「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」 15C
ランブール兄弟
シャンティイ城、コンデ美術館
今回のノーベル物理学賞は青色発光ダイオードを発明した3人の日本人科学者に贈られましたが、ありえないこと、不可能なことを表す「青いバラ」なんて言葉もあるように、青色というのは昔から人間にとって貴重で特別な色彩だったようです。
絵画にとっても同様で、19世紀前半に人工ウルトラマリンやコバルトブルーといった化学顔料が発明されるまで、西洋画における青色の絵の具はラピスラズリという宝石を砕いて作るたいへん貴重なものでした。
日本画では群青という岩絵の具が使われますが、それはラピスラズリがあまりに貴重で手に入らなかったので、アズライト（藍銅鉱）を代用としたものなのです。その群青にしても他の色に比べれば、ずば抜けて高価なものです。
かように貴重なものですから、昔の絵画において青色はちょうど金と同じような貴重な使われ方をしました。聖人を他と区別するのに、その羽織るヴェールにワンポイントとして鮮やかな青色が使われたりしたのです。
その青色がこれでもかというほど贅沢に使われているのがこの作品。その名もずばり「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」。
時祷書とはキリスト教徒が用いる聖務日課書で、祈祷文、賛歌、暦などからなるものです。中世写本の最高傑作であり、「この世でもっとも美しい本」との呼び声も高く、600年前の制作とは思えない見事な色彩を残しています。
これを制作させたベリー公ジャン1世（この絵の豪華な青い衣装の男）はこの他にも多くの美術品の蒐集に財産を投じました。そのため、当時イギリスとフランスの間で百年戦争が繰り広げられいる中、ベリー公領はフランスいちの重税を課せられていたそうです。その後ベリー公は破綻、今、この作品は門外不出、非公開のフランスの至宝となっています。
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