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2016年06月14日20:04

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『コブラ作戦』におけるヘクスをめぐっての攻防

 『コブラ作戦』はその名の通り、ノルマンディー上陸作戦後の連合軍による内陸部への進撃を扱ったゲームです。2008年にアメリカでストラテジー&タクテクス誌の付録として発表され、2012年には国際通信社からコマンドマガジンの付録として翻訳されて発売されました。

 先日、YSGAの例会でこのゲームをプレイさせてもらいました。その前にもやったことがあったのですが、その時にはわからなかったことに気づいたりして興味深かったです。2回目はちょっと余裕もできて、目の前の事態について前後の文脈なども考えられるようになり、少しく理解も深まるのでしょう。

 このゲームのルールにはオーバーランや機械化移動などがあり、目次だけ眺めると典型的なPGGシステムといえます。しかし、広く知られているようにここでの連合軍にとっての戦闘は、ボカージュといわれる生垣で果樹園や牧場を区切った地形にこもった敵兵を狩り出すため、多大な出血を強いられながら寸土を刻むように進んでいくものでした。

 PGGシステムは東部戦線のダイナミックな機動戦を再現するものですから、そりゃ、題材とシステムが噛み合ってないんじゃないですかね、と思ってしまうのですけど、これが意外とオツでした。

 終始、連合軍が優勢のまま戦線を内陸へと進めていくというのが、ゲーム全体の流れです。ドイツ軍は装甲教導師団や重戦車大隊など、ごく一部に強力な部隊こそあるものの、なかなか反撃の機会もないまま後退につぐ後退を強いられます。
 とはいっても、そのまま連合軍が勝てるかといえばそうでもなくて、ドイツ軍の増援が登場してくるにしたがって進撃は鈍ってきます。退却させるだけではなく、ある程度は除去して敵の防衛線を破断界に持ちこみ、最終的には突破しないとゲームには勝利できません。

 このゲーム、戦闘結果はそれぞれ損害の数値で表されており、その数値を退却ヘクス数とステップロスに割り振ることになっています。損害を少なくとも1つステップロスに適用しなければならないのは、防御側の場合はこの数値が3以上の場合のみです。2以下ならば、すべて退却に割り当てることができれるので、逃げさえすれば部隊に損害は及びません。そして、3以上となるのは、かなりの高戦闘比で攻撃をかけてさらにサイコロの目にも左右されます。そういう状況に持ちこむこと自体、けっこう大変です。
 2の結果で2ヘクス退却させてから、いかに除去へ持っていくか、一方、ドイツ軍としてはいかにそれを阻むか。わずか数ヘクスをめぐる攻防に、東部戦線のダイナミズムを再現するためのシステムが凝縮され翻案されて用いられています。そこがこのゲームの興味深いところでした。

 ここで少し紛らわしいのですが、私が『コブラ作戦』を持っていないので、以降の説明にはエポック・レックカンパニーの『史上最大の作戦』による再現ドキュメンタリー風画像を用いさせてもらいます。幸いなことに、これらのゲームはヘクスのグレイン(柾目方向)が同じでした。
 って、どっちか知っている人間ですら希少でしょうから、蛇足な前置きですけど。

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 さて、この横一列のなんの変哲もない戦線。

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 戦闘で1ヘクス後退させただけでは、まだつけいる隙はありません。というか、戦線がこうなることはままありますね。もとからこの場合は、1ヘクス後退させるだけでいいのですけど、1ヘクスからしか攻撃できないので、それはそれで難しかったりします。

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 2ヘクス後退させると、続く機械化移動フェイズでその両隣を包囲できます。

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 用意していたユニットが少なかったので、歩兵も動かしてしまいましたが、こんな感じです。『コブラ作戦』のルールでは、フェイズの冒頭で敵ZOCにいた部隊でも離脱は可能ですが、その場合は移動先で敵ZOCに入ることができないので、予め後方に包囲の片翼を担当させる戦車部隊を控えさせておく必要があります。ある意味、攻撃時の予備の必要性を再現したルールと申せましょう。

 こういう形を作られた場合、ドイツ軍としてはいかに対処すべきかといえば、可能ならば反撃により包囲部隊を後退させて原状へ回復することなのですが(最も冴えていたころのドイツ軍なら、ここから攻守を入れ換えて逆に押し返すところですけれど)、とりあえず、被包囲部隊の救出です。

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 このゲームも他の多くのゲームと同様、基本的に敵ZOCを退却路にすることはできませんが、味方の部隊が存在すれば、そこを通って後退することができます。そこで、退却路を支援するための部隊を置き、さらに他の部隊と協同で包囲部隊を攻撃し、攻撃側が損害を受けたとしても、退却によってこの損害を消費して被包囲部隊を安全なヘクスへ下げてしまいます。
 実際には攻撃側がなんらかの損害を被った場合、最低1つはステップロスを適用しなければならないのですが、攻撃参加部隊のどこへ適用するかは任意なので、損害吸収用の部隊さえ手当てしておけば、それと引き換えに強力な前線部隊を無傷で下げることが可能です。
 しかも、丁寧なことに退却の途中で通過したヘクスの部隊はスタック制限に反しないかぎり、拾っていっしょに下がれるというルールもあるため、オーバーランで個別に撃破される心配もありません。

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 そんなまどろっこしいことをしなくても、二線防御を引けばいいじゃん、というか、機械化移動のあるゲームならそれが常識じゃね? とは、まさにその通りなのですが、このゲーム、戦闘後前進中のオーバーランが可能なので、二線防御をするなら後方にもそれなりに強力な部隊を配置しなければならず、それが可能なほどドイツ軍は部隊がそろってはいません。

 この通り、このゲームは退却と戦闘後前進にまつわるルールがちょっと不思議なほど詳細で、読んだ当初は奇異な感じがしたのですが、実際にユニットをマップに配置して動かしてみると、なるほどデザイナーの提示している展開がかなりはっきり像を結んできて、ゲームもなかなか白熱しましたが、システムを理解して働きかけ、動かしていく感じがスリリングでした。

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