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2016年06月05日21:25

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ぶるうピーター

小山田いく先生、読み返し

「ぶるうピーター」


大人気のまま連載を終えた「すくらっぷ・ブック」の直後に開始された「ぶるう〜」は物凄く編集部に推されてた印象がある。

カラー回も多く「第一次小山田いく絶頂期」というと「すくらっぷ〜」が挙がるが「ぶるう〜」も当時の勢いは凄かった。


全寮制の高校に入学してくる少年、一帆を主人公にした「ぶるうピーター」は、中学卒業と共に幕を閉じた「すくらっぷ・ブック」の後続企画にふさわしかった。

「すくらっぷ〜」のイチノと坂口が、全寮制の高専に進学する為、仲間達と離れ離れになるのを悩んでたが、こういう繋げ方は小山田先生は上手い。


学校側の都合で、女子寮に入れられるというエロゲの様な一話から、仲違いしている男女寮生の和解、廃部寸前のヨットの再建など、一帆は「すくらっぷ〜」のキャラにはないアクティブさで奔走する。

その反面、空気が読めないというか、トラブルを起こしやすいという欠点をキチンと描いてるのも流石である。


見返して面白かったのは、堅苦しい規則に縛られている学生寮に、アクティブな主人公が来て、「規律や秩序を破壊する話」じゃなくて、「新しい規律や秩序を作る話」なんだよね。

旧悪を否定するだけじゃ未来に進めない。

自分達で新しいやり方を作らないと。小山田先生らしい真面目さだ。


当時は、後半の衝撃的なヒロイン交代のせいか「実験作」「野心作」という印象が強かった「ぶるうピーター」だが、読み返してみると流石の安定感である。


特に、衝撃の「ヒロイン交代」は…これ当時、みんなケンカした一帆と西夜が仲直りする展開を期待するよなあ。

決断を下す回なんて連載時カラーだもん。

そこで仲直りするんだろうな、と思ってたら、別れる決断を下すんだよね。

当時は驚いたけど、今、読み返すと話の流れはキチンとそうなってる。さすがだ。


ただ一帆、壱岐、亀のトリオや女子寮の三人組など、初期配置のキャラクターげ上手くアンサンブルを奏でず、テコ入れで新キャラを出した感は若干否めない。


それもやはり、主人公の一帆がアクティブ過ぎるゆえかと思うのだが、「一人の情熱に、学園の皆が引きづられて動き出す」という「すくらっぷ〜」にもあった展開は悪くない。

只、一帆というキャラクターの人間的な弱さや、読者から見たら「嫌な所」までキチンと描いているのが小山田先生の凄さかな、と思う。

しかし読み返しても、殆ど学校描写が無かった。
ほんとに「寮」の話!

学生寮を宝探しのアルゴー船に喩え、そこでの共同生活を航海に喩えた構成は見事。


特に終盤の畳み方は、ある意味、「すくらっぷ〜」以上かもしれない。


あと、後の「小山田いく漫画」の、かなりのパターンは、この「ぶるうピーター」で確立された気がする。

特に一帆が体現した「精神的な居場所がなく、彷徨える主人公」像は、後々(「むじな注意報!」辺り)まで小山田漫画のアイコンになっていくよなあ。

「星のローカス」の聡がプロトタイプか


「ぶるうピーター」を読み返して思ったのは、小山田先生が、明らかに「すくらっぷ・ブックの1ランク上」を狙っていたんだなあ、という事。

内容の密度が濃いし、ネームも常に意味深で終わる。

ただギャグ描写に関しては、「すくらっぷ〜」の中盤の方が上だった。

あのギャグの破壊力が「ぶるう〜」にあったら…


あとちょい残念だったのは、「すくらっぷ〜」の後半にも見られたんだけど「ぶるうピーター」で完全に「楽しい学園イベント」が、「そこで何か不幸が起こるフラグ」になっちゃうんだよね。

「すくらっぷ〜」の二年生時みたいな、みんなで楽しい学園イベントをこなす話も小山田先生の真骨頂だけに惜しい。


個人的には、82〜83年のマクロスやらザブングル辺りのアニメブームと共に「あの頃の空気」を思い出させる作品である。


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