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2014年06月19日18:27

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SIMONDOLL 四谷シモン

人型。人形。ヒトガタ。人形師は、何処か呪術者のように感じる。そのヒトガタが・・・人形が、人に近ければ近いほど。球体関節人形たちは、物言わぬ人形のはずなのに、何処か遠くを見ている者もいれば、時に挑発的な視線をこちらに投げてくるコトもある。それは、創造主=人形師の“呪(しゅ)”が入っているのではないか?と時に思う。永遠の時を生き、永遠の時を死ぬ。
死ぬように生き、生きるように死ぬ。それが出来る人形たち。なんて羨ましいのだろう。

横浜ぞごう美術館で開催中の、四谷シモン氏の人形展『SIMONDOLL』に行きました。
フォト

前回は、今はなき、新宿の小田急美術館で開催されたのですが。そして、それにも行ったのですが、その人形展、2000年だったんですね。もう、14年も前なのかぁ。その間もエコール・ド・シモンの展覧会には(紀伊國屋画廊でやるやつね)ちょくちょく行っていたのですが、大きい展覧会は久しぶりなんですね。

前回小田急の時は、混んでいた思い出があるのですが、今回は、場所が横浜だからか、空いてました。ベルベットの少年も、機械仕掛けの少女も、1人締めして見られた。嬉しかった。さほど広くない美術館に、私ゃ4時間くらいいました。出来ればずっといたかった。だって、ずっとずっと見ていたいから。この世の者ではない、究極の美少年・美少女にずっとずっと囲まれていたかったから。

四谷シモン氏は、恩師の友人でもあります。なので、かなり壮絶な人生を送って来た人だったんだ・・・というのも恩師から聞いたりしました。そんな人生がひょっとしたら、人形に移るのかも知れません。シモン氏の人形は、決して楽しげな表情をしていない。何処か憂いている。おそらく、そのメランコリックさも、私は好きなのだ。
だって、生を死に、死を生きる人形ですもの。

今回は、シモン氏の生誕70周年記念だそうです。シモンさん、もう70歳なんですね。
シモン氏は、お父さんは、ヴァイオリン奏者で、お母さんはダンサーという芸能一家で育ちます。両親は留守がちで、不仲だった・・・とのコトもあり、シモン氏の遊び相手はいつも人形だったのだそうです。なので自然に人形が好きになったらしく、12歳の時には、もう人形を作っていたし、中学生の時には、人形教室に習いに行っていた。そして、澁澤龍彦に会い、ハンス・ベルメール(フランスの人形作家)を知り、衝撃を受け、球体関節人形を作るようになる。

展示はテーマにごとに分かれていました。最初は少年少女。「人形を純粋な魂の容れ物にしたいという願望があるのかも知れない」とはシモン氏の弁。人形は1体作るのに1年〜数年かかるらしく、穢れのない美しい人形を生み出すには、「自分の中にある、ピュアな要素を抽出して凝結させる」のだそうな。

シモン氏の人形。何に驚くって、主な材料が、紙のところ。あれ、張り子方式で作ってるんだよね。それでも、ビスク(陶器)に見えるんだよなぁ。超絶技巧である。

あ!久しぶり。探検隊のような半ズボン姿の『少年の人形3』だ。以前も見たよ。また会えたねぇ。でも、顔はちょっと悲しそうなんだよね、この男の子。シモン氏の少年人形は、良く靴下留めをしている。私は、これに非常〜に弱い(^_^;)。高畠華宵の絵でも、男の子が靴下留めをしてるけど、なんであんなにエロく見えるんだろう?フェティッシュになるからかな?

その横には、『解剖学の少年』。あどけない顔の少年が、お腹についた扉開けて、内臓を見せている。少年は箱に入っているので、標本チックにも見える。さしずめ、美少年を捕まえて、内臓を見せる為に標本にしました・・かな?
これ、澁澤龍彦が紹介したレオノール・フィニの作品『解剖学の天使』というタイトルに触発されて作ったんだそうな。あ、じゃあ、この少年は天使なのかな?
因みに。私もフィニは大好きです!

更に横には、私の大好きな『ベルベットの少年1』。ベルベットの半ズボンスーツの美少年。ちょっとすまし顔にも見えるし、遠くを見てるようにも見える。何処かの貴族のお坊ちゃまかも知れない。この人形は、ポスター写真に使われていました。私、この人形が大好きでね。トータル30分くらい見ていたと思うよ(笑)。この男の子は靴下留めはしてないんだね。

シモン氏の人形。指先が繊細で、関節の皺や爪までちゃんとあって、これをどうやって作るのだ!と凝視してしまった。指を凝視。
今回の人形展。有難いコトに、人形がガラスケースに入ってない(ガラスケースも含めて作品のものは入ってるが)。なので、かなり近寄って見られる。近寄って見ると、確かに、素材が紙だって分かる。微妙に毛羽があるから。でも、ビスクに見えるの〜。

シモン氏曰く「人形は呪術的な世界。彫刻や絵画は哲学の領域。人形は宗教。」と言っていた。私もそうだと思う。彫刻は、呪術には使わない。呪術に使うのは『人形』なんだ。依代にしろ、雛の人形にしろ。藁人形にしろ。

少女人形が一同に会したコーナーがあった。5体の少女人形がズラ〜っと並ぶ。うわー!うわー!美少女が一杯!美少女が一杯だよぉ〜!!!!\(^o^)/
皆美少女だけど、顔は1体1体違う。
1番端の白いドレスの少女人形。何処かの王女様だろうか?凛々しく立っていて、意志が強そうな女の子。胸の下までの金の髪の毛。
赤いドレスの少女人形は、何故か、ちょっとびっくりしたような顔をしていた。爪も赤くて、ちょっと派手。何に驚いてるのだろう?
私は、ここにずっといたかった・・・・。

シモン氏は、自分で動く自動人形も作り始める。『ベルメールの人形にオートマティックなメカニズムをとりつけた、日本の少年の人形を作りたい。』と思ったのだそうな。澁澤の『夢の宇宙誌』にゼンマイ仕掛けで動く自動人形があった。それで、動力はゼンマイにしようと決めたらしい。外部電源だと、いかにも第3者が動かしているようで、人形自身が動いてないと嫌だと思ったのも理由の1つらしい。1978年。このシモン氏のインタビューを読んだ当時機械科の学生だった荒木博志氏は、シモン氏に自動人形を作らせたいと、『エコール・ド・シモン』に入学(これも凄いね)。2人で自動人形を作り始めた。
ゼンマイ仕掛けの人形。ゼンマイを巻くという行為=自らが人形に命を吹き込む儀式・・・と説明に書いてあり、耽美馬鹿の私ゃ、「ひやぁ〜。萌えハート」である。何て素敵な、なんて耽美な行為なんでしょ。人形に命を吹き込む。ローゼンメイデンですな。「まきますか?まきませんか?」

でも、1体作成するの通常の何倍もの時間もお金もかかるため、制作は3体のみだったそうな。

で、ここにあるわけです。私の大好きな『機械仕掛けの少女1』が。前述した小田急美術館での回顧展でのポスターは、この少女人形の写真を使っていた。

木枠の身体もそのままに、機械の部分がむき出しの身体の少女。口元に手をやり、挑発的にこちらをねめつけて来る。金髪の長い髪の毛はあれど、頭は半分欠損している。そして、箱詰め。この箱詰めってのも、凄く良い!珍しい機械美少女だったから、標本にされちゃったのかなぁ・・・と、耽美妄想が出来るから。

シモン氏は、動作そのものより、動かす為の構造や素材といったものへの興味が強く、「実際に動かなくても、ひとつのオブジェみたいなもの」を作ってみようと、標本箱のようなケースに箱詰めにされた人形を作ったんだそうな。なので、この人形は、実際には動かないんだと思う。動く人形は3体のみなので。オブジェとしての“機械人形”だね。

機械人形は、木枠組みの人形になるのだが、木枠は荒木氏の発案だそうな。薄い皮だと、構造上もたないので、木枠にしたんだって。でも、この後も、機械人形ではなくても、シモン氏は木枠人形を作るようになるよね。

四谷シモンのシモンは、歌手のニーナ・シモンから取った。10代、20代。シモン氏は新宿のジャズ喫茶に入り浸る。そこで、画家の金子國義氏などに出会い、唐十郎氏と金子氏が知り合いで、それで唐氏主催の劇団、状況劇場へ出演するようになる。シモン氏は女形をやっていた。
でも、5年で、役者はすっぱり辞めたんだそうな。暗黒舞踏家の土方氏に「オマエはいつまで役者やってんだ?人形はどうするんだ?」と言われたらしい。そして、1973年、29歳で青木画廊で、初個展、『未来と過去のイヴ』を開催。この個展の紹介文、澁澤が書いているんだよね。

ここで、12体の女性像を作り展示。制作はもの凄い大変だったらしいのだが・・・。
金髪に真っ赤なマニキュアに口紅。黒のガーターベルトにハイヒール。娼婦のようないでたちの女性たち。

次のコーナーの『誘惑するもの 女』。に、この人形(未来と過去のイヴ)が6体あった。良く見ると顔が全部違うし、雰囲気も全部違ったんだね。以前も見たのに忘れてた。
ド派手な姉ちゃんの人形は、今までの少年少女人形と違い、自己主張しまくりだ。
その横には、『慎み深さのない人形』が2体。ラインストーンでキラキラに飾られた人形と、黒のレースを被り、真っ赤な口紅で派手な化粧の大きな口の女。おっぱい丸出し。確かに慎み深さはゼロである。これ、お尻が前についているのだが、お尻が前なのは、シュルレアリストのピエール・モリニエを意識してなんだそうな。へぇ〜。

シモン氏の言葉。「人形とは、私にとってすがるもの。これがないとだめなんです。」
ここで、役者とは決別。人形作家宣言をする。

次のコーナーは天使とキリスト。
シモン氏の言葉。「もし、僕に哲学的・宗教的なものがあるとしたら、それは人形を作ることでしかあらわせない。」

シモン氏が43歳の時、作家の澁澤龍彦が亡くなった。私は、まだ思春期の娘っこだったが、澁澤は大好きで、亡くなった記事を読み悲しかったことは覚えている。
澁澤は、シモン氏の精神的な支えで、世界で1番大事な人だったそうな。澁澤が亡くなり、精神的支柱を失い喪失感に囚われ、形而上学的な思想を重ねるようになるシモン氏。その後、彼は東方キリスト教に出会い、天使やキリスト像を生み出していく。天使シリーズは、故人(澁澤龍彦)に奉げられた副葬品。天使は形をなくし、想いだけが残った、精神的、霊的存在としての人間を表現したのだそうな。
恩師は、この時のコトを良く覚えているらしく、「シモンは、澁澤が亡くなって、『人形が作れなくなっちゃった・・・』と言っていたよ。」と言っていた。1番大事な人が亡くなったのだから、本当に、精神的に大打撃だったのだろうね・・・。

シモン氏は20歳で澁澤のベルメールの記事を読み、影響を受け、20歳〜40歳までは、澁澤氏の価値観で動いていたそうな。思想的にも大事な人だった・・というコトですね。

『天使−澁澤龍彦に捧ぐ』。天使の像は、全て、澁澤に奉げられている。等身大の女性的な顔の天使像が好きだ。金輪があり、白い服に白い羽。胸元で手を合わせ、天を見ている。これから飛び立とうとしているのか、もう、昇天しているのか・・・。視線は何処か、遠くを見ている。視線の先には天国があるのかな?

私、この人形もお気に入りで、これもトータル30分くらい見ていたかと・・・。他にも、カラフルな羽根を持つ美青年の天使や、本当の鳥の羽根が使われている美青年の天使などもある。鳥の羽根の天使は、腕の木枠はむき出しだった。全部澁澤氏に奉げられた天使。この天使たちに誘われ、ドラコニアの永遠の少年王は、天国に行ったんだね。

キリストの像も何体かあった。このキリストは、皆、何処か、シモン氏に似ていた。
『キリエ・エレイソン1』。悲しむキリスト。首だけなので、生首のようにも見える。受難に耐えているのだろうか?

次のテーマは『自己愛』。自らを作る。
澁澤の他界後、聖なるもの宗教的なテーマを追求し、その対極である俗なるもののことも考えるようになったシモン氏。その結果、最も俗なるもの“自分自身”に目を向ける。「人形は自分で、自分は人形という自己愛と人形愛の重ね合わせ」とはシモン氏の言葉。
『ピグマリオニシズム・ナルシズム』。機械が入って、木枠もそのまま見えている、シモン氏本人の顔をした人形。木枠で作った性器もちゃんとある。でも、表情は何処か素っ頓狂にも見えるんだ。人形になった自分を揶揄しているようにも見える。もう1体の『ナルシズム』は、悲しげな顔のシモン氏本人。良く見ると、手にちゃんと体毛が植えてあり、これ、1本、1本植えるのに、どれだけかかるんだろう?と思う。(因みに、人形の睫毛も1本1本植えるのだが、素材は、チークのブラシだそうな)
あと、服が肩からちょっとずり落ちているのが、ちょっとセクシーで、ナルシズムって感じだった。

次のコーナーは『未完成の追及』。
シモン氏は、木枠むき出し、木や紙など素材自体がもつ力強さそのままに制作するようになる。途中の面白さ。「悲惨な故に愛くるしい」感じ。私、この感覚が本当に分かる!だから、私は本来、腕や足が欠損してる球体関節人形の方が好みだ。わざと足がなかったり、腕が1本なかったり。未完成、悲惨な故に愛くるしい。

2011年より、腹部や乳房にも球体を使ったベルメールのような人形に近づく。紙粘土を塗ったままの荒っぽい素材感を残し、“50年位時間がたつような感じ”を狙ったそうな。また『自分が死んだ状態』を人形に表現している・・とも。現在になって、ベルメール風になっていくのが面白いと思った。作家本人が、原点回帰をしているようで。
シモン氏曰く「人形も老ける」んだそうな。汚れて汚くなったという意味ではなく、老ける。「本当は、もう、寿命が終わった人形もあるのかも知れない。」とはシモン氏の言葉。

『木枠で出来た少女3』。これも私、大好きなのですが。木枠むき出しの身体は半分しかない。その半分の身体に美しい少女の顔がついている。寝かされているので、鑑賞者は彼女を上から覗き込むのだが、ちょっとドキドキする。彼女の視線は何処か遠くを見ているようだ。今、目覚めたのだろうか?

『姉妹』。少女人形2体と少年人形1体。少女の乳房もなるほど、球体で出来ていて動きそう。3体とも、粗い紙粘土が塗られている。顔はあどけない表情だ。少女たちのピンクや白いリボンも綺麗。

『ドリームドール』。白いドレスを着て、白い手編みのケープを羽織った少女。芯が強そうな顔をしている。横座りをする美少女。お腹が球体になったので、人形が自分で横座り出来るようになり、この仕草が、甘さにつながり、人形に甘美さが加わったそうな。

シモン氏の作業場も再現されていた。ガラスの眼球が凄く気になる。そして、人形が履く小さいブーツや靴が可愛い。球体関節人形って、1体数百万だったり、中には数千万のもあるのだが、小さい靴は全部オーダーメイドだし、服も生地から選んで、特注で作るのだそうな。で、制作日数数年では、そりゃ、高いは!と思った。
作り方の説明も面白かった。粘土で原型を作って、石膏型をとって、それを2つに割って、その石膏型に、紙(和紙など)を貼り付けていくんだって。へぇ〜。本当に張子方式なんだなぁ。紙なのかぁ〜・・・。でも、ビスクに見えるのよぉ〜。
あと、澁澤龍彦の生原稿も見られた!凄くしっかりした字を書く人だよね、澁澤さん。シモン氏の人形を「オナニーポエジー」と呼ぶか、澁澤龍彦よ!自慰行為の詩だね、まさに。

お土産は、ポストカード5枚と、どうしても我慢できずに、美少年クリアファイル(ベルベットの少年)を購入。これで、使わないで保存するクリアファイルがまた増えたねっ!

70歳のシモン氏の写真があった。ピノキオのゼペットじいさんが本当にいたら、こんな感じかな?という風貌になっていた。きっと、シモン氏の人形も、そのうち生命をもって動き出すのだろう。

7月6日までやっています。球体関節人形が好きな方、美少年、美少女が好きな方、耽美〜な気分に浸りたい方は行ってみるのも一興かと。土曜日には、シモン氏本人によるギャラリートークとサイン会もやるようですよ。(凄く混みそう・・・(^_^;))
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