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2013年10月07日06:33

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『あまちゃん』が終わって『ごちそうさん』が始まる

 というわけで、先週の話題だけれど、『あまちゃん』が終わった。
 脚本がキレキレだったのは、深夜の総集編の直前あたりまでだったろうか。その後も悪くはないけれど、さすがに以前ほどの勢いはなかったように思う。

 そうして、すぐに震災編に突入したのであって、朝の連ドラでどうやって震災を描くのか、不安がなかったといえば嘘になる。ハリウッドなら、CGバリバリで災害からの脱出劇を一大スペクタクルとして描くところだろうけれど、もちろん、NHKはそんなことしやしないのである(まあ、まだそれが許される状況ではないけれど)。

 『あまちゃん』において震災は、なんの前触れもなく突然に襲いかかってきて、それまでの日常を容赦なく断絶させる存在として描かれていた。そのためには、当人たちには自覚できていなかったけれど、それまでの生活がいかにかけがえのないものか、たっぷり尺をとってじっくり描いておく必要があったのである。

 この「たっぷり尺をとる」というのが実はけっこう曲者で、民放のドラマはすでに1クール、しかも前後を特番にとられて10回もできないことすらある。記憶に残る最後の2クールのドラマは唐沢寿明の『不毛地帯』だったりする。瀬島龍三万歳。
 現状、日本のドラマでこれだけ尺を確保できるのは、朝の連ドラか大河ドラマ、あるいは、日曜朝の特撮枠かキッズアニメぐらいではないだろうか。よく知らないけれど、海外に目を転ずれば、もっと余裕はない気がする。
 アメリカのドラマが数シーズンにわたって続くことがあるけれど、あれは少年ジャンプと同じで、DVDが売れる限りは続けなくてはいけないけれど、駄目になるとばっさり打ち切られるから、ちょっと違うはずである。

 『あまちゃん』は朝の連ドラなりの手法で、震災に取り組んだと思う。一応、北三陸鉄道を復旧させ、海女カフェを再建することでドラマとしては区切りをつけていたけれど、海女カフェなんか作り直している場合か、他にやることがあるのではないかという問いかけも、作品中にもあった。実のところ、震災についてはなにひとつ区切りなどついていないではないかとは、ドラマの中でも述べられている。とはいえ、いつまでも引きずれる問題でもなく、ときにしたたかに被災地としての立場を利用しつつ、しかし、それに甘んずることを潔しとしない態度を、あくまで軽妙に描いた手腕には敬服せざるをえない。

 ラスト、二人のヒロインが未復旧のトンネルを、光のあふれる出口に向かってはしゃぎながら走っていくシーンは美しい。失われた生活をそのまま取り戻すことはもうできない。ただその記憶を踏まえながら、新たな日常を綴っていくことしかできないのだけれど、彼女たちはいずれそれを実現させるであろうことを予感させるシーンになっている。

 思うにこのドラマのキーとなるシチュエーションは三つあって、ひとつめは最初のお座敷列車を走らせたとき、ふたつめがハートフルを辞めさせられて個人事務所を立ち上げた時、最後がラストのトンネルのシーンである。いずれも客観的な状況としてはしょっぱいけれど、当事者には不思議な高揚感があって、ドラマを盛り上がている。むしろ、傍目のしょぼさこそが、当人たちの将来によせる希望の大きさを際立たせているというべきか。脚本の宮藤官九郎はそうした状況を創りだすのが本当にうまいと思う。


 でもって、先週から『ごちそうさん』が始まった。朝からおなかのすくドラマだそうである。テーマとして食を取り上げるのは、個人的にはリスキーな気がするけれど、世間的には安牌なんだろうな、多分。

 盛り上がったドラマの後を引き継ぐのはプレッシャーである。父親が渡辺謙であるということすら重すぎる十字架だろうに、杏は本当に大変だなあと思う。最初の一週間は主人公の子供時代で、もっぱら子役が演じていて、当然ながら、ここで子役の演技のあげつらうつもりはない。彼女は演出の意図に忠実に演じていたのだろう。しかしそれでも、嫌な予感がするのは、子役と杏がおいしいものを食べた時、それを表現するためにうっとりとした表情をすることである。

 しかし、『孤独のグルメ』を知る身としては、松重豊のあらゆる雑念を排して食べることに没頭しているあの姿しか、食事のおいしさを伝える術はないとしか思えない。食べるたびにいちいちうっとりした顔をされるのは、なんだか嘘くさい。

 あれを毎日やるとなれば、もう演技というより、顔芸の範疇だから、今からでも主演を杏からコロッケに代えた方がよくはないだろうか。どうせ名前も食べ物つながりだし。さすがに唐突すぎるか。

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