40になる知人が家を建てたのでした。
立派な家。
いいなあ、お金、あるところにはあるのだなあ。
なんて話していると。
「違うんです。もちろんローン。35年です」
え?35年後には75歳じゃないですか。
「大丈夫。その前に死んだら、ローンがちゃらになる仕組みの保険つきなんです」
複雑な気持ちになる。
仮に彼が、日本人男性の平均寿命を生きるとすれば、彼は75歳まで働き続けなければならない。
まさかまだ小さな子供たちにローンを引き継がせるつもりはないだろう。
彼に隠居はない。
もう働きたくない、いやだ、と思えばもちろん逃げ場はあるけれども、それは自らの死。
労働からも、ローンからも、すべてから逃れる術はあるものの、それが死と引き換えになるとは。
人間であれば、元気で長生きしたいと望むもの。
でも、そこをそんな風に思わせない仕組み。
早く死ねば早く死ぬほど、早く楽になりますよ、なんて。
保険は人生の考え方を複雑にする。
とりあえず、自分は今加入している保険をひとつ、満期を機に継続しないことに決めたのでした。今入っているのは、国民皆入の医療保険、年金保険、それに、火災、自動車保険だけ。
なるべくなるべく、今ある人生をわかりやすいものにしておきたいと、自分は思うのですが。
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