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2015年07月08日07:51

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加筆訂正

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 大江の『新しい人よ眼ざめよ』文芸文庫を読んでいる。この連作集からは四篇が岩波文庫の『自選短篇』に選ばれており、著者がおもきを置いていることがうかがわれる。なかの一編「落ちる、落ちる、叫びながら……」を読みおわり、思いついて『自選短篇』との異同を確かめることに。
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 図書館の本に書込みはできませんから文芸文庫の方を鉛筆で直してゆきました。あとで数えてみますと、23頁の作品に37か所の修正が加えられ、段落を短くするために8か所改行されていました。おおむね文の末尾を「なのであった」から「だった」と簡潔にしたところなどが多く、「セイハク」を「精薄」に変えるなどの表記の変更もあります。
 この「落ちる、落ちる、叫びながら……」(『新しい人よ眼ざめよ』)は、文芸文庫の著書目録によると、
 1983年1月号『文藝春秋』掲載
 1986年6月単行本、講談社
 1986年  講談社文庫
 1996年〜1997年『大江健三郎小説全10巻』新潮社
 2007年2月講談社文芸文庫
 2014年8月岩波文庫(『自筆短篇』)
 の順に収められてきたが、文芸文庫の底本は86年の講談社文庫で、巻末に「著者による加筆訂正をおこなった。」とあるし、岩波文庫(『自選短篇』)は『大江健三郎小説』を底本として訂正がされているわけで、もしかすると単行本化から岩波文庫収録まで、5回にわたって行われたのかもしれません。後の研究者泣かせにならなければいいのですが。

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