予防接種

　会社でインフルエンザの予防接種をすることになった。しかし、自腹である。なんじゃそれはと思わないでもないが、まあそれでインフルエンザに罹らずにすむとなれば百歩譲ってよしとしよう。どうせ自分では思いもよらないことだから、おもしろそうだという気持ちもあった。
　規模が小さいのでむこうから来て予防接種してはくれない。こちらから車に分乗して向かうことになった。

　接種の前に医師の問診があるのだが、「予防接種でふつうにかかるより症状が重くなることがあるからねえ」とか言われるんである。「いままでインフルエンザに罹ったことある？」と尋ねられ、「ないです」と答えると、「じゃあ、罹らない体質なんだよねえ」とも言われるんである。「一本ぐらい注射したってしょうがないんだよねえ」と言われた人もいたらしい。どうも、インフルエンザの予防接種なんか意味がないと思っている人らしいのだが、こちらはしてもらいに来ているのだから、「会社で決まってるんだよね？　しょうがないねえ」と言われながら、注射してもらった。しかし、一緒に行った中には、「じゃあ、しなくていいです」と答えてまんまと「抗体があるから」という理由で免れた人もいた。

　帰りの車中で聞いたところによると、去年、工場でインフルエンザにかかった人がいて、それを知った社長が「なんで予防接種を受けさせないんだ」と怒ったらしい。だったら、そっちの負担でやってくれよと思うのだけど、さんざん医者から予防接種なんか役に立たない感じを醸し出されたらしい課長が自分に言い聞かせるように口にした言葉がこれ。
「まあ、効かなくて罹った人が出ても、社長にはやっといたと言えるから」
　おいおい、社長への言い訳のために予防接種させられたのかよ。しかも自腹で（←ココ、超重要!!）。
　なんだかなあ、聞きたくなかったなあ、それ。やっぱ、中小企業は熱いぜ。バーニングだぜ。