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2015年09月24日11:20

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言志四録「人はまず長所を見るべし」


人を見るときには、その人の優れたところを見るべきで、短所を見てはいけない。短所を見れば彼に優れているため、傲(おご)りの心が生じ、自分のためにならない。ところが彼の長所を見れば、彼が自分に勝っていることが分かり、啓発され、発奮するから、自分にも利益になる。

われはまさに人の長処を視るべし。人の短処を視ることなかれ。短処を視れば、則ちわれ彼に勝り、われにおいて益なし。長処を視れば、則ち彼われに勝り、われにおいて益あり。 (言志晩録70条)

<解説1>
本文は自分が他人をみて修養に資せんとするものであるが、他人が自分をどうみているかを知って修養に資せんとするものがある。
佐久間象山曰く、
「人、己を褒むるとも、己に何を加えん。もし誉(ほまれ)によって、自ら怠らば、即ちかえって損す。人、己を毀(そし)るとも、己に何かを損せん。若し毀りによって、自ら強うせば、即ちかえって益す」。

次は黒住宗忠の歌である。
立ち向う 人の心は 鏡なり
おのが姿を 移してやみん

・・・・・以上、川上正光「言志四録(3)」より。

<解説2>
「人の振り見て、わが振り直せ」とはいうが、意外に人は自分の長所や短所には気がつかない。相手の長所、短所がわかるというのは自分の長所、短所がわかるからであって、問題はまずそこからである。

・・・・・以上、岬龍一郎「現代語抄訳・言志四録」より。

<解説1>
「経営の神様と言われた松下幸之助さんほど、人を見るとき、その長所に心を留めた人はなかった」と言うのは、松下幸之助の女房役を演じてきた高橋荒太郎・松下電器特別顧問だ。高橋が感心するほどに、松下語録にも「人の長所を見ろ」という個所が多い。例えば次の言葉。
「優雅な千代田城の石垣を見なはれ。四角もあれば三角もあり、丸いのもおますやろう。おまけに隙間や空間まであって、あの美しい堅固な石垣ができているんでっしゃろ。宴会のときには水際だって役に立つ人間が、経理をやらせると間違えてばかりいる。しかし、会社にはそういう人も必要なんや。つまり、それぞれの持ち味を生かしてゆくのが経営であり、経営とは同時に教育なんや」

高橋は、上杉鷹山の師であり、再興された米澤藩・興譲館で講義を行った細井平洲の言葉を引いて、それが天地の理にかなったことであることを裏づけた。
(百姓の葉大根を作り候は、一本一株も大切にいたし、一つの畑の中には上出来もあれば、ヘボもあり、大小不揃いもあるけれども、それぞれ大事に育て、よきも悪きも食用に用立てるべきものである)

松下には一人ひとりの与えられた個性を引き出そうという訓育の姿勢が明らかだったから、多くの人がその下で働きたいと思った。

アメリカの鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの墓碑には。
「自分よりすぐれた者を自分のまわりに集める術を心得し者、ここに眠る」
と書いてあるという。優れた人は、人を生かし使うことにおいて優れているのである。

・・・・・以上、神渡良平「佐藤一斉・言志四録を読む」より。




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