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2016年08月28日21:53

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"Russian Campaign"の記事

 アメリカのゲーム雑誌ジェネラルに掲載されていた"Russian Campaign"のリプレイ記事が、タクテクスで翻訳・転載されていたのを知り、いそいそとバックナンバーを取り出してきて読んだのでございます。

 最初にネタを割っておきますとこの記事、あちらでは著名らしいプレイヤーが新たなソ連軍のセットアップを考案し、それが本当に有効かどうかを郵便プレイ(当時はまだ電子メールなんて気の利いたものは普及していませんでした)で検証し、その経過に両軍のプレイヤーと中立のコメントをつけたものですが、実は肝心のセットアップに穴があってそこを衝かれた上、さらに防御側の見落としミスもあり、天候のサイコロも不利に働くというトリプルパンチで年も越さないままソ連軍の投了によりゲームは終了してしまいました。

 そういう意味では、ゲームを紹介する記事としてはあまり適当でないのですけど、まだ慣れていないプレイヤーには参考になるところもなかなか多い記事でした。

 というわけで、北方のバルト軍管区の配置から見ていきましょう。

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 といっても、ここは戦線が狭いので攻撃可能ヘクスが1つしかありません。そして、ここを攻撃できるドイツ北方軍集団の最大戦力が29。画像ではわかりにくいのですが、スタックの下は第1戦車軍団(戦闘力2)なので、現状の戦力比は5:1です。ソ連軍としては自動的勝利にならない程度に弱い部隊で足止めして、できるだけ強力な部隊を温存したいということでしょうか。
 個人的には、第11軍(戦闘力6)と第1戦車軍団で戦闘比を3:1に抑えつつ、戦闘結果がD1やEXといった損害が1ユニットのみの場合には第1戦車軍団を除去、第11軍は後退させて温存というのがこのゲームのセオリーに近い気がするし、記事の中の中立的なコメントが言っていることも要はそういうことではないかと思われます。

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 戦闘結果表(上の画像は2のものですが、1でもまったく同じです)によると、3:1でもDE(防御側全滅)の結果があるので、記事のソ連軍プレイヤーはこれを忌避したのでしょう。しかし、5:1にはDS(防御側降伏)の可能性もあり、戦車軍団を補充できなくなることも、かなりの不利ではあって悩ましいところです。

 ちなみに、第11軍と第8軍(戦闘力5)をスタックさせれば戦闘比を2:1にまで落とすことができますが、ここまでやると今度はドイツ軍がスツーカを投入して戦力比を5:1に上げてDEやDSを狙ってくるかもしれません。この目論見が成功した場合、第2線の戦車軍団は自動的勝利で弾き飛ばされ、バルト海沿岸をドイツ装甲軍団が疾走することにもなりかねないので、なにごとも過ぎたるは及ばざるが如しと申せましょう。

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 さて、ドイツ軍が断トツの最大戦力を叩きこんできた西方軍管区ですが、ここはふつうの二線防御では自動的勝利によって突破口を穿たれ、全軍崩壊の引き金となってしまう懸案の戦区です。
 どう守るかについてですが、やはり、ミンスク前面の森林から戦力を引き抜いてカウナス方面の防備を強化させます。このゲームは装甲部隊が森林ヘクスに進入するとそこで移動を終了させなければならないので、差し向けるのは歩兵になりますが遅いのであまり進めませんし、基本ルールのみでプレイする場合は第1ターンの第1インパルスにミンスクを攻撃できない(マストアタックのゲームなので隣接自体できない)ため、これでなんとか第一撃はしのげます。
 おかげで、このゲームはいきなりヒストリカルな展開にはなりません。

 注意すべきは、ドイツ軍はここから兵力を南方へ転出させていることです。1ターンの第1インパルス、中央軍集団のユニットはソビエト西方軍管区のユニットしか攻撃できませんから、これは特に序盤は貴重な攻撃の機会を放棄したということです。それだけにこの選択の目指すものは大きいのですが、それはまた後ほど。

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 さて、風雲急を告げるキエフ軍管区です。ここは地形も険しく比較的にソ連軍が強力で、対するドイツの南方軍集団には攻め切るほどの戦力がなかったので、史実でも苦戦したところなのですが、このゲームでは最もアツい戦場となっています。なにより、バルト軍管区と西方軍管区でドイツ軍が投入してこなかったスツーカが2つもここに叩きこんでいます。

 注目すべきは画像の左側、1つのスタックから2ヘクスを攻撃しているところです。このゲーム、攻撃側の全ユニットが隣接していれば複数ヘクスを攻撃対象にすることができます。マストアタックのゲームなので、そうしなければいけない状況が発生しうるということでもあるのですが、ここではスタックで攻撃先ヘクスを分割せず、まとめて一つの攻撃としています。
 なぜかといえば、理由はいくつかありますが、最大のそれは二つの攻撃とした場合、それぞれの攻撃にスツーカのシフトを適用しようとするとスツーカが2つ必要になりますが、まとめておけばスツーカ1つで両方の攻撃にシフトが適用されるからです。
 このゲームにおける基本的なテクニックの一つといえるでしょう。

 もっとも、そもそもこのスタックがここへ移動できるはずないやんけ!ということに気づかれた方もいらっしゃると思います。事実、この手前にソ連軍ユニットのZOCがあるので、本来ならこのスタックはここまで進入できないはずなのです。
 なぜ、この移動が可能だったかについては、論述が前後してしまいますが、オデッサ軍管区のところであわせて説明させてもらいます。

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 さて、キエフ軍管区のあの攻撃がなぜ可能になったのかといえば、この画像(ピンボケしてますが)中央左寄りで第四騎兵軍団(戦闘力3)が7:1攻撃とスツーカによって自動的勝利で降伏させられており、そのためにルーマニアからキエフ軍管区への道が開かれてしまっているからなのでした。
 このゲームは第1ターンの第1インパルスに攻撃対象の条件さえ満たせば、部隊を国境線から東のどこへ配置しても構いません。ルーマニア駐留部隊でなくてもルーマニアに置いていいし、まだ参戦していなかったので両軍とも第1ターンにはハンガリー領内に進入できないゲームも多いのですが、"Russian Campaign"にはその制約はありません。
 キエフ軍管区の西は山がちのハンガリー国境であり、南はオデッサ軍管区ですから、ここへの南方軍集団による攻撃はもっぱらルヴォフ方面からなされます。つまり、オデッサ軍管区との境界は意識としてほぼ後方ということになるので、オデッサ軍管区の部隊が除去されルーマニアに配置された南方軍集団の部隊が進出してきたというのは、ソ連軍プレイヤーにしてみると、いきなり背後から襲われたという感覚に近いのではないでしょうか。心理的にも不意をつかれたと思います。

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 こうして、第1ターンのドイツ軍は、強力なキエフ軍管区の部隊を国境沿いに張りつかせたまま迂回して前進し、包囲して退路を断つという1940年におけるフランス侵攻を彷彿とさせる成功を収めました。

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 対するソ連軍は北方においてはミンスクを放棄、リガは防備してドヴィナ河沿いに戦線を構築。

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 南方ではブーク河に防衛ラインを敷きました。

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 第2ターン、北方のドイツ軍はあっさりリガを陥落させてドヴィナ河の戦線も蹂躙、この方面のソ連軍部隊をほぼマップ上から駆逐します。

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 南方においては、ソ連軍にまた見落としがありました。ほとんどの部隊は山地ヘクスに進入するとそのインパルスの移動は終了するのですが、山岳部隊のみは移動を続けることが可能であり、ソ連軍プレイヤーはこの南方におけるドイツ軍山岳軍団の所在を失念してしまっていたため、キエフ前面の防衛線を破られ、ドイツ軍はセットアップにおいて北方軍集団や中央軍集団からルーマニア国内へ転出させていた装甲部隊と合流してキエフ攻撃を敢行、防衛部隊を退却させて事実上の占領を達成しました。
 また、オデッサも陥落しています。

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 だいたいそうなるのがこのゲームのソ連軍とはいえ、ゲーム開始時の部隊はほぼマップ上から消えてしまっているので、もう大したことはできません。
 北方ではとにかくレニングラードとモスクワを守り、レニングラードの前にわずかばかりの戦線を築きます。

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 南方ではスターリノ、ハリコフ、クルスクに部隊を配置。防衛線を作れるような部隊は存在しないので、いずれも拠点防御です。このゲーム、盤端ではなく都市にさえ補給線をつなぐことができれば補給切れにはならないので、いざとなれば戦線にこだわることなく都市に籠もる方がきちんと守れます。

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 第3ターン、レニングラードでは独ソ両軍が対峙し、モスクワ前面ではヴィテブスクとスモレンスクとブリヤンスクがドイツ軍の手に落ちました。このターンには大量の増援が登場しますが、それにしても首都防衛すら怪しい状況となっています。

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 南方ではハリコフが陥落しました。

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 第4ターン、もはやソ連軍を守れるものは天候しかないというのに、よりによって晴れてしまいました。確率は1/6ですが、11月/12月ターンでも晴れることがあります。次のターンはかならず雪ですが。

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 北方ではついにレニングラードが陥落してしまいます。

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 南方でもソ連軍はスターリノを失います。さすがにこれではいかんともしがたく、ソ連軍プレイヤーが投了を申し入れてゲームは終了し、リプレイ記事もここで幕となりました。勝利条件の厳しいゲームなので(敵の首都を占領して指導者ユニットを除去する、あるいはマップ上の都市をすべて占領する)、基本的には引き分けになるゲームだと思っていたのですが、いくつか条件が重なると熟練したプレイヤー同士であっても一方的な展開になってしまうという、なかなか衝撃的な内容でした。
 基本的なノウハウを公開するためのリプレイとしては極端すぎるようにも思いますけど、記事としてのメリハリというか、ちゃんとオチがつくところまでやるとなると、こういうことになるのかもしれません。

 でも、細かく検討すれば今の私には参考にできることをまだまだ拾い出せそうなので、もう少し読み返してみようと思います。

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