晦に処(お)る者は能く顕(けん)を見、顕に拠る者は晦を見ず。
・・・・言志後録64
【現代語訳】
暗い所にいる者は、明るい所をよく見ることができるが、明るい所にいる者は、暗い所を見ることができない。
【付記】
本文は、下から上はよく見えるが、上から下は見えにくいと取れば、上に立つ人の心得と考えられる。
・・・以上、「言志四録(2)」(講談社文庫)より。
以下、「超訳・言志四録 佐藤一斉の自分に火をつける言葉」より。
これは、暗さによる見え方の違いを説明しているのではなく、明るい場所にいる人への戒めといっていい。
「暗がりにも目をやらないと、人間が傲慢になるし、調子に乗って思わぬ落とし穴にはまることもある。だから、明るいところにいても、暗闇に目を開くことがたいせつだよ」
そう佐藤一斉は語りかけているのです。
同じことを「言志後録59」では次のように言っています。
進歩中に退歩を忘れず、故に躓(つまず)かず。
前に向かって進んでいるときに、ちょっと後ろに下がって、前方を見ることを忘れてはいけない。そうすれば、つまずくことはなくなる」とい意味です。
人は順調なときほど、ずんずん歩を進めることしか考えなくなります。それでは「猪突猛進」になってしまいます。前にどんな困難や問題が待ち受けているかわからいのに、それが見えなくなってしまうのです。
だからちょっと後退してみる。すると、前を注意深く見る心の余裕が生まれ、「あれにつまずいたら、大変だ」というような問題点に気づくことができます。
・・・・以上。
以前、日記で鈴木秀子さんの言葉「私たちは苦しみに耐える力だけではなく、幸せに耐える力も必要です」を紹介しました。
たしかに、私たちは逆境にあるときとか、 病気、事故、トラブル・・・等々 この世的な不幸があっても、 それに耐え、立派に乗り越える方は少なくありません。
しかし、出世して名誉、権力、財力を極めたとき、 慢心や驕りになって転落するケースはよく聞きます。
成功したとき、出世したとき、本当の自分というものが出やすいのです。自省と謙虚を常に失いたくないものです。
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