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2016年03月26日11:51

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貴方の心の中に、貴方以外の別の誰かはいますか?


【貴方の心の中に、貴方以外の別の誰かはいますか?】

ある有名な作家が、物語を書く為にドイツを訪れた。
文章を書く際、ドイツ語を徹底的に読める様になりたかったからだそうだ。

家を探していた彼は、あるドイツ人の老人に出会う。
老人は彼に建物の5階の部屋を勧めてくれた。
じゃあそこで、と言うと老人はカラカラ笑い、彼に言った。

「ははは、若いの、焦らなくても良いさ。
住んでみなきゃ良し悪し何か分からんて。
だから先にお試しで住んでみてはいかがかな?
長く住む予定なのなら、一回住んでみてからもう一度考えて決めれば良い。」

老人の話に乗った彼は5日間お試しで住んでみることにした。
住み始めて気がついたのは、今が予想以上に温かかったこと。
老人も部屋の点検や検査はきちんとしていて、とても信用できた。

また、ゴミは態々下まで行って捨てずとも、部屋の前に置いておけば、時間になると綺麗さっぱり清掃してくれる。毎日決まった時間に清掃してくれるので、廊下はいつも綺麗だ。

そしてお試し期間最終日。
ここに住み始めて5日目、もうすぐ老人に住むかどうか言わなくてはならない時間だというのに、彼は不注意で老人が用意してくれたガラスのコップを割ってしまった。

老人に言わなくてはならないのだか、彼はとても緊張していた。
コップを割ったから無理やりこの部屋にこのまま住めと言われかねないと思っていたからだ。
しかし電話して老人にそのことを言うと、意外なことに老人は彼を咎めたりはしなかった。

「そんなに緊張しなさんな、故意にやったわけじゃないんだろう?
そのコップは安いやつだし、明日また一つ持って行くよ。」

彼は老人の返答に喜び、すぐさま長期契約を結んでほしいと老人に話した。
老人はただ相槌を打ち、電話を切った。

翌日、彼は割れたコップを片して別のゴミが入っているゴミ袋に入れて、いつも通り外の廊下に置いておく。そして老人が部屋を訪れ、彼に割れたコップをどうしたのか聞いた。
「ちゃんと掃除して、ゴミ袋に入れて部屋の外に置いといたよ。」
と彼が答えると、老人は外に出て、ゴミ袋を開けて中を見る。

老人の表情は見る見るうちに暗い表情へと変わっていき、部屋へ戻ると彼を見て一言。
「明日には出て行ってくれないか、君に部屋は貸せない。」
彼はビックリしながら疑問を口にする。
「貴方の大事なガラスのコップを割ってしまったから、怒ってしまったんですか?」

老人はゆっくりと首を横に振る。
「君の心の中には君自身以外の人がいないからさ。」

そういった老人の手には新しいゴミ袋とトング。
老人は彼がゴミをまとめて入れたゴミ袋を開けると、分別しなおした。
老人のゴミの分別はとても細かく、暫くすると割れたコップを入れた袋に「割れたコップと破片が入っています。危険。」と書いた紙を貼り、その他のゴミを入れたゴミ袋には「安全」と書いた紙を貼る。清掃してくれている人が知らずに触って怪我しない為の配慮である。

それを横で見ていた彼はその場に佇んでいた。
少し考えれば分かるであろうことに思い至らず、「清掃してくれるから」と適当に分別していたし、ゴミ袋を分けることさえしなかった。
最悪清掃の人が怪我をしていたかもしれない。
老人が言ったことに一言返すことも何かをいう事も出来ず、ただ横で静かにその様子を見ていた。どうすべきだったのか、考えながら…。

あれから数年が経つ。あの日を境に自分の事を見つめ直し、他人のことを考えるようになった。

――皆さんの心の中に、自分以外の別の誰かはいますか?

(学習電子報より)
(画像:Yahooより)
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