さて、先日ばかり丸善に行ってきて幾冊程の本を買ってきたのである。
それで……
「旧日本陸海軍の生態学」 秦郁彦著
については読了。
ナンというか、久々にこの手の、其れも新刊を購入して冷徹な情報を入手できたのは、やはり幸甚なるに足ると云うべきであろう。
本書は、歴史学者として、以前から年寄りだったが更に年齢を重ねた筆者の手による、ここ10年くらいの中で発表した旧日本陸海軍に関する論稿集である。
ナンというか、学生時代からマニアックの変わり者だったのは「昭和史の軍人」辺りからよく知っていたが、相変わらずマニアックである。
マトモなのとしては「統帥権独立の起源」「満州領有の思想的源流」等で、ヘンなのとしては「軍用動物たちの戦争史」「旧日本軍の兵食」といった辺りか、こういう感じのが15本ばかり収録、500ページを超える
相変わらず一次資料を丹念に調べた上で、事実から推理する手法は健在で、何カ所ではあるが「そうなのか?」という結論に突き当たったが、全体として説得力があるのは云うマデもない。
細かい疑問点は己れでナンとかシロ!! という事と解釈して己れの論考に生かしたいと思った次第である。
いずれにせよ、古い本や嘗て読んだ本の読み直しばかりをしていたので、久々に読んだ新刊というのは、一ヶ月ぶりの生鮮食料品といった感じか……まぁ、ちょっと興奮したネェ。
「日本海軍と政治」 手嶋泰伸著
実は、今回の収穫は前記の秦氏の本と、西浦進の本であった、と思っていたのだが結論としてはこの本が最も良かった。
個人評点は93点、オススメ度は70点といったところであろう。
ずばり個人評点に限ればフルマークと云っても構わない出来栄えで、オススメ度が低いのは「こんなネタで喜ぶ人は滅多にいない!!」……という理由である。
が、まぁそれでも最近は大和ミュージアムとかスゴロクさんの知名度も上がっていることだし、ぎりぎり一般向け合格ラインを挙げておいた。
最近は陸軍派閥史を解明する川田稔氏の活躍の外、北岡伸一氏の「官僚制としての日本陸軍」といった今までの固定観念を証明するためでは無いレベルの高い歴史の研究本が様々出版されている状態にあると思っている。
特に、20世紀までに出版された関連書の多くが、視野を狭く持った類書……とりあえず頭に浮かぶのは纐纈厚氏とか辺りかな?? この人のは己れの結論を証明するための論旨に終始している印象があって理解は出来るが納得はできない内容であった記憶がある。
が、そういった姿勢の究明を否定したのが本書の著者である。
本年で30歳前半という若年にして、海軍を知ること10年でここまでの本が書けるものかと感心したワケであるが……本書は、海軍の生態をより深く探ることで、その行動原理に一貫性を認めた上で、その是非を考えるというべき内容となっている。
善悪……ではなく、北岡氏が視座においた「軍事官僚」としての将帥達の振る舞いを分析するところに力点を置く姿勢は素晴らしいの一言である。
戦後すぐの人達やその周辺者にはヘンな思想的影響があり、戦争は悪いから軍人も悪い式の結論から歴史を解釈しようとするが、この筆者はその若さ故、逆にそういった先入観による弊害を浴びずにおられた、ということなのかも知れない。
或いはその為に、それらの史観の非論理性、歴史学ではない目的の追求に違和感を感じたのかも知れない。
いわゆる善玉悪玉論にかかずるべきではないという考えを起点に組み立てられた海軍の実態は興味深く読み進められた。
近代史を理解する上で、新たな視角を得られる良書と云って良い。
「日本奥地紀行」 イザベラ=バード著
ちょっと目先の違う本。
まだ読了前であるが、有名な本なので思わず手に取ったという話し。
英国の女性で、身体が弱いから旅行に行けと云われて世界各地を回った人で、結局70歳を超える長寿となったのは旅が身体によかったのか、もともと頑丈だったのか……。
時に明治11年……である。
この時機に来日して自由に旅を出来る身分というのは相当なモノなのは云うまでも無い、だから世話人としてパークス公使が普通に出てくるし、その縁で外務次官森有礼や西郷従道なんかの名前も出てくる……尤も主役は奥さんの話である。
曰く……日本人には洋装は似合わない、という事であるが森有礼の奥さんは例外、西郷の奥さんは和装で、大層美人であったという話し。
あと……「少し前に、大久保卿が殺害された事件があった」……という話しがさらっと出てくる。
ナンか重臣の警備が厳重になっているのはこの影響である、という形で登場するのであるが……世代的に某流浪人の漫画を思い出してしまった。
不覚にも、このオバさんがあの世界を歩いていたのか……という想像をしてしまうのである……京都大火にならなくて良かったネ……と(笑
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