午前中は北麓の玄倉が日陰になってしまう事によるのだろう、と推測する。

前回も天気は曇りだったが、山頂の雰囲気も含めて決して明るい印象の山ではない。
いつかよく晴れた爽やかな日に登ったら、また印象は全然違うのだろうか。



5、林道秦野峠

ここから林道秦野峠までアップダウンがあり、蛇行するように付けられた道は思いの外、長い。
さらに、この頃には時折 雨粒が落ちてきた。
いい加減 焦れてきたところで、15時、漸く峠に至る。

秦野峠林道 竣工記念の大きな石碑の前にザックを下ろすと、すぐに後ろから人声が聴こえてきた。檜岳山稜を縦走してきたグループのようだ。
人声に背を向けて、カップラーメンを作る準備を始める。

間もなく50代くらいの3人組が現れ、うち二人が「こんにちは」と言いながら石碑の裏に回り込み、「(富士山の)裾のほうだけ見えるね」と確認して去っていった。

豚骨のカップラーメンを食べ、あらためて周りを見ると赤い字で「鎮魂」と彫られた慰霊碑が草の中にあった。

集落を結ぶ山越え峠越えの連絡道、そして林業用として昭和45年に着工し、25年の歳月と43億円の巨費を投じて平成7年に完成したというこの林道だが、他の多くの林道同様、甚だ寂しい雰囲気の道となっている。


6、寄を目指して下る

ここからは下り一辺倒で、これまでにも何度か歩いた事がある。悪い癖で、途中からは退屈過ぎて半分寝ながらの林道下りとなった。

漸く目が冴えた後は檜岳山稜に登る幾つかのVRの取り付きを確認し、やがて寄大橋に至る。
今回は赤い橋全体が白いシートと足場に覆われていた。十分 赤い橋だったが、再度 真っ赤に塗るのだろうか。

17時。薄闇が流れはじめたモノクロの景色の中に、濃霧に烟る鍋割山を望む。

寄に着いたが、次のバスまで30分程 待たなければならない。

中津川のほとりで着替えやザックの整理をしていると再び小雨が降りはじめた。
川向こうの斜面の民家からはけたたましい犬の吠え声が響く。
隙間の無い曇天の下、急速に光が失われて行く景色を見ながら、時間的にもあらためて日影山に登らなくて良かったと感じた。

18時。新松田駅行きのバスに乗り込んだ時には、辺りはすっかり暮れ落ちて夜闇に包まれていた。

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(現 事務局長)
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