mixiユーザー(id:20270607)

2015年12月09日03:07

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【介護】 奇跡の積み重ね。

9年くらい前の話だ。

当時ワタシはウツ病になった職場を退職して、半年ほど自宅でゴロゴロしていた。

ハハが階下で鳴らす包丁の音や、テレビやラジオでアホナことを言ってCMをしている芸人さんの声をきいてすら「あぁ、この人たちはこれでお金を稼いでるんだなぁ・・・それに比べてワタシは・・」とか、今から思えばおもしろいことになんでも結びつけて「どよよん」としていたのである。

でも、そろそろ動き出さないといけないと思い、ちょっと無理矢理気味ではあったが、仕事先をきめ、「じゃ、来週の月曜から来てください」というところまで話が進んでいた。

その直前の土曜日。
ワタシは珍しく見たい映画があったので、

  ワタシ「オカーサン、映画みにいかへん?」
  ハハ 「行こうか?」
  ワタシ「ウン。ただ、映画館がなー、
       大阪市内の古い映画館と、I市の新しい映画館でしかしてナインよねー。」
  ワタシ「どっちにしようかな。I市の映画館の方がキレイだから、I市にしようか。晩御飯食べる
       ところもあるし。」
  
ということになって、I市の映画館に行った。

見たかった映画のはずなのに、割と始まってすぐにワタシは眠りに落ちてしまった。

しばらくして、隣に座っていたハハが立ち上がる気配がした。

   ワタシ「どうしたん?」
   ハハ 「トイレ行ってくる」

しばらくしても、ハハは戻ってこない。
気にしながら、もう少しまっても、戻ってこない。

ワタシは心配になって、映画館から出てみた。

ハハが映画館の廊下で倒れていて、映画館の人が介抱してくれていた。

    ワタシ「どうしたん?!」
    ハハ 「背中が痛いねん・・・背中が・・・」

当時、ハハは「背中が痛い」とよく口にしていた。
だから、最初は「それか?」と思った。
でも、しばらくの間「痛い」というところをさすったりしている間に、素肌に直接触ることがあった。

脂汗が出ている。
これは、いつもとは、違う。

映画館の人に、救急車を呼んでもらって、ワタシとハハは救急車に乗り込んだ。

映画館の人が「今日は映画をお楽しみいただけなかったでしょうから」と、映画のチケットを2枚くれたのがうれしかった。

救急車の中では、ワタシはハハの言うがままに動くしかなかった。
とにかく、ハハが「こうしてほしい」というとおりにするしかなかったのだ。

その間に、救急車は2〜3箇所、救急病院に連絡をしては断られていた。
次ぎに連絡をいれた病院は受け入れ可能だという。
ワタシには医学的知識は何もない。
「そこでお願いします」というしかなかった。

救急車が病院について、ハハと一緒に救急車から降りたものの、そこは救急治療室で、ワタシのいるところではなかった。

救急治療室の外にでて、何も考えられない頭をなだめながら、考えられることから考えた。

なんてことだ。
ワタシはその日に限って自分の携帯電話を忘れてきたのだった
土曜日の午後の病院には患者さんは誰もいなかった。

「ところでココはドコだ?」

ロビーにある公衆電話の上に、病院の名前と住所が書いてあった。
聞いたこともない病院で、聞いたこともない住所である。

それでも、とりあえず連絡をしないといけないところに連絡をして、他にすることもないので、椅子に座っていた。

救急治療室から若い医師が出てきた。
「血管が心臓の近くのどこかで裂けています。幸いここの院長先生はそういう症例をいくつもこなしてきてるので、大丈夫ですよ。僕も去年までここで働いてたんです。」といった。

そして幸運なことに、院長先生は土曜の午前中しか診察しないのに、その日はまだ病院にいたのだ。

3時くらいに病院に入って、救急室から3時半くらいにでて(その速さは救急医の人が、去年までそこでそういう症例を見ていたからだ)、院長先生から簡単な説明があって、その後は、怒涛のように書類にサインしまくった。
後で落ち着いて読むと、結構コワイことも書いてあったのだが、そのときのワタシに拒否権はない。

「血管がどこかでさけて血液がどこかに流れ出ているのだな」という、非常にさっくりとした理解度だった。

「今からすぐ手術にはいるけど、何時間かかるかわからないから、10時ごろもう一回きてください」といわれたものの・・・帰り道がわからない。

病院の外にでても、周囲には田んぼしかない。タクシーも走ってない。
病院の中に戻って、総合案内にいるオネーサンに「すみません。さっきハハが救急で運ばれてきたんですが、ここはどこで、最寄の駅まで歩いていけるんでしょうか? 歩いていけるんなら道順を教えてもらえますか?」と尋ねた。

幸い徒歩15分くらいのところに、いつも行く宝塚の途中の駅があったので、そこから一旦家に戻った。

家に帰ってから、クーちゃんに「えらいこっちゃー、どうしよう」と言ってたのだが、勿論返事があるわけもなく、夜病院にもって行くものを用意していると、電話がかかってきた。

でると、伯母からであった。
   伯母 「アンタ、どこにいてるのん!」
   ワタシ「10時にきなさいっていわれたから、家で入院の準備してる・・」
   伯母 「ナニ呑気なこと言うてるのん! もう手術終わってるからさっさとおいで!」

エー? まだ8時である。話が違うじゃないか。

  * * * * *

再度病院に行って、院長先生に話を聞くと「通常は胸をひらいてから、血管のドコに裂け目があるのかさがさなあかんけど、今回は開いたところにあったから早かってん」

あとで人工血管と交換したハハの血管の切れ目をみて内科医の従妹がボソッと「オバチャン、これはアカンわ・・・」 と言っていた。
2センチくらい裂けてたかなぁ。

その後も、麻酔を抜こうとすると、2日続けて痙攣を起こして中止になってみたり、後日聞くと、先生も「死ななくても植物人間やな」と思っていたらしい。

裂けた血管から流れた血液が下向いて流れていったのもラッキー。頭にむけていってたら、絶対障害が残ってただろう、と。

ハハは「正月は家で!」と言って、一ヶ月も入院せずに帰ってきて、なんの後遺症もなかった。

このときのハハの入院騒ぎは、本当に「運がよかった」としかいいようがないのだ。
どこかで、何か一つ違ってたら、今ハハはいない。


だから、

生きているということは

それだけで

奇跡の積み重ねなんだなぁ、と

そんな奇跡の積み重ねを

粗末に扱ったら、アカン!!

のだ。

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