八作が保育園へ行くまでのひと時を庭で過ごす。
庭といっても、半分が駐車場、半分が畑。
二人で農作業。
途中まで元気に育っていた白菜がヨトウムシにやられて、白骨化。
いっそここまできれいに食べられると気持ちがいい。人間の完敗。
で、その跡地にジャガイモを植えようということになったのでした。春に採った芋から丁度芽が出てきたのです。ダメもとでこれを種イモとして。
土を掘っていると、あれま、まるまる太ったコガネムシの幼虫。
害虫なのだけれど、八作がほおっておくわけがない。
「かわいい、、、」
「、、、じゃ、飼うか」
親バカは楽しい。
以前カブトムシを入れていた小さい飼育箱があった。マット(飼育用の木くず)も入ったまま。
これに入れようと、中を点検していると。
「、、、、、、、、!!!!」
幼虫が一匹いる。
???
一瞬判断停止。次の瞬間、あ、と思う。
これは、子供を残さなかったと思っていたオスの「ばかお」とメスの「王理恵」の子供!
以前卵のあるなしを点検したけれど、見逃していたのかもしれない。
ふいに感動が押し寄せる。
相米慎二の映画「あ、春」を思い出す。
余命わずかのベッドの中で、山崎努演じる老人は誰にも知られずに鶏の卵を温めていたのだ。
臨終のあと、突然聞こえるひよこの産声。
自らの死と引き換えに残した一つの命。
体の大きなもう一匹のオスにしょっちゅうこずきまわされて、背中が穴だらけになり、他の仲間より先にその命を終えた「ばかお」だけれど、ちゃんとすることはしていたのだ。
卵から孵ったらしく、最近急に増えたトカゲの子供たちが元気に這いずりまわる庭の真ん中で、しばし感慨にふける。
こんな風に毎日を送ることは多分正しいことなんじゃないかという啓示に似た思いが、
ふいに、胸を突いたのでした。
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