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2014年06月15日08:35

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フォークリフト

 工場で働いていた時分、重いものをいちいちフォークマンに頼んで運んでもらうのがなにより手間だった。はっきりいって手のあいているフォークマンを探して捕まえるのにいちばん時間がかかった。たいてい、一人でいろんな仕事をしているから、フォークリフトはあるのに、フォークマンがいないという状況もしばしばあって、自分で動かせればすべて解決するんだけどなと思ったものである。

 そんなわけで川崎大師の近くへフォークリフトの免許を取りにいった。普通車の免許を持っていない人間でも5日間の講習を受けて試験に合格すればフォークリフトのライセンスを取得することができる。
 講習の内訳は学科が2日、実技が3日。学科のうちの1日(実質には半日)は各種のエンジンについての説明にあてられていて、普免を持っていればこれが免除されるから、4日で免許をとれるわけである。

 エンジンの仕組みなんて中学校の技術(なくなった科目だが)以来で、なんか懐かしいなとか、そういうことだったのかとか、割と興味深く聞いてしまったのだけれど、いまほとんどのフォークはバッテリー駆動なわけで、この講義はあまり意味がないのだった。

 2日目は普免持ち4日間コースの人も加わって生徒は倍増、40人ほどでフォークの運転や荷の上げ下げについて講義を受け、この日の終わりに学科試験があった。試験は最近になって○×から四択になり、難易度は上がったというけれど、別にたいしたことはない。落ちた人も一人だけいたそうだけれど、再試験で全員無事に実技へと進むことになった。

 でもって、3日目の実技がこれはもう大変だった。フォークリフトは車と同じく、ハンドルの向きに応じて半径の異なる孤を描く軌道をとる。この曲線を組み合わせて、コースどりをしていくわけである。まあ、実際にはこれぐらい曲がるときにはこれぐらいハンドルを切るというだいたいの目安がドライバーごとにあって、思ったより曲がったり曲がってなかった場合には、そのつどハンドルを調整しているだけなのだろうけれども。
 およそ乗り物を運転しない自分にはその感覚がないし、フォークの運転についてはそこが最大のネックになるだろうと思っていたけれど、思っていた以上にこれができなくて、じつに惨憺たる状況だった。実技の教官に、「明日も来いよ」と心配される始末である。
 そして、自分のメンタルの脆さに自分で驚いたのだけれど、その夜はまったく寝つけなかった。とりあえず今回は無理かもしれないにせよ、次回以降のことも考えれば、できるだけ運転に慣れておいた方がいいわけで、とにかく行くだけは行こうと思っていたが、完徹で行くのはさすがに無理すぎなんである。どうしようかと思ったけれど、(名前だけで自分の中ではすでに伝説のバンド)SEKAI NO OWARIのことを考えていたら、フォークリフトについては忘れることができて、その日はどうにか三時間だけ眠ることができた。

 次の日は雨で、ぎゅうぎゅう詰めの電車の中に傘を持って乗るのがなんとなく億劫で、バスにしてしまったら、末吉橋をすぎたあたりで渋滞に巻きこまれて、えらいのろのろ走行になってしまった。この調子では遅刻である。受けなければいけない講義の時間は法令で定められているから、遅刻は欠格である(本当はどうにかなるのかもしれないけれど)。安くない授業料をどぶに捨てたというか、これはもう行くなという思し召しかとも思ったけれど、悪足掻きをしてみることにした。
 前にバスで行ったときに、川崎駅近くの混雑を避けて手前の尻手駅で降りた客がけっこういたのである。すぐ降りて尻手駅に走り、南武線で川崎、そこから東門前を目指せばまだ間に合うかもしれない。
 そう考えて次のバス停で降り、そこから尻手駅へ走ったのだけれど、渋滞はその区間だけらしくて、自分を降ろしたバスは遅れを取り戻すべく、猛スピードで視界の外へと走り去っていったのであった。
 勘のいい人なら、雨の日にバスという時点で自爆フラグであることに気づいていたと思う。川崎駅の近くまで行けば、結局、渋滞にはまっていた可能性もなくはないので、結果的に間違っていなかったかもしれないけれど、寝不足の頭で焦って考えたことがどんどん裏目に出ていく様子は、「お、なんかひさびさに来たな」という感じであった。
 これでやることなすことすべてうまくいかず、それでも結果としてぎりぎり間に合う(あるいは、ぎりぎり間に合わない)ということになれば、日記としても盛り上がるところなのだけれど、雨の中たどりついた尻手駅では南武線が三分遅れてくれたおかげすぐ乗ることができ、川崎での大師線への接続もスムーズにいって、終わってみればあんなに焦る必要はどう考えてもなかったというぐらいふつうに間に合ったのだった。

 実技の2日目は試験用のコースをひたすら往復するというもので、コースそのものはタイトになったけれど、これならどこでどれくらいハンドルを切ればいいか決まっているので、バックで八の字を描かされた前日より、こっちの方がまるっきり楽で、一息ついた。

 最終日は荷揚げして運んで荷降ろしするという試験の内容をひたすらくり返し練習。試験はコースを外れたり誤操作ごとに減点していって、基準点を下回ると不合格なのだけれど、時間でいえば五分をすぎるとペナルティが発生してくる。他の人はだいたい4分、速い人は3分でまわるところを、自分だけは9回チャレンジして、5分を切ったのが1回だけだった。それだけで落とされるわけではないけれど、練習で速い人も試験ではだいたい30秒ぐらい余計にかかるらしく、そう考えるとけっこうぎりぎりのラインにいたというべきだと思う。
 実際、試験でいきなり6分かけてしまい、余裕だったはずなのに、かろうじて合格になった人もいくらかいた。しかし、自分はあっさり4分半で終わらせ、実は意外と本番に強い市橋ちゃんと慢心することに余念がないのであった。「細かい減点はけっこうあった」と監督官に釘を刺されてしまったが、なにを言われようが免許なんてとってしまえばこっちのもんなんである。

フォト

 しかしまあ、もうフォークリフトに乗らずにすむと思うと肩の荷が下りたのは事実であり、趣味ならともかく(けっこうおもしろい)、仕事では乗りたくないというのが本音ではあるけれど、おそらくそうもいかないのであった。

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