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2016年10月19日11:25

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隕石さん

自分とほぼ同じぐらいの年齢かと思われる。
隣の班の彼は、少し猫背で、いつもちょっと疲れた雰囲気を醸し出している。
彼との会話は。

「今日も、疲れがみなぎってますね」

から始まる。なんのことはない、自分だって疲れているのだけれど。
最近になって思ったのは、この職場が何に似ているかというと、ずばり刑務所じゃないかな。

彼はというと、

「隕石、落ちてこないかな」

が口癖。自分は、ひそかに彼を「隕石さん」と呼んでいる。

そんな彼と仕事のエレベーターで二人になったときは、自分にとってちょっとした癒しの時間なのです。

「いやあ、隕石、落ちてこないかな、早く」
「わはは、それより、○○○○が○○○○しないかな」
「いいねえ、○○○○かあ。○○○○もいっしょにね」

あまりにネガティブすぎて、文字になんかできない二人きりの密室の会話。
一種のカタルシス。

そんな彼が、突然職場に来なくなったのです。
無断欠勤が、一日二日三日と続き、電話連絡もつかない模様。
携帯を置いたまま、失踪したらしい。
そして四日目、発見されたのが、富士の樹海。

でも、生きててよかった。

自分は冗談めかしの二人の会話が、隕石さんにとっては、意外にも、ずっと奥深いところから出た本音だったと知って、愕然としたのでした。
頑張り続けたある朝、ぷつっと、何かが切れてしまったんだな。

とりあえず、休むなり、辞めるなりして、心を整えるのが先ですよ。
死ぬのは後。



あるマンションのエレベーターの中には、監視カメラがついていて、背後上部から自分を映している。そのモニターが前方の階数表示の上にあって、つまり自分のリアルタイムの後ろ姿が映るようになっている。
その時の自分はそれなりに深刻なことを考えていた気がするけれど。

あらま、なんとも、間抜けで無造作な後ろ姿。

外からは人の心の奥は探りえない。






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