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2014年12月20日16:07

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迷える羊

現在、朝日新聞にて、夏目漱石の『こころ』に続き、『三四郎』が再連載されている。

そして、先日、ついに、私の大好きなシーンに到達した。

「迷子」
女は、三四郎を見たままでこの一言を繰り返した。三四郎は答えなかった。
「迷子の英訳を知っていらしって」
三四郎は知るとも、知らぬともいい得ぬほどに、この問を予期していなかった。
「教えて上げましょうか」
「ええ」
「迷える子(ストレイシープ)−−−解って?」

このシーン。このファムファタル的美女の美禰子が呟く、「ストレイシープ。」私は、このシーンが大好きです。さぁ、これから、三四郎が、どんどんこの美女に振り回されて行くぞ!そして、終盤の件のシーンに繋がる。三四郎が絵の前で呟く、「ストレイシープ、ストレイシープ・・・。ヘリオトロープ、ヘリオトロープ・・・。」へ。

これ、何で、美禰子は、ストレイシープって答えたんだろう?迷子の英訳は、通常『Lost child(ロスト チルド)』で、『stray sheep(ストレイ シープ)』ではない。ストレイシープは、迷える羊だよね。
朝日の解説によると、聖書には、『stray sheep』という熟語そのものはないんだそうな。勿論、出展は、マタイ伝の、迷える羊のエピソード(というのか?教え?)の部分からなのだけど。
『stray sheep』は、英国の作家H・フィールディングの『トム・ジョーンズ』にあるものが最も古い『stray sheep』が出て来る文献らしい。1749年だそうな。

何で、美禰子は、ここで、「ロスト・チルド」ではなく、わざわざ、「ストレイ・シープ」って言ったんだろ?英語を習ってて、英語に結構馴染んでいた、美禰子が間違ったとも思えない。美禰子は教会に通っていたから、勿論、迷える羊のエピソードは知っていただろうけれど。

三四郎が、今後「迷える羊」になるという美禰子のお告げだろうか?それとも、その時の三四郎の顔は、迷子というより、マタイ伝の羊を探して歩く羊飼いのように見えたんだろうか?探し求めてるのに、それが探せず、途方に暮れた男のように。

終盤、三四郎は、本当に、そんな状態になるけれど。そして、それは、美禰子によって、もたらせられたものだけれど。美禰子、全部そこまで読んでて、三四郎に「ストレイシープ」って言ったとしたら、結構な悪女だよな(^_^;)。

漱石の小説って、この手の悪女っぽい人・・・悪女というより、ちょっとファムファタル(運命の女)入ってるぞ・・な女性キャラが多いような気がする。こういう女性がタイプだったのかな?とも思うも、漱石の性格を考えたら、こんな女好きでもなさそうだしなぁ・・・。キャラ立ちするし、動かしやすいとか、そんな利点があるのかな?
何でなんだろ?『こころ』のお嬢さんも、結構な魔性の女だと思うし。

ストレイシープ、ストレイシープ・・・。ヘリオトロープ、ヘリオトロープ・・・。
本当に、迷える羊になってしまった三四郎が呟く言葉。ちょっと、甘美にも思える。

画像。検索したら、色んな三四郎があった。
漫画で読む、三四郎があるんだね。今風のマンガの絵なので、おそらく、表紙絵は、三四郎と美禰子だろうが、美男美女である(笑)。 美禰子はともかく、三四郎は、あまり美男なイメージねえんだケドな(笑)。
振り向く和服美女は、やはり、美禰子さん・・・だろうね。これ、東大の三四郎池のシーンだよね。池で振り向く場面。
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