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2015年12月26日21:19

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Xマスは「あなたの日」   抜粋記事

香山リカのココロの万華鏡 より抜粋
http://mainichi.jp/articles/20151215/ddl/k13/070/070000c

クリスマスが近づいてきた。診察室では「楽しみです」と言う人より「孤独だと思い知らされる」「街がにぎやかだとよけいに自分がみじめ」と顔を暗くする人のほうが多い。

 どんな言葉をかけてあげればよいのか、と思っているところに、大門義和氏という牧師から小冊子が送られてきた。大門牧師が手づくりで長年、発行しているものだ。

 冒頭に「すべての人が貴い人であるとの宣言がクリスマス」という言葉が記されていた。「クリスマスはイエス・キリストと、あとはハッピーな恋人や家族のものじゃないの?」と思いながら読むと、こんなことが書かれていた。聖書にはイエスは「例外なくすべての人を照らす光」とあり、その光は人を区別したり分類したりはしない。だから、イエスが生まれたクリスマスは、分け隔てなくすべての人にとっての喜びであり、どんな人をも尊び祝う日なのだ……。

 私のような医者は、診察室に来た人の問診をして「何の病気か」「重症度はどれくらいか」とその人を精神医学の体系にあてはめていく。そして、診察室を出る頃にはその人をすっかり「患者さん」として扱い、「無理しないでくださいね。ではまた来週」と送り出す。そうやって区別、分類するのが私の仕事と言ってもよい。

 しかし、その医者としての「区別や分類」は、いつの間にか、その人が幸福なのか、孤独なのか、かわいそうなのか、といった人間的な部分にまで及んでいたかもしれない。そして私だけではなくて、患者さん側も、自分で自分を「私には価値がない」「負け組です」などと分類しているのではないか。

 先の小冊子で私は、キリスト教では、クリスマスは孤独な人がより孤独を感じる行事ではなく、孤独だと思っている人も「あなたが生きているのはすばらしいことです」とたたえられるための日なのだ、と知った。なるほど、と私は膝を打った。これから12月の診察室では、「クリスマスは誰も区別されない日なんですって」と話すことにしよう。

 いや、クリスマスだけではない。お正月、各地で行われる冬のイベント、いろいろな祝日。「まわりが楽しそうだとよけいにみじめになる」と暗い顔をする人には、そのたびに「これはあなたのための日ですよ」と声をかけてみることにしたい。まずはこのクリスマスシーズンをひとりですごしている人も、「私も貴い人間なんだよね」と笑顔になってみてはどうだろう。(精神科医)
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