散歩の途中でよく会うワンコがいた。
名前を「チコ」という。
チコちゃんは、散歩は気がすすまないみたいで、少し歩いては休み、また少し歩いては休みしていた。
オーナーさんはおじさんで、団扇に長い棒をつけた手作りの「オシリたたき機」をもってらして、チコちゃんが立ち止まるたびに「ほれほれ、もうちょっと歩きや」と優しく声をかけていたのだった。
お話をするようになったときに、チコちゃんの年齢を聞いたら「16歳」と言うことだった。
でも、休み休み歩く以外は特に変わったところのない、おとなしい犬だった。
チコちゃんも雑種で、クーより二周り以上小さくて、体重は多分14キロくらいしかないんじゃないかなぁ・・・と思うと、チコちゃんはワタシ的には理想的な大きさのワンコなのだった。
* * * * *
そのチコちゃんの姿を見かけなくなった。
おじさん単独の姿も見かけなくなった。
お散歩仲間は勿論、ご近所の奥さん達からも「あの犬、最近見かけないねぇ。飼い主さんも見かけないねぇ」という、心配の声が上がった。
今日、用事があって出かけたら、家の近くの駐車場でリハビリっぽい動きをしているチコちゃんとおじさんの姿を見かけた。
ワタシが
「みんな、心配しては
りましたよー。 どうしはったんですか?」
と声をかけて、教えてもらったところによると・・・
「先月の終わりころからメニエル氏病になって、やっと外に出られるようになった」
・・・「メニエル氏病」って耳鳴りがするという・・三半規管がおかしくなる病気ではないか。
ワタシもなりかけたことがあるぞ(笑)。
でもそのときの原因は「仕事のストレス」だと言われたぞ(笑)。
「犬は人間のなる病気は全部なるよ」とはよく聞くけれども、三半規管までくるとは・・。
チコちゃんは、以前と違って首がずっと右を向いていた。
病気になってから、ずっとそうなのだそうだ。
おじさんは「元に戻るように」と、時々チコちゃんの頭をもって左に向ける体操をするんだそうだ。(ちょっと痛そうだった)
そして。
おじさんとワタシが話をしている間中、チコちゃんはくるくると一定の大きさの円を描いて歩いていた。
あぁ。
以前はこんなことなかったのに。
認知になっちゃったんだ。
16歳半だといってたから、年齢的に仕方のないことなんだろうけど・・それでも切ない。
おじさんは
「夜は、目をつぶるまでトントンしてやらんと寝ないし、
寝たと思ったら、3時間おきに起きて歩きまわりよるし
紙オムツしてるけど、犬用のオムツって尻尾用の穴があいてて・・・
そんでまた犬の肛門て、尻尾の付け根にあるからコボレるんですわ・・・
食事も流動食と普通の食事と半分づつでねぇ・・・
ハァ・・なんかねぇ、介護が原因で事故とか事件が起こるのん
わかる気がしますわ・・・」
といった。
切ない話のはずなのに、なんかオカシイ。
でも、おじさんに最期までちゃんと飼ってもらえるチコちゃんは幸せ者だと思った。
* * * * *
チコちゃんとおじさんと別れてから、ふと思った。
「ハハは、時間がかかっても自分のことは自分でできる
紙オムツの交換も自分でやってる
食事も普通食でいい
メニエルの傾向もない
・・・・チコちゃんより軽症やな。
クーちゃんはなー、ボケる前に痩せてくれよー
オネーチャン、22キロは抱っこようせんでー
今の食生活で16歳まで生きれるかどうかはわからんけど・・・」
「実の親を犬と比べるとはなにごとか!」と、イモートに怒られそうだけど(笑)。
* * * * *
風呂に入りながらまた思った。
犬に痴呆があるのなら、猫にもあるんだろうか?
猫は、若い頃から気ままにしてるから、わからないだけやったりして。。。
(別に猫に悪意はない。獲物を見せにきたり、クチからゴキブリやクモの脚をぶら下げなければ飼いたいと思っている)
マウスでも実験で「同じ条件で生育した2匹のうち片方だけに脳の萎縮がみられました」とか言うてるから・・脳が萎縮したら認知症やろ??
野生の動物は脳が萎縮するほど長生きでけへんから目立てへんだけやろか・・
シロナガスクジラとか、90年くらい生きるとかいうし・・・・・亀はっ??
んじゃ、人間の「若年認知」はどうなるのだ?
ワタシはなにもそういう勉強はしてないけど、それほど「脳」とは不思議なもので、まだまだ謎に満ちているのだった(笑)
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