私は幼い頃から漠然と、「なぜ私は生きているのか」ということをよく考えたものです。
小学生の時、チン、チンと鳴る踏切の向こう側で、１０人ほどの人が汽車の通過を待っている。その時、私は
「向こう側にいる１０人ほどのひとがいるが、このうち５０年後には何人の人がこの世に残っているだろうか」とフト思い、何となく妙な気持ちになったことがありました。
また中学校時代、数学の試験の最中に答案を書き終えて、いつの間にか考え込んでしまって、
「今、この教室で５０人のクラスの者が、必死になって問題を解いているが、彼らも５０年後には何人か死んでいるに違いない。残るのは何人くらいだろうか？」
と、急にわびしく淋しい気持ちに襲われたこともありました。
人間は何のために生まれてきたのだろうか？
そして････、こんなことを考えたものでした。
芥川龍之介の「河童」には、赤ちゃんが生まれてくる時には、お父さんがお母さんのお腹に聴音器を当てて、おなかの赤ちゃんに生まれてくる意志があるかどうかを聞いて、生まれたいという場合、はじめて母親のお腹から生まれてくると書いてありました。
しかし、我々人間の場合、自分の意志で生まれてきたのではない。気がつくと人間として生まれていた。ところが、自分の意志で生まれてきたのではないのに、生まれた瞬間から、体のどの部分を見ても、生きる目的に作られているし、また生きたいという本能も非常に強く強烈である。
何から何まで強制的で不可抗力的に生かされている。
それなのに、生まれると同時に、やがて死なねばならない運命が待っている。最初から死ぬということが分かっているのに、何故、生まれさせられたのか？
神は人間をバカにしているのか？
私の、この悩みは30代の半ばころまで続きました。人間は生まれて、生きている以上、いつ死が訪れるかしれない。いわば、だれもが期限不確定の死刑囚として生きているのではないか･････。
こうした考えに、私の強烈な劣等感と対人恐怖が重なりすっかり厭世的になり、死を真剣に考えたこともありました。
飲めない酒を赤ちょうちんのスタンドでがぶ飲みし、深夜の大阪の御堂筋を、車で引いてくれと思いながら歩いたこともありました。
と共に、生きる意義、目的を求めて聖書、法華経、維摩経、原始仏教等々の仏教書、心霊関係の本を必死に詠み続けたものでした。
４０代になったある日のこと、冷たい麦茶を飲みながら、ふと、次のようなことを考えていました。
このコップが作られたのは何故だろう。
冷たいものを飲むという目的のためです。
そしてコップを作るためには、まずコップを作った人の心の中に、コップの形というか、原型の設計図があったはずです。
だからコップが出来上がったのです。
またコップは割れものだから乱暴に扱ってはいけない。
つまり正しい使い方をしなければいけません。
そして、コップを作った人は、コップを作る必要、恐らく商品として販売するために作ったのでしょう。
このように見てくると人間が作ったものは、どのようなものであっても、まず心の中に、
�機シ繊文況拭�設計図）
２．目的
３．必要
４．正しい使い方
があるに違いないのです。
コップ一つでもそうであるとすれば、コップ以上に複雑で神秘な存在である私たち人間が、単なる偶然によってこの地上に存在するようになったとは、どうしても思えません。
こんなことを直感的に閃いたのでした。
やがて、この考え方は次のような信念に固まっていきました。
１．人間の原型
人間が存在するということは、目には見えないある存在の心の中に、その必要と人間の原型があったのに違いないです。
母親が妊娠したとき、胎内の受精卵は母胎から栄養をもらって胎児として発育していくが、僅か１０ヶ月の間に何億年という歴史の進化を繰り広げるといいます。
妊娠して３〜４週間は魚のような運動を行っている。魚のように尻尾があり、左右の心房はない。血管の配置も魚のようです。２ヶ月もたつと、エラも心臓も尾もなくなっており、哺乳類のものに変わっていきます。そして猿の形になり･･･。
どの母親の胎内であっても受精卵は寸分の狂いもなく何億年という生物進化の過程を展開して、赤ちゃんとなって生まれてくるのです。
何か大いなる存在の心の中に、こうした原型なり設計図があるからこそ、胎内の中で、このような驚くべきことが確実に行われるのです。
２．生きる目的
動物園に行くと、トラやライオンが遊んでいます。そしてトラやライオン自身は何のために動物園の中に入れられているのか知りません。
しかし、トラやライオンより次元の高い立場から見ている人間には、人間を楽しませるために動物園にいるということがわかります。
そうだとすれば、ある高い存在に喜んでもらうために、私たちは人間としての生命を与えられたのではなかろうか、と思うようになりました。
そして人としての目的を行い、よりよく生きるためにこそ、死があるのだ、死があるからこそ、生きていることに無限の価値が出てくるのだと思うのです。
結局、人生の目的は、無償の愛の実現をどこまでなしうるか、そして、そのことによって、自他の繁栄と幸福にどれだけ貢献できるかではないかと思います。
３．正しい生き方
お釈迦さまは、生きと生けるものすべてのものに仏性（神性）があり、すべてのものが、み仏の命（神の命）を生きていることを教えています。み仏の目で見れば、すべてが神の子、仏の子であり、尊く価値のあるものばかりです。
人はどのような人であっても限りなく尊い。そして、存在する必要があって、今、ここに生きているのです。
私は、その人でなければできない天分と個性を発揮し、世のため、人のために尽くしていく、そして地上に天国を実現させてほしいと、大いなる存在の願いがある気がしてなりません。
１日１日、身魂磨きを一つひとつ積み上げていくことが、大いなる存在の願いにかなう正しい生き方ではないかと思います。
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