昨日、ろまさんと恒例の日彫展にいってきた。
場所は上野の東京都美術館。
そこにマイミクの彫刻作家、無花果さんが作品を毎年出展する。
で、ろまさんと二人でそれを鑑賞しにいくのを、4月の終わりの週末の恒例行事にしてるんでね。
まず、上野駅での待ち合わせまでちょっと間があったので、構内の本屋さんを覗いたら。
新刊本のコーナーで一冊の本が目に飛び込んできた。
「今日も一日きみを見てた」 角田光代
表紙には気持ちよさそうに眠りこける猫の顔の写真。
そして、帯にはかの大島弓子さんの推薦文。
「はじめて猫と暮らすおどろきとよろこびがひしひしと伝わってくる」
これはもうねえ。 あっちゅうまに衝動買いしました。
で、ドトールでいそいそと読み始めたら。 ろまさんから着いたというメールが入った。
ちぇっ、もうちょっと読みたかったなあなんて思いつつ、改札口へ。
で、二人で上野恩賜公園に向かってぶらぶら歩いた。
僕らがこの彫刻の展覧会にいくときは決まってよいお天気だ。
昨日も上着を羽織ってると汗ばむくらいのピーカンだった。
明るい陽光の下、老若男女さまざまな人たちが笑いさざめきながら歩いてる。
よい感じだったよ。
ということで、あっというまに目指す東京都美術館に着いた。
日彫展の会場はいつものABCホール。
僕らにとっては勝手知ったるお馴染みの場所だ。
で、僕らは受付で案内図をもらいはしたけど、それには目を通さずに会場に入った。
普通は目指す作品がどこに展示されているのかをあらかじめ確認しとくのは必須の行為だ。
なにしろ、会場は3つに分かれて、こんな感じで同じような作品がずらっと並んでるので。
普通の作品だったら、当てずっぽうで探すのは大変な労力がいる。
いってみればあれだ、分かる人は分かる「続・夕陽のガンマン」だ。
あれのラストの三つ巴の決闘の前に、広大な墓地でお宝が隠してある墓を名前だけで探して走り回るハメになったイーライ・ウォラックみたいになっちまう。
でも、僕らは無花果作品をすぐに見つけられる自信があった。
とにかくねえ、無花果さんの作品はロダンやミケランジェロ風なオーソドックスな作品群の中に一人だけジャコメッティが紛れ込んだような異彩を毎年放ってるんだよ。
ろま 「そうはいっても、無花果さんは今年から作風を変えたかもしれんぞ」
僕 「例えばあんな風に?」
ろま 「やあ、そうそう。あのゴブリンハンマーは無花果的だ」
僕 「ゴブリンハンマーてなに?」
ろま 「俺の造語だ。たった今思いついた」
もちろん、これは別の人の作品だった。
無花果さんの作品はその隣の部屋に展示されていた。
僕らはその部屋に入るなり同時に言った。
「あった!無花果さんだ」
で、部屋の奥の壁際に置かれたその作品の前に立った。
タイトルはMotion。
僕 「やっぱり女子だ。無花果さんはほんとに女体好きだなあ」
ろま 「好き者だけあって、女体の柔らかい線が自然に現されてる」
僕 「よい曲線だよなあ。このちっちゃい突起が胸か。ちょっち貧乳かも」
ろま 「少女ということだろう」
僕 「この子、ポニテだ」
というようなおバカな会話のあと、恒例の解題の意見交換をした。
僕 「うん! 俺はこれを人魚とみた」
ろま 「どうかな、俺にはスケボーのように見える」
僕 「マーメイドが波間からジャンプした躍動感ときらきら感がある」
ろま 「躍動感は確かだが、この女子に交差してる曲線はスキー場のスロープだ」
僕 「うむ、そう言われればそうかも。でも、両手で持ったボールはスノボー的じゃない」
ろま 「バレーボールかも。トスしてるところ」
僕 「新体操の感じもある」
僕 「それにしても、今回も影がよい感じになってるんだけど、隣の像の影が邪魔だ」
無花果作品は鋼線だけで構成されてるので、壁にさす影がどこからでも見える。
で、その影が実によい感じのもう一つの作品になってるのが大きな特徴なんだ。
ラスコーの壁画みたいな線だけのアートっていうイメージでね。
それが今回はねえ。 お隣の像の分厚くて真っ黒な影が無花果作品の影に一部かぶっちゃってたんだよ。 まあ、僕が文句をいう筋合いのものじゃないけど。
僕 「無花果作品は脚、ふくらはぎが魅力のポイントの一つなんんだけど、今回はその部位がないので人魚とみたんだけどな」
ろま 「あの細い金網が鱗か」
僕 「そういわれると、蛇の可能性もある」
ろま 「メデューサかい」
僕 「いや、あれは髪の毛が蛇だ。こっちは下半身が蛇だから道成寺だ」
ろま 「女の情念が坊さんを焼き殺すあれねえ。この作品の感じからは程遠い」
僕 「まあ、そうだな。無花果的でもMotion的でもない」
ろま 「結局、見る人それぞれが想像をかきたてられるということなんだろう、月並みだけど」
僕 「月並みではあるが、禅的でもある」
ろま 「うむ、禅だ」
そういうことで、鑑賞会をお開きにした。
で、恒例でアメ横の居酒屋「大統領」にいった。
相変わらずの人気店で、真昼間だというのに店内は老若男女の酔っぱらいで満員だった。
で、待つこと10数分。 案内されたのは路上に張り出した簡易席だった。
なかなかよかったばい。 僕らの向かいの席の酔っ払った若いのが真後ろに倒れちゃって、退場を命じられたりね。 その辺を仕切ってくれたのは、このヒゲのおじさんだった。
串焼き盛合わせ(タレ)、ポテサラ、馬刺し、ガツ刺し、モツ煮込み、合鴨の燻製に谷中ネギetc。
美味かった。
で、ポン酒を常温で何回もおかわりした。
これでお一人様3千円台だからね。 上野にお越しの折はお薦めします。
どんな会話を交わしたのか、コップ酒をぐびぐび飲ったのであんましよく覚えてないけど。
例えばこういうの。 全般に罪のない会話ばっかしでした。
僕 「カミサンが学生時代に美術展のバイトをしたことがあるといってた」
ろま 「どういうの?」
僕 「今回はいなかったけど、コーナー毎にひっそり座ってる女子がよくいるだろ。あれだ」
ろま 「楽そうだな」
僕 「逆だ。なにしろ、動いても喋ってもいけない。えっらいしんどかったそうだ」
ろま 「ふ〜ん、ああいう女子は皆バイトの子なのか」
僕 「動いて喋ってる人は学芸員とかなんだろうけどな」
で、酔い醒ましに散歩することにした。
御徒町方面に向かってぶらついた。
で、いい加減に道を曲がったりしてるうちに湯島に出た。
僕 「トイレにいきたくなった」
ろま 「じゃあ、最寄りのキャンパスでもいくか」
ということで、東大の本郷キャンパスに入った。
広々して緑がいっぱいで瀟洒な学舎がそこかしこにあって。 絶好の散策コースだったよ。
先入観があるのかもしれないけど、道行く若者はなんか理知的な感じがする者が多い。
キンパやトサカそのほかイっちゃってる系、セクシー系やバイオレンス系は見かけない。
犬の散歩をさせてるご近所の人なんかもいたりしてね。
僕 「それにしても、公衆トイレらしきものが見当たらない。母校なんだからわかるだろ?」
ろま 「大分変わってるのでわからん。そこの木陰で立ちションしたらどうだ」
僕 「いくらなんでもできない。あの森っぽいのはなんだ?」
ろま 「三四郎池だ。あそこで立ちションしたら?」
僕 「だからあ、そんなことして逮捕されたらどうするんだよ」
この本郷キャンパスを管轄する警察署の署長さんは、歴代ここの出身のキャリアの人が就任するそうだ。 なんかあったときにOBの方が話を通しやすいということで。
で、そうこうしてるうちにコンビニを発見。
そこの女子店員さんにトイレのことを尋ねたら、隣の学舎の扉をカードで開けてくれた。
「トイレはこの先を曲がったところです。出るときはこのボタンを押せば自動扉が開きます」
ということで、非常に助かった。 これはお返しに買い物をせねば。
ということで、二人ともチューハイのロング缶とスナックを買った。
で、三四郎池に繰り出した。
ほとりにちょうどよい大きな石があったので、そこに腰掛けて缶チューハイを飲んだ。
僕 「これが名高い三四郎池か。初めて来た」
ろま 「実は俺も初めてだ」
僕 「初めてって、おい」
ろま 「正確には合格発表を見たあと散歩したことはあった。あとは無縁だった」
僕 「そんなもんかねえ」
ろま 「そんなもんだ。メンツが集まったら、速攻で雀荘に繰り出す毎日だったからね」
で、二人してこの池にまつわる思い出の作品、ろまさんは漱石の「三四郎」、僕は漫画の「コッペリオン」のことを話した。
そうこうするうちに、池の鯉が気になりだした。
で、どちらからともなく、手元のスナックを放ってやった。 そうすると、あっというまにパクつく。
カラムーチョも問題なくパクつく。
そうこうするうちに、鴨が2羽やってきた。で、鯉より先にスナックをついばむ。
あまつさえ亀まで現れた。で、鴨も鯉も押しのけてスナックを飲み込んだ。
この亀です。 暗くてよく見えないと思うけど。
ということで、暗くなったのでまたぶらぶら歩いて、九段下まで出て。
かつて二人で馴染みにしてた安食堂にいこうとしたんだけど、あいにく閉店だったので。
飯田橋まで足を伸ばして、これまた馴染みにしてた沖縄居酒屋の「島」にいって。
久米仙をボトルで入れて、ゴーヤチャンプルやらなんやらを肴に飲んだ。
ということで、昼の1時頃から始めて夜の10時過ぎまで、アーティスティックかつアカデミックかつへべれけな一日を満喫したのでした。
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