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2014年06月30日14:39

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アメリカン・ゴシック

「アメリカン・ゴシック」1930年
グラント・ウッド
75.9 cm x 63.2 cm シカゴ美術館

何の変哲もない老夫婦の肖像ですが、この絵はアメリカでは最も有名な作品のひとつです。20世紀アメリカのイコンとして、アメリカを象徴しているとみなされているのです。
題名の「アメリカン・ゴシック」とは背景にある建物の建築様式のこと。いわゆる「ゴシック」とは中世ヨーロッパの教会建築に見られる垂直性を特徴とした荘厳な様式のことですが、尖った切妻屋根やアーチ型の窓にその特徴を取り入れ、近代に模したものが「アメリカン・ゴシック」です。歴史や伝統を持たない新興の国アメリカを、その表面的な様式模倣が表しているといえるでしょう。しかし、この絵がゴシック的なのはむしろ、清教徒的な装束で狷介そうな視線を投げかける二人の農夫の方かもしれません。中世ヨーロッパの厳しく凝り固まった宗教観を、アメリカのピューリタ二ズムが引き写ししている格好です。最先進国であるアメリカはその実、原理主義的キリスト教を信じ、進化論さえ否定する頑迷固陋なプロテスタントが多くいる宗教大国なのです。
我々外国人は、アメリカというとニューヨークやロサンジェルスのような都会を想像しがちですが、実際にアメリカの大部分は、この絵に描かれるような凡庸な農家が占めているのです。そうした田舎のアメリカを「レッドステーツ」と呼びます(対して都会のアメリカは「ブルーステーツ」)。その特徴は、保守的で宗教色が強く、比較的低所得な層が多いことです。「レッド」は「レッドネック」という言葉とも関連します。「レッドネック」とは炎天下の農作業で首の後ろが赤く日焼けした白人を表す言葉で、「ヒルビリー」等と同様、白人貧困層を指す侮蔑語です。フォークナーやスタインベックが小説世界で描いているような、そうした人達のいる地方の姿こそ、アメリカの大多数であり本質と言え、この絵はまさしくそうした現実としてのアメリカの姿を表しているのです。

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