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2015年09月09日20:21

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『みんな!エスパーだよ!』

「青春の夢に忠実であれ」
(詩人・劇作家 シラー)

このドラマは若きエスパーたちが、正義と性への憧れの狭間で苦悩し、成長する物語である。



 上記はこのドラマの毎回の放送の冒頭に映し出される文言です。全12話のこのドラマ、東テレでは10話まで再放送していて、この時点で性についてはひたすらドタバタしていますが、正義についてはあまり頓着している様子はありません。ドラマの成分を永井豪と平井和正に分けるなら、永井が10で平井は0です。だったら、最初から平井和正を持ち出す必要ないじゃん。

 一応、ギャラクシー賞も受賞しているらしいのですけど、一般的にはパンチラ・ドラマということになっているのではないでしょうか。たしかにパンツは供給が過剰すぎて、ありがたみもなくなるくらい見ることができます。中学生のころなら、うれしかったのかなあ。今の中学生は喜んでいるのでしょうか。別にそんなこともないと思うのですが。

 個人的には、超能力というものを手に入れても、割と他愛のない日常が続いていくだけだというあたりをおもしろく見ています。筒井康隆の『七瀬ふたたび』に、力を自分のしょうもない欲望のためにしか使わない超能力者が出てきて、そいつはせっかく特別な力を手にしているのに使命感に目覚めることもなくみたいことを書かれているのですけど、そこを読んで以来、今に至るまでずっと、超能力を手にすることと使命感に目覚めることになんらかのつながりがあるとは思えないでいます。関係ないですよね、別に。

 他に抜きんでた能力を手にした以上、なにかしら人の役に立つべきだという考えは、まったくの正論かもしれませんが、なんだか思い上がりにすぎない気もするし、オウム的なものにからめとられそうな危なっかしさも感じます。

 高校生である主人公はたまに「こんなことで世界を救えるのか」とか悩んでいるのですけど、いかんせん上っ面だけの地に足が着いていない様子で、憧れのヒロインのことを考えてヘラヘラしたり悶々としている時の方が、ずっと身が入っているように見えます。

 この主人公を演じているのが、染谷将太です。端正な顔立ちなのに、飄々と変なことをやってのけている感じが『トリック』のころの仲間由紀恵に似ていると思いましたが、仲間由紀恵とちがって演技はふつうにうまいです。仲間由紀恵の演技力は置き去りにして、どんどん女優としてのステージが上がっていく感じは見物でしたけれど。

 主人公の用いる能力はテレパシー、他人の考えていることがわかるのですが、憧れのヒロインの心を読んだら、(こいつ絶対、私でオナニーしてやがんな)と思われていて落ちこんだりしています。基本的に知らないでいれば気にせずにすんだことを、能力のせいで知ってしまって嫌な気持ちになるパターンばかりです。
 筒井真理子演じる母親が朝食の席で(お父さん、昨晩は激しかったわ)とじっとり思い返しているのを読みとってしまい、ここでも落ちこむのですが、視聴者が(そういえば、父親って誰だったっけ)と思うタイミングで、同じ食卓についているイジリー岡田へカメラのアングルが切り換わり、丁寧なことに彼はいつものように舌をペロペロさせているのでした。
 たしかにやりすぎなシーンです。しかし、両親の性行為を朝っぱらから突きつけられる思春期の主人公の嫌悪感を視聴者にも追体験させるためなら、せめて舌をペロペロさせているイジリー岡田をアップで映すことも辞さないというのは、それなりに合理的な判断のような気もします。
 このドラマの過剰さは、別に過剰さのみで人目を引こうとしてそうなったわけではなく、それぞれなにかしら理由はあるし、さらにやりすぎを怖れない姿勢がもたらしたものだと思います。だから、パンツがたくさん見えることにも、なにか意味はあるのかもしれません。見当はつきませんが。

 初めて見る俳優さんでしたけど、名前は見憶えがあるなと思ったら、11歳年上の菊地凛子と結婚した人でした。なんだか菊地凛子の凄みばかり際立つエピソードですな。菊地凛子って、『ノルウェイの森』だとあんなだったのに、こんなになっちゃってますしねえ。それを言えば、土屋アンナだって、『イタリア語会話』だとああだったのに、こうなっちゃってますけど。

 エスパーたちのたまり場となる喫茶店『シーホース』の店主はマキタスポーツが演じています。自身は念動力の使い手ですが、スケベなことを思い浮かべながらでないと能力を発揮できないので、あまり役に立ちません。筋金入りのオナニストで自宅はTENGAとダッチワイフで大変なことになっており、主人公に「念力でTENGAを動かしながらすると本当に気持ちいいぞ。もう女はいらんだに」と言ったりします。
 また、かつて同級生だった自分の母親をいまだにオカズにしていることを主人公が読みとってしまい、さらに落ちこませたりもしています。
 主人公の幼なじみがラブホテルに連れこまれ、助けるため隣の部屋に入ったときは、男同士だと入室できないからと綾波レイのコスプレをしてきました。綾波レイのコスプレはそれこそピンからキリまであるでしょうが、その中でもほぼ最底辺に位置するであろう気持ち悪さでした。しかも、部屋の中で幼なじみの危機をそっちのけで主人公とコトに及ぶのもやぶさかでないみたいな態度をみせてきて、本当に最高に最悪でした。

 その幼なじみを演じたのは夏帆です。能力は主人公と同じテレパシー。起用した俳優の演技の評価を爆上げさせてきた園子温監督だけあって、このドラマのキャストはみんな素晴らしいのですが、特に彼女はこの中でも抜きんでているとに思います。
 地方の垢抜けないヤンキー女子高生という役柄を体当たりで演じ、のめりこみすぎていろいろ捨ててしまい、もう帰ってこれなくなった感じすらしていました。経歴からするといわゆるジュニア・モデル出身だと思うのですが、このドラマでの彼女は鼻が大きいし、プロポーションもスリムじゃないし、足も細くないし、そういう出自の面影はほとんどありません。そこをカバーする手立てはメイクなり撮り方などでいくらでもあると思うのですが、そうした手段を封じて退路を断っている感じです。個人的にはパンツがどうとかより、その佇まいの方によほどドキドキします。

 思春期のありがちな自意識の持て余しでグレてしまった彼女は、他人の心が読めるようになったことで、(あ、ヤリマン女子高生だ。俺もやらせてくれないかな)といった見ず知らずの男たちの不躾な感情をぶつけられることに傷つき苦しみ、ときに激昂し反抗します。だったら、スカートの丈を長くすればいいのにというのは、年ごろの女の子にとって考慮の外なのでしょう。
 そうでありながら、強引に関係を求めてきた相手が謝罪するとこれを許し、もう一度話をしようと出かけていきます。そして、ラブホテルの前で腹痛のふりをするという古典的というよりマンガ的な手口にまんまとひっかかって連れこまれ、さらに、
「腹を撫でてくれ……もっと下……ちがう、もっともっと下だ……」
 という言葉をまともに受けとって手コキをさせられそうになります。ひどく短気で乱暴な反面、初心で純真であくまで身内は信用とするところ、そして、そこに乗じられてしまうところまで、なかなか秀逸なヒロイン造形になっているし、魅力的に演じられていたと思います。

 でも、この後で彼女は『海街Diary』に出演しています。こちらは未見なのですが、別に三段オチのオチ担当とかじゃなくて、ふつうに美人姉妹の三女なのだと思います。パンツ見せながら飛び蹴りとかしてないでしょう、カンヌに出した映画だし。
 大島蓉子路線まっしぐらかなと思っていたのですけど、ちゃんと軌道修正して元のところに復帰したみたいです。『海街Diary』の後にまた『みんなエスパーだよ』に出てパンチラしまくりなら圧倒的にかっこいいと思うのですけど、この役は池田エライザが演じていて、夏帆は出演していません。ま、いろいろ事情はあるでしょうが。

 深水元基演じるテレポーテーションの使い手は登校中、便意に襲われたことにより、その能力を発現させます。このテレポーテーション、服は一緒に移動できず、飛び先で全裸になってしまうので意味がないかと思いきや、彼はここで露出に目覚め、全校の女生徒に自分の股間を見せつけるべく「人類股間計画」を発動し、最終的には、世界中の女性に股間を見せたいとの大望を抱くに至りますが、第10話の時点では自分の足で一歩一歩大地を踏みしめて歩くことの大切さに目覚めてエスパーをやめようとしながらも、道中で見かけたエロ本に興奮して東京へ飛んで行ってしまっています。裸で。
 能力に目覚めた当初、彼は女子更衣室にテレポーテーションで侵入するのですが、全裸になってしまうぐらいなので、なにも持ち出すことはできません。
「おかしい。うんことは一緒にテレポートできるだに」
 たしかに初めて便意に襲われて自宅のトイレへテレポートした時には、その後で用を足しています。
「!」
 ひらめいた彼は、手にしたヒロインの携帯電話を一心不乱に肛門へねじこもうとするのでした。そこへ主人公たちが踏みこんできて、さらに一騒動持ち上がります。

 あと、超能力の研究者で教授を安田顕が演じているのですが、しかし、彼が深刻そうな顔しながらやっていることといえば、ひたすら女性秘書の胸を揉むだけです。この女性秘書は予知能力の持ち主で、見たことがなかった女優さんなので調べてみたら、園子温監督と入籍した人でした。つまり、監督は安田顕に自分の奥さんの胸を揉ませてそれを撮っていたわけです。やはり、変わった人だと思います。

 しかし、このドラマ、独特の異様な雰囲気で疾走したのは第3話までで、中盤は割とふつうに失速してしまいます。中盤はいわゆるイイ話系のエピソードが続きますが、それ自体はセオリーともいえるので、そこが原因とは思いません。脚本は数人で担当しているのですが、この時期を特定の誰かが担当しているわけでもないので、そういう理由でもないようです。ここらへんの理由は不明なままです。

 第9話と第10話を見るかぎりでは、また独特の路線に進みそうな気配も感じられます。第10話のラストはこのドラマのヒロインにして教授の娘でエスパーを嫌っている真野恵里菜が元カレの海外留学を知り、帰りたがっていた東京とのつながりがいよいよ断たれたことに絶望し、泣きながら「仰げば尊し」を歌いつつ豊橋の商店街を歩くシーンです。「仰げば尊し」は西暦2015年、平成27年の女子高生がテンパって歌い出す歌ではないと思います。私の世代でもちょっと考えられません。なんとなく沖縄戦のひめゆり部隊とか思い浮かべてしまいます。異様な感触の情景になっています。
 本当に最後に最後のところでは、「私」と大書した旗を持って商店街を走っています。もうただごとではありませんが、どういうことかはわかりません。
 このドラマの女子高生たちは、幼なじみといいヒロインといい、自意識を持て余してしまっているというか、こじらせているみたいです。一方、男性陣は老いも若きも基本的にセックスのことしか考えていません。
 関係ないですけど、ドラマの舞台となっている豊橋の商店街は、たまにゲームをしに行く追浜の商店街と雰囲気が似ていて、映るとなんだか懐かしい気分になります。

 目下、懸案の事項は上映中の映画を見に行くかということで、せっかく駅前にシネコンが3つもあるところに越してきて一年になるのに、まだ一度も行っていないというのは、いかにも勿体なく、そして、これぐらいのきっかけでもなければ行かずじまいだろうな気もかなりしています。
 行くとしたら、劇場で映画を見るのは2010年の『十三人の刺客』以来です。5年ぶりに劇場で見るのがパンチラ映画かあ。いや、逆にありかも。って、逆ってなんだよ。
 それと、この映画はPG12なのでボクには刺激が強すぎるかも。

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