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2015年05月06日07:01

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『エリオット』深瀬基寛

≪本にはダストカヴァーも掛っていたが、古義人はそれを外して、当時めずらしかった布の表紙をしげしげと見た。淡い緑色だったものが色褪せて、上のへりから茶色のしみが降りて来ている…… この本を古義人は大学生協の書店で十九歳の冬に買った。古義人は、本を両掌で支えて、「ゲロンチョン」の出だしのページを開いた――そこには開きぐせがついているまま、それ自体で自然に現われてくるようだった――。深瀬基寛の訳詩のスタイルにすぐさま誘い込まれ、五十年前の自分の熱中ぶりも、そこに透けて見えるように感じた。≫(『さようなら、私の本よ!』大江健三郎P49)
≪原詩に翻訳と解説を合わせた深瀬基寛の本≫ともあるのでこちらのことだろう。
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 『エリオット』深瀬基寛(昭和三十二年四月十五日再版筑摩書房)、初版が昭和二十九年十月二十五日、古義人=大江健三郎とすれば、大江は1935年生れで昭和二十九年には十九歳。ただし、「淡い緑色」の「布の表紙」ではないし、カバーではなく函付です。同じ「鑑賞世界名詩選」の一冊として昭和二十九年に刊行された『リルケ』高安國世のカバー付が日本の古本屋に出ているから、再版時に外装も含めて変更されたのでしょうか。
 残念ながら『書影の森』に収録されていませんが、装幀は吉岡実ではなかろうかと勝手に想像しています。
 ところで、P50に「ゲロンチョン」の冒頭が引用されています。
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 変ですねえ。6行目、「ぶとにまれて戦ひしことさらにない。」? 原本には「ぶとに噛まれて……」とありますから誤植でしょう。大切な引用詩がこれでは困ります。

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