商店街に新しく和菓子の喫茶店ができたので「おぜんざい」を食べに行った。
ワタシはハナから「ぜんざい狙い」であるが、ハハは「こんなとこ、できたん・・・」とぽえっとしている。
おお、わらびもちに、いそべ巻きに団子まであるではないか。うはうは。
「オカーサン、何にする?」と聞いてみても「何にしようかなー」となかなか決まらない。
どうも認知症になると「食べたいものが決められなくなる」みたいだ。
決められないのかわからないのか、わからんけど。
それでも長いことかかって「わらび餅にするわ」ということになったのだが、なんとわらび餅に(暖かいの・冷たいの)があり、セットについてる飲み物も、抹茶・煎茶・コーヒー(温/冷)・紅茶(温/冷)という選択肢がっ。
・・・そこは、さっくりとワタシが決める。
「わらび餅は冷たいので。それとお煎茶ください」
店員さんが下がってから、店内を見回す。
6人がけのテーブルと4人がけのテーブル、あとカウンター席が8席ほどの小さな店である。
まぁ、店頭でお餅とかお赤飯を売ってるのがメインなので、そんなもんなのかな。
各テーブルの上に大き目のミルク缶くらいの石の碾き臼が置いてある。
石臼の上には小さな刷毛と茶漉しが置いてある。
ワタシたちの座っているテーブルは割と薄くてちゃっちい。
石臼とは明らかに不釣合いだ。。。。
* * * * *
先におぜんざいが出た。
うほ。久しぶりである。
お餅だけじゃなくて栗まではいっているではないか。
口直しの塩塩昆布もいいないいな。
しかもおまけでわらび餅もついているではないか。 天国。
厨房から豆を炒る音がきこえてくる。
でへへ・・と頬がゆるみっぱなしのワタシの前に、竹の器に入った黒豆(炒ったやつ)が出てきた。
ワタシ (ナニコレ?・・・まさか・・・)
店員 「わらび餅のきな粉です。炒りたてを石臼でひいてください。この穴に黒豆を2つ3つ入れて、取っ手を時計の反対回りにまわします」
その時間帯には店員さんは一人しかおらず、彼女はどうも中国の人らしい。
ワタシが頼んだのは「おぜんざい」である。
でもワタシとハハの間では「力仕事はワタシ担当」という暗黙の了解がある。
わらび餅が出てこない以上、ワタシが先におぜんざいを食べるわけにはいかぬ。
仕方がないので説明を受けたとおりにやってみるが、石臼をまわしても下からきな粉が出てこない。
ワタシ 「アレ? 出てこないね・・・」
ハハ 「反対にまわしてるのと違う? かしてみ?」
痴呆症でも戦中派は、実務で使ったことがあるから強気なのだ。
ごーりごーりごーりごーり・・・
ハハ 「出てるか?」
ワタシ 「いんや、出てない・・・時計と反対回りやから逆やで・・かしてみ?」
右へごりごり10回まわしたかと思うと「逆やて!」「いや、こっちて言うた!」と右へ左へごりごりごりごり・・・・
最初は丁寧に回していたのに、だんだん扱いが雑になってくる。
それと比例して、ちゃちいテーブルがガタガタ揺れる。
最後には二人とも羽織っていたダウンジャケットを脱ぎ、片方がテーブルを押さえ、もう片方が立ち上がって石臼を挽く・・という、非常にアクション色の濃い和菓子の風景になっていた。
ワタシ 「なんか、マメに暗号打ってるみたいやな・・・」
ハハ 「あっはっは!」
び、ビックリした。
ハハがそんな元気な笑い方をしたのはいつ以来だろう。
アーダコーダやっていると店員さんが見に来てくれた。
ワタシ 「これ、こっち(左まわし)だよね?」
店員 「はい、時計と反対側にまわしてください」
ワタシ 「きなこ、出てこないんだけど・・・」
店員さんはしばらく回してくれたが、やっぱり出ない。
店員さんは若干ムキになって、ものすごい勢いで石臼を回し始めた。
テーブルがゆれる。
石臼が飛び跳ねる。
わーわーわー。
ワタシのおぜんざいば無事かっ!!
どうやらハハが「2〜3個ずつ」といわれていたのを、一気にマメを全部いれたのでマメヅマリを起こしていたらしい。
石臼を少し持ち上げて、中をみてみると、先に使った人のきなこがいっぱい詰まっていたので、多分、今度行ったときは、最初に石臼の掃除をしてからだとうまくいくと思う。
ゴリゴリしすぎたワタシとハハは、たくさんのマメを残した状態で、わずかにできたきなこと、別についていたあんこと抹茶と黒蜜で、おなかいっぱいになるまでわらび餅を堪能したのである。
一人前がこんにゃく一丁くらいの大きさがあった。
肝心のワタシのおぜんざいだが、トレイの上におぜんざいがいっぱいこぼれてて、お箸の袋はおぜんざいでびしょびしょになっていたのである。
もちろんおぜんざいはとっくの昔にさめていたことは言うまでもない。
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