mixiユーザー(id:25116933)

2016年03月19日14:07

962 view

エッセイ集443:「人工知能の行方を考える」

チェスや将棋で人間を追い越したといわれる人工知能が、まだ10年はかかるであろうと言われた囲碁においても、世界のトップ棋士を破りました。

さらにその人間が生み出した人工知能は、やがて人間の知的作業にとって代わり、さらに自己で再生産を繰り返して人間とその社会を支配し始めるのではないかともいわれています(2045年問題)。

ほぼ同様の懸念は、もう一世紀近くも前にチャップリンがその「Modern Times」で、機械の奴隷となった人間の姿を描いており決して新しいものではありません。ただ実際の所は、南北格差、南々格差、北々格差の存在が前提であり、さらに資源や環境の問題が深刻化しているとは言え、「Modern Times」以降は機械や技術の発展により、総体的には人々の物質的な生活のレベルは向上してきているようです。

[補足文:例えばマルクスやバートランド・ラッセルが言ったように、手作りだと日産1個のものがマスプロダクションだと10個できるとすると、瞬間的には10名中9名が失業します。そうすると作った10個の製品の買い手がいなくなり、デフレになる(マルクス)か、新たな市場を探す(市場拡大・帝国主義)か、新たな産業を興して(経済成長)新たな製品を作り失業者を雇用します。 結局格差が市場成長、経済成長の引き金になり、それが産業革命以来200余年続いて現在に至り、その結果、現在では、世界平均で人間は地球1.2個分の経済規模(=環境負荷や資源・エネルギー使用)の生活を送り、日本人平均では地球2個分の経済規模の生活を送っています。
この調子で今後50年たてば中国・インドも地球2個分、すなわち世界平均では地球2個分以上の経済規模の生活を送ることになるのは10年以上前から公知の事実ですが、未だにこのマルチ商法的な「経済成長」が人間の幸福のためのキャッチフレーズになっています。(補足文おわり)]

以上のように格差をはらみながらも総体的には人々の物質的な生活のレベルは向上してきました。現在世界で一番優位な自由主義・資本主義の世界では、何らかの経済価値を生産した場合にはその経済価値を生産したものがその富の受益者であり、その受益者の豊かな生活は格差に苦しむ低所得者の犠牲の上に成り立っているというわけで、その格差の是正(富の再配分)については、ピケティーの「21世紀の資本論」が最近評判になりました(随分一過性でしたが・・・)。

上記のバートランド・ラッセルの例で、手作りだと日産1個のものがマスプロダクションだと10個できるとすると、もし富が均等に配分されれば、人々の生活は均等に10倍改善されるというわけで、その心象(センチメント)は現在の米国大統領候補の指名選挙の民主党のクリントン議員の対立候補のサンダース議員への支持に表れています。

というわけで、人工知能が究極的に発達しても、その人工知能の成果が(人工知能に対してではなく)人間に対して平等に再分配されれば、人間にとっては不労所得ですが幸福なことかも知れません。ただ労働による価値の生産(勤労)が美徳であるという産業革命以前からの普遍的とも思われる概念が大きく転換することになり、それが理想郷(ユートピア)なのか、人間の生活が意味を持たない反ユートピアの世界なのかは、まだ結論は出せないようにも思います。

ただし、以上に述べたことは、実際の所まだまだ皮相的な考えのようにも思います。

人間の知性は現在「自然の被造物に過ぎない人間が、その創造主の自然を解明できるのか?」というパラドックス(矛盾)の中にいます。このパラドックスはそのパラドックスの中にいる人間が創造した人工知能にも当然あてはまり、人工知能が自己増殖して人間の知能を上回ったとしても然りです。

人間の知性と同様に人工知能も「無矛盾の理論」を追及していくことになると思いますが、「論理が無矛盾である限り、その理論は不完全である」というゲーデルの証明した「不完全性定理(注記*)」までも果たして人工知能は乗り越えていくものか、それとも人工知能自身が科学や数学の普遍性の限界に気が付き自らの判断でその挑戦を「投了」してしまうのか、はたまたその挑戦に「意味を感じなくなり飽きて」しまうのか、知的興味が尽きない時代に入ってきたようです。
(本文終わり)

*****************************
注記*:不完全性定理: 簡易化した例は下記です。
(1)「私は嘘つきだ」という人が「正直者なら嘘つき」で「嘘つきなら正直者」になって矛盾が生じます。
(2) 「4以上の偶数は必ず(2以上の)2つの素数の和になる(例:20 = 3 + 17)」という極めて簡単な事実がスーパーコンピューターでも証明できません。

0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する