犯人は２人　The Adventure of Charles Augustus Milverton

ＳＨＥＲＬＯＣＫのseries３のエピソード３も放送されたのですが、まずは、こっちを書かなきゃだろ、私の場合で、今回は、グラナダ版。

原題は『The Adventure of Charles Augustus Milverton』。チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンの冒険。ミルヴァートンが冒険するみたいだな！

で、グラナダ版。殆ど、オリジナルです。そりゃそうなんですよ。だって、元短編なんだもん。その短編を無理矢理１時間50分のドラマにしたんだもん。そりゃ、オリジナルになるだろう・・・なのですが。

私、このグラナダ版の『犯人は２人（恐喝王ミルヴァートン）』がお気に入りです。

因みに。SHERLOCKや、ガイ版から入ってこれ見た人は、ぶったまげるらしいですよ。うん、そうだよね。男色行為ばらされて、大佐、自殺してんだもんな。因みに、このエピソードは、グラナダ版の全くのオリジナル。エヴァのお友達のシャーロッテちゃんも出て来ない。

でも、私ゃ、この男色スキャンダルが、ドラマとして、凄く効いてると思うんだよ。だって、大佐は、自殺するんですよ。ただの『女性のスキャンダル』だったら、まぁ、新聞に載って、スキャンダルとして報じられはしましょうが、自殺までしないと思うんだ。婚約破棄（結婚破棄）にはなったかもだが。自殺するほどの大スキャンダルだったら、男色行為は、もう、そりゃそうだろうですは。
この大佐さん。騎兵隊員で、大佐なんだから、偉い地位ですよね。この当時、英国は、同性愛犯罪ですから、この大佐さんは、「犯罪者」になっちゃうんですよ。結婚白紙の上、犯罪者・・・というより、犯罪者だから、結婚破棄ですよね。そら、犯罪者を婿には出来ん。そうなったら、自殺する・・・かもね・・って言う。

私は、どうしたって、ラファエル前派が好きだから、ここで、シメオン・ソロモンを思い出すんですよ。ラファエル前派の画家、詩人として活躍して、才能もあったのに、男色行為の現場（公衆トイレで男性に声をかけていたところを捕まる・・という、ベッタベタな逮捕のされかたをした）を押さえられて捕まるのだが、ラファエル前派の仲間はガン無視ですよ。誰も彼を助けようとはしなかった。彼は、どんな風に思ったろう・・・という反面、今ならラファエル前派のメンバーたちの気持ちも分かります。フォローして、「オマエも、男色家だろう？」と痛くもない腹探られて、面倒臭いコトになるくらいだったら、ガン無視するよな・・・と。

このエピソードを入れたコトにより、ミルヴァートンって奴の“嫌な奴”度が増すんだな。ワトスン君も言うように「これ、オマエのせいで死んでないのか？」と。（まぁ、男色行為自体は、大佐が自分が蒔いた種でもサ）

あの、大佐が好きになった女装歌手のあばずれ感がスゲエんだ。「この恩知らず！」と怒鳴りに来た大佐に向かって、ドロワーズを投げつける！すげえあばずれ野郎。
そして、あの女装歌手。クリムトっぽい恰好なのだが（舞台の絵もクリムトっぽいのだが）、ロセッティの描く女の人にちょっと似てる・・・と思いました。顎のごつい感じとか。綺麗ではあるのだが。

レストレイドが、ホームズの家に「証拠の手紙返して。」と言いに来る。その時「何か分かったら、連絡して下さいね。」と言っても、ホームズ先生、ガン無視！で、レストレイドが腹立てて、階段の手すりをバン！って叩くシーンが何気にお気に入り。でも、あれ、手紙は、証拠物件だから、レストレイドが正しいよな。あの従卒さんは、大佐のことを尊敬していたのだろう。で、ホームズ宛の手紙があったから持って来たんだろうな。

で、ホームズ先生、配管工に化けてミルヴァートンの家に行って、女中たぶらかして婚約詐欺するんだけど、これ、やっぱり酷えや（笑）。最初原作を読んだ時も、「オマエ、ひでえな！」って思ったケド、グラナダ版で改めて見ても酷かった。そら、大槻ケンヂ氏に「ホームズが、酷いことをします。」（大槻氏は、ホームズのこういうところが大好きらしい・笑）と言われるは！

ホームズとアガサちゃん（ミルヴァートンの家のメイド）のキスシーンがさぁ。ホームズの方が押し倒されてるんだよなぁ〜(^_^;)。見る度「オマエが押し倒されるんかい！」とツッコむ私。あの後、ジェレミーホームズさんはうつぶせになっちゃうんだケド、ショックのあまり落ち込んだんだろうか？あれが、ファーストキスってコトは流石にねえと思うのだが・・・。でもきっと「俺、何やってんだろう？」感はあったろう。
あのアガサちゃん。あばずれっぽさはあったが、そんな悪い娘さんには見えないので、やはりちょっと可哀想な気がしてしまう・・・。

グラナダ版では、後にアップルドアに来るホームズにアガサが気づいた感じになっているが、原作では、「僕に婚約が出来たと言ったら驚くかい？」の会話の後、アガサちゃんは出て来ないので、どうなったのかが全く分からない。もし、そのまま消えたのだとして、アガサがベイカー街へ「エースコットという配管工を探して下さい。」と依頼に来たらどうすんだろう？とちょっと思った私。
でも、まぁ見えないところで、何某か手は打ったろう。ホームズ先生だし。

アガサとのキスシーンは、完全版じゃないと見られない。NHK初放送時はカットされた。何故カットしたの？エロシーンなら分かるケド、たかだかキスシーンなのになぁ。やっぱり、アガサちゃんにホームズが押し倒されていたのがマズかったのか・・・。

夜会で踊るワトスン君が恰好良いですね。その反面、夜会服すら着ねえホームズ。あれ、良く舞踏会入れたな！平服で！あれ、伯爵の舞踏会なんだよ？貴族の舞踏会に平服で行くなよなぁ〜。そもそも、グラナダ版のホームズ先生。夜会服を１回くらいしか着ません。お金なくて売っちゃったんだろうか？（だったら、マイクロフトから借りれば良いのに・・と思ったが、サイズが合わないか・・・）

何故か、最新式の家宅侵入グッズを持ってるホームズ先生。何処で調達したんだろう？そして、結構やすやすと金庫を開けちゃうホームズ先生。
因みに。原作には『金庫破りが趣味』とある。特技がピッキングで、金庫破りが趣味の名探偵って・・・・・・・。てか、もし、強盗事件が起きたら、真っ先に疑われないのか？と気が気ではない。そんなコトが気になるのは私だけなのか？

グラナダ版のワトスン君は、一緒に空き巣（？）には行ってくれるが、ちゃんと怒る。私は、原作より、こっちのワトスン君の反応の方が普通だと思う。原作も怒りはするが、「僕も連れて行かないと、このコト全部警察に言うよ？」と言い、ホームズが「長年一緒に暮して来たのだから、同じ牢屋で果てるのも一興かも知れないね。」と言う。このシーンは良い！好きです。問題は、その後だ！

ワトスン君。ノッリノリで押し込み強盗（？）の用意をする。覆面に至っては、ワトスン君が黒い布で自分で作ってるんだぜっ！手先器用だな！流石元軍医。
オカシイだろ！何だコイツ。もう、ワトスン君もコイツ呼ばわりだ！（笑）
これを読む度「オマエの正義もたかが知れてるなっ！」と思う。ワトスン君の正義って、ホームズが基準なんだよね。だから、ホームズが関係すると割と正義を曲げちゃうの(^_^;)。これ、原作の特徴とも言えます。
しかも「音の出ない靴ある？」で、ワトスン君「テニスシューズがあるよ！」って、テニスシューズ持って来るんだが、オマエ、テニスなんかしねえじゃん。そもそも、足に怪我してるんじゃなかったっけ？・・・というのは、シャーロキアンも良くツッコむ（笑）。

このシーン。グラナダ版だと、押し込み強盗の用意しながら、ホームズに「君は、泥棒の才能がありそうだね。」って言われて、「誰が教えたのかね！」ってちょっと怒るって言う。このシーンの方が普通だと思うよ。あと、このシーン何気に萌えだよ！（笑）

あと、細かいところだと、スウィンステッド卿の卒中顔がリアル過ぎてちょっと引く・・とか、色々あるんですが。

ベイカー街の謎の風呂とか。配管工をやって来てホームズが風呂入ってるんだが、あの風呂何処にあんの？
私ゃ、ずっと、１階に風呂があるのかと思っていたら、どうやら、３階（ワトスン君の部屋があるところ）にも風呂があるらしく、「えぇ！？このフラット２つも風呂あるの？130年前なのに？」と驚いた。
でも、それだと納得行くよな。何故か、ホームズ先生、バスルームの扉を開けたまま風呂に入っており、ワトスン君が見きれるので。１階にあったら、「何でオマエ、人が風呂入ってる横で着替えてんの？」ってコトになり、それじゃあ、ワトスン君がホームズの入浴を覗きに来たようになってしまう・・という(^_^;)。
それはないだろうから（あって、たまるか！）、おそらく３階にあるんだろう。で、ワトスン君は夜会服に着替えてて、会話が良く聴こえるように、ドア開けてたんだな。これで辻褄は合う（笑）。
まぁ、ここまで気にして、見てる奴もいねえと思うんだが、気になったんだもん！

最後、逃げる時、ワトスン君を振り切る勢いで走る、一緒に果てよう感がゼロのホームズ先生が愛しいです（笑）。あと、ワトスン君の足は完全に完治したと思われます！

色々楽しいグラナダ版の『犯人は２人』。
次回は、『６つのナポレオン像』だそうです。見どころは、捜査中なのに、飴を勧めるワトスン君。（でも、原語だと、キャンディーじゃなくて、ハンバーガーなんだよ。これ、NHK放送の完全版でも、そのままなのな？）

画像に挿絵のミルヴァートンも貼ってみた。グラナダ版似てますね。でも、グラナダ版のミルヴァートン、ザキヤマさんにも似てると思う（笑）。