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2016年03月24日16:03

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3-20 丹沢湖畔 境ノ沢など探索

2016年3月20日(日)
春分の日

画像は
丹沢湖畔のミツマタ、境ノ沢 出合、境ノ沢の滝


春の麗らかな陽光に映える黄金色のミツマタを期待して出かけたが、生憎の小雨からの曇天で丹沢湖から眺める景色は灰色に烟る。
ヤブ尾根に取り付くもすぐにダニ軍団に迎撃されて敗走。
丹沢湖の擁壁の階段を上ったり 、沢に入ってみたり、小尾根に取り付いてみたり…。あてもなく彷徨い、最後は雨に降られた徘徊記。


0、西丹沢 丹沢湖へ

前夜から雨レーダーとにらめっこしていたが、北から張り出してきた高気圧の縁にあたる神奈川県では冬と春の空気がぶつかって弱い雨雲が次々と湧いている。

朝になっても状況は変わらず、丹沢にも雨雲がかかっている。
高気圧がさらに東進して来れば天気は次第に回復するだろう、と様子を見て、出発を1時間ほど遅らせた。
どの天気サイトを見ても昼前後は晴れ予報になっている。

新松田駅に着くとパラパラと小雨が降っており、始発から3番目のバスを待つ登山者が行列を作っていた。
バスの中で飛び交う会話を聞いていると、すぐ後ろのベテラン女性たちは大野山に行くとの事。
近場の低山から百名山まで、これまでの山歴の話が溢れんばかりに交わされている。

一方、前のほうに座っている方々はミツマタの群生地で有名な「ミツバ岳」に行くようだ。
松田警察署の西丹沢自然情報によると、「ミツバ岳」は誤りであり、正しくは「大出山」であるという。
ミツマタ畑から転化してミツバ岳と呼ばれて登山地図に載ってしまった事から登山者の間でこの誤称が広まり、山頂付近に手製標識が乱立している事に地権者も不快な思いをしているそうだ。

バスがトンネルを抜けて丹沢湖畔に出ると、全天が灰色の雲に覆われ、山々は白く霞んでいる。

「ミツバ岳」への登山口に近い浅瀬入口バス停では乗客の半数が降りた。
自分はすぐに道路の反対側に渡り、ザックを下ろして準備をする。

予定では地図を見ながら適当な尾根に取り付き、最終的には大ノ山(西丹沢 前衛の有名な大野山ではなく、丹沢湖北岸にある知られざる山)を目指す。
大ノ山は、玄倉バス停の前に立つと湖のすぐ対岸に見える、まさに玄倉商店と相対して真正面にある山だ。

この山の南面にはミツマタの群生地があり、丹沢湖と玄倉の集落、さらに日影山(ブッツェ平)や玄倉ノ野などを望む展望地でもある。


1、ダニから逃れて…

浅瀬入口から県道を北に歩き、三保小学校と中学校、幼稚園や山北町役場の支所などを横目に大仏大橋を渡る。
若者二人が橋から釣竿を垂らしていた。

空を見上げると灰色の雲が垂れ籠めており、当分 晴れ間は望めそうもない。
これでは花の色は燻んでしまい、展望も望めない。
天気の回復を信じていただけに、最初から意気消沈してしまった。

橋を渡って地図を広げると、目の前の斜面から尾根を辿れば遠見山(880)と大ノ山(723)を結ぶ尾根上の戸沢ノ頭に行ける事がわかった。

ヤブに備えて一応着替え、マダニにも効果がある虫除けスプレーをウェアに噴射した。
午前10時過ぎに千代ノ沢の右岸の斜面に入る。
仕事道を跨いで尾根を目指すとすぐにヤブが現れた。背は低く、密度も大した事はない。雨露に濡れた草を掻き分けて尾根に向かい、一息ついてふと手元を見ると白い軍手に蠢くダニを発見。

姿形がはっきりわかるデカいのが1匹と、小さいのも2匹付いていて、軍手の上を這っている。

慌てて払いのけ、即座に撤退を決めた。
今日の装備は完全防備の対ヤブ仕様ではないし、帰りには犬猫がいる実家に寄る予定なのでダニは一匹たりとも連れ帰るわけにはいかない。

車道に戻り、千代ノ沢園地で着替えてさてどうしたものかと途方に暮れる。

連休中日だがこんな天気なので園地にも湖畔にも人影は疎らだ。


2、湖岸を彷徨う

とりあえず、玄倉方面に歩きながら尾根を探したり沢に入ってみようとブラブラと歩き出す。

ミツマタの花が綺麗に咲いているところがあり、道路を外れて見に行く。
この時だけ雲間から薄日が射して、花が黄金色に輝いた。

道路に戻ると、やがて堰堤が見えたので様子を見に寄ってみる。銘板に藤小屋沢とあり、情緒のある沢名だが倒木の墓場のような涸れ沢で、荒れている。
ちらっとシカの白い尻毛が視野をかすめ、やがて警戒の鳴き声が聴こえた。

再び道路に戻るとすぐに小尾根を見つけたので入り込む。尾根に乗るとカモシカの糞塊があった。
ニホンジカの糞が丸型なのに対し、カモシカの糞は楕円形で、一ヶ所にまとめてするのが特徴だ。
尾根筋には枯れ笹があり、ダニに付かれそうなのでまたすぐに道路に戻る。

ヘイロク沢に架かる橋からはフサザクラの蕾を目近に見る事ができた。

時折 車やバイクが通過し、ランニングしている人もいるが、日曜日のわりにはとても静かな湖畔だ。

空は依然として隙間無く雲に覆われ、朝よりは少し明るいが青空は望めそうもない。

さらに進むと、高さ数十メートルのコンクリート擁壁に巡視用の鉄階段を見つけ、上ってみた。
三段構造の擁壁の最上段には行けなかったが、上部にはミツマタの群落と自然林が見える。
なぜ最上段に行く階段が無いのか不思議だ。
ここからは、最近まで県の乳牛育成牧場があったファミリーハイキング向けの大野山(723)が見えた。

また道路に戻る。山歩きでも何でもない、ただの散歩になっている。


3、境ノ沢 遡行

境沢橋を渡ると、ちょうど1年前に大ノ山のミツマタを訪ねてから道迷いして下りてきた尾根の突端がある。
尾根から沢を見下ろした時の崖っぷちの高度感に焦ったあの日が懐かしい。

ふと思い付いて、境ノ沢を探険してみる事にした。

測量の時につけられたのだろうか、トラバース径路にはトラロープがあり、沢に降りるのは易しい。

堰堤を一つ越えて入渓する。
出合付近の両岸は見上げるほどの高さがある急斜面に囲まれ、岩混じりのゴツゴツした崖はなかなかの険相だ。
水流は多くはなく、岩を伝って進めば靴が濡れる事も無い。

すぐにシカの警戒の鳴き声が聴こえ、足音が遠ざかっていった。

この沢の岩は滑りが無く、段差の多い形状の為 ホールドが豊富で取っ付きやすい。
ただ、沢靴ではないので無理はできないし、ヘルメットが無いので崖からの落石に気を付けなければならない。
少しでも危険を感じたら引き返そうと決めて進む。

両岸から岩が張り出した最初の3m滝を左から越え、岩や倒木を手がかりにしながら進むと正面に立派な滝が見える。

近づいて見上げると、崖上の狭い落ち口から吐き出された水流が勢いよく流れ落ちる落差10m余りの末広がりの滝で、真正面に立つとなかなかの迫力だ。

水流を眺めているとまるで滝が呼吸しているかのような緩急が感じられ、滝が産み出す微かな風には、厳かなる癒しとでもいうような雰囲気が漂う。

この滝を巻いて越えられないだろうか、と周囲に視線を向けると右は崖なので不可能だが、左から急斜面を攀じ登って滝の落ち口にトラバースすれば奥に抜けられそうだ。

試しに登ってみると、下からは分からなかったが明瞭な巻き道があり、岩壁にはトラロープまで付いていた。

(後で調べたところ、この沢には滝はこの一つしか無く、沢屋さんの興味をそそるものではない。また、登山道は近くに無いので登山者は滅多に入り込まない。やはり、山仕事の人がロープなどを付けたようだ。)

滝の落ち口の上には3mのナメがあり、丹沢の山と谷を隈無く歩く丹沢マイスターのイガイガさんのブログではこの境ノ沢の滝を目測13mの滝としている。

ここから尚も岩を伝って行くとそれまでの様相とは一転して周囲は明るく開け、暫くは穏やかな流れが続く。
やがて3mの簾状の滝が現れ、ここは滑りがあって越えられないので左から斜面に上がって巻く。

もう少し先まで行ってみたが水量は減り、奥も傾斜はなだらかで滝の気配は無い。
立ち止まって引き返そうか思案していると、遠くで犬の吠え声が聴こえた。
周囲の景色をぐるりと見回してみるが人や動物の気配は無い。
空耳か?と耳を欹てると、再び遠方から確かに犬が吠える声が聴こえる。

猟犬だろうか、しかしもう一般の猟期は終わっている。県から委託を受けたシカ管理捕獲のハンターだろうか。
周辺は広範囲にわたって登山道が無い空白域で、ハイカーが犬を連れて、というのは考えにくい。

あらためて周囲を見回すと、陰鬱な曇天の下に広がる未だ冬枯れの山肌に動く物の影は無く、山はただ押し黙っている。ところどころに見えるミツマタの黄色が唯一の彩飾だ。

なんとなく心細くなり、また、天候や時間も考えてここで引き返す事にした。
往路に危険箇所は無かったが、滑ったりしないように より慎重に戻る。

専門の技術が無くても歩けるような沢にはこれまで何度か入渓したが、単調になってしまう事もある尾根歩きよりは頭も身体も使うし、水流が持つ清冽さや岩の造形は心に大いなる癒しと絶え間無い変化を与えてくれる。

やはり尾根と谷の両方を歩いてこそ 山を重層的に理解し、より深く体感できるという事だろう。

道路に戻り、玄倉方面に向けて歩き出すがまだ歩き足りない。


4、今日沢の堰堤群

今日沢橋に差し掛かり、今日沢のほうを眺めると大ノ山に食い込む沢筋にコンクリート堰堤が幾つも列なっているのが見えた。

右岸に幅広の径路が見て取れたので、今日沢も探ってみる事にする。
昭和50年代、三保ダム 丹沢湖 建設時に治水の為に造られたらしい堰堤は40年近い時を経て少々古びてきている。

堰堤端の整備路を伝って幾つかの堰堤を越えていくと、ミツマタの小群落があった。これらも沢屋やハイカーの目に触れる事は無いだろう。
それにしても、水流はほとんど無いのに左右の支流にも堰堤が聳え立ち、些か大袈裟に感じる。
今や堰堤自身が自らを無用の長物と悟ったかのようなその侘しげな佇まいは、やがていつかは人知れず自然の中に飲み込まれていくのだ、という諦念にも似た沈黙のように思える。

空を仰ぐといつの間にか雲の厚みが増し、雲底は灰色で暗い。
もう一つ堰堤を越えて沢の奥に目を凝らすと、一頭のシカが身を翻して薄暗い林の奥に走り込むのが見えた。

ふと雨の匂いがして立ち止まると、周囲の景色を細かな雨粒が叩き始めた。
沢にはまだ堰堤が続いているが、ここで探索をやめて引き返す事にする。


5、雨の丹沢湖

玄倉に向けて少し歩くと雨が止んだので、今度は小尾根に取り付く。
狭い植林の台地を抜けて岩混じりの斜面を登ると次第に傾斜が急になり、明瞭な細尾根に出た。しかし少し登ったところで再度 雨が降り出し、先程よりも少し強い。

今度こそ素直に帰る事にした。
道路に下りて玄倉バス停に向かう。

何人かバス待ちの客がおり、ベンチに座って着替えなどしていると雨は一時的に本降りとなった。

やがてやってきた臨時増発のバスは満席なので見送り、自分は一人、後続の定時のバスに乗る。
客は数人だけだった。

窓は白く曇り、灰色に霞む景色は暗い。
凡そ山行とは言い難い徘徊だったが、こんな日でもなければ入り込まないようなところを歩けたという意味では有意義で楽しかった。

丹沢だけに絞っても、隈無く歩くのには一生かかるな…
そんな事を考えているうちに、いつしか微睡みの淵に沈んでいく。


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