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2013年10月02日16:12

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速水御舟 −日本美術院の精鋭たち−

『速水御舟 −日本美術院の精鋭たち−』に行きました。チケットは、毎度お馴染み、新聞屋さんからの貰い物。新聞屋さん、いつもいつも有難う。
フォト

山種美術館の御舟展のHP↓
http://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html

私の日記を遡ると、何回か出て来ると思うのですが、今回も、『炎舞』が見られました。この絵、本当に不思議です。絵自体が光って見えるんだよなぁ〜。絵の内側から、発光してるように見えるんだ。
御舟の絵。リアルに描けば描くほど、幻想味が増してくるのは何故なのだろう?どうして、御舟の絵には、『闇』や『死』の匂いを感じるんだろう?

今回の展示は、再興院展100年記念とあり、御舟以外の院展で活躍した画家たちの絵がありました。まず、院展って何よ?ってコトですよね(^_^;)。因みに、私の日記を遡ると、そごう美術館でやった、院展の美術展レポも出て来ますよん。

院展って言うのは、ざっくり言うと、1898年に岡倉天心の元結成されたものだそうで、その後、資金難などで、一時中止になるも、1914年に再興したんだそうな。で、じゃあ、なんで、そもそも岡倉天心がこの団体を作ったのさ?って言うと、1898年に岡倉天心を排斥する運動が、藝大であって、岡倉天心は東京藝大を辞任。で、文展(官展)のむこうをはって(と言うのかな?)この団体を結成したそうな。院展の方が、前衛的でとんがった作品が多いんだって。思わず、「あぁ、菱田春草の朦朧体とかか!」と思う。
院展の理念ってのが『芸術の自由研究を主とし、故に教師なし先輩あり、教習なし研究あり』なんだそうな。教えるって言うより、先輩から自主的に自由に学ぶってことなんだろう。

まず、入ると、私の大好きな御舟の『牡丹花(墨牡丹)』がお出迎え。御舟は何故か、墨色で、牡丹花を描いた。滲みが見事なのですが、礬砂(どうさ)を引いて滲みをストップさせた後、熱湯で礬砂を抜き滲ませる・・という、そういう技巧をこらしてこの絵を描いたそうな。因みに、御舟は、技の開発半端ないんです。今でも「これ、どうやって描いたのか分からない。」って言うモノもあるそうな。墨牡丹の茎のエメラルドグリーンも美しいんだよね。

ここから暫くは、院展で活躍した人コーナー。
菱田春草『雨後』。手前に滝。後ろに山々。岩場の墨色に、滝壺の青が生えて美しい。朦朧体(ぼやっとしたぼかしで描く技法)で描かれているので、絵にソフトフォーカスがかかっているみたい。左に鳥の大群もいる。空気がある絵だなぁ〜と思う。実際、大観や、春草は、「ダ・ヴィンチみたいな、空気遠近法って、日本画で出来ないの?」と思って、こういうマチエールで絵を描きだしたそうだよ。

下村観山『不動明王』。何か、劇画タッチの明王。北斗の拳とかジョジョとか思い浮かべる。雲に乗って参上した明王は、手を挙げ「待て」のポーズをしているみたい。そして、日本画なのに、陰影がある。不動明王が直線的な軌跡で飛来するのは、『信貴山縁起絵巻』が由来だそうな。軌跡の部分に金を使ってる・・よね?

私、あまり横山大観の絵って、好きじゃないんだケド、これは好きなんだなぁの『木兎(みみずく)』と、『叭呵鳥』。金目のミミズクは、木の枝にとまり、こっちをキッと睨んでる。背景の闇の墨のぼかしも綺麗で、葉っぱの描写も良い。叭呵鳥は、横向きだけど、何故か、上目使いでガンつけてるんだよな(^_^;)。

今村紫紅の『早春』は、セザンヌっぽいんだ。田んぼの風景なんだケド、木の視点などが、バラバラで、色んな角度のものが入っている。
今村紫紅は、御舟たちに「出来上がってしまったものは、どうしてももう一度うち砕さなくちゃ駄目だ。僕は壊すから、君達建設してくれたまえ。」と言っていたとか。そして、御舟も、この言葉を実行していたとか。
御舟は19歳で、もう、院展で認められちゃうんだよね。因みに、雅号の御舟。コレは、俵屋宗達の『源氏物語関谷澪標図屏風』からとった名前らしい。宗達好きだったのかな?

ここから暫くは、御舟の絵特集です。沢山あって、至福だった。
『灰燼』。関東大震災の時の町の絵。何か、廃墟みたいで、ロマン派の絵みたい・・・とも思った。御舟は、この絵は、世に出すつもりはなかったそうな。院展の会場にいて、震災にあった御舟は、壊滅した町を見て、衝撃を受け、これを描いたらしい。

『天仙花』。イチジクの実と枝。葉には、セミの抜け殻がひっついている。葉が透けているように見えるのも面白い。

私の大好きな“昆虫二題”。『葉陰魔手』と『粧蛾舞戯』。
『葉陰魔手』は黄色と黒の蜘蛛の絵だ。ヤツデの葉に蜘蛛の巣をはり、蜘蛛は獲物が来るのは今か今かと待っている。よく近づいて見ると、蜘蛛の巣がキラキラしているのが分かる。蜘蛛の巣に銀を使っているんだね。

『粧蛾舞戯』は、『炎舞』の絵の中に入り、炎を下から見た状態らしい。渦を巻く炎の中心に蛾が向かっていっているようだ。巻き込まれているようにも見え、自分の意志でそうしてるようにも見える。私には、この絵は、前進しているようにも見える。墨と朱の配合が素晴らしいのよねん。

小茂田青樹と御舟は、同じ日に松本楓湖の画塾へ入門したのだが、小茂田は御舟の絵に「理想化が強く、絵を作り過ぎる。爛漫な梅にも虫食いもあればヤニもある。」と批評したそうな。綺麗に描きすぎってコトなのだろう。御舟は、皮肉と言いながらも、「なるほど、納得できる部分もある。」と思ったとか。

そんな小茂田青樹の『春雨』。雨の中、桜(かな?)の花が咲いている。桜の紅色がぼかされて、まるで、雨に溶けているようだ。緑の雨の描写も見事。

御舟の言葉。『本当の美を知るには、本当の醜を知らねばならない。しかし、美醜は比較の問題。感ずる人が頭の都合で勝手に美と感じたり醜と解釈したりする』と。

この絵も私好きなんだよな。2つセット(って言うのか?)の絵なんだケド。『あけぼの』と『春の宵』。あけぼのは、朝やけの中、枝垂れ桜(かな?)の枝にとまる2羽のカラス。どこか切なさがある。御舟は、淡青色の朝鮮色紙を用いたそうな。
春の宵の方は、墨色の背景に散る桜。ハラハラと舞う、桜の花びらが美しい。右上にうっすら三日月。こちらも、やはり切ない絵にも思える。こちらは、淡紅色の朝鮮色紙を用いており、御舟は、紙も色々使って、実験しながら描いていたらしい。技のデパート速水御舟である。
墨ではなく、群青を焼いて黒青色の岩絵の具を自分で作ったりしていたそうな。

『春池温』。鯉の絵だ。金泥の波紋に、墨で描かれた鯉。鯉にはちゃんと重さがあるように感じる。尻尾の辺りがくるりとうねっている。画面左には、梅の花も。御舟は、この絵を描くため、画室に鯉を入れたタライを持ち込みずっと観察していたそうな。

『白芙蓉』。コレも私の大好きな絵。白い芙蓉の花が咲いている。中心に赤い模様(ふかな?)。金の雄蕊も見える。でも、御舟は、この絵で、何故か、これから咲く、生命力漲る蕾を墨色で、枯れた花を白で描いている。コレが不思議で仕方なく、そして、その部分に生と死を感じる。

御舟の絵は不思議なのだ。超絶技巧の写実だと言うのに、写実であればあるほど幻想味を帯び、そして、何処かに闇を抱え、生と死を感じる。死が溶け合っている。何でなんだろう?生活は、全く健全だった御舟なのに・・・。

前述の白芙蓉は、制作途中は「ぽってりと動かせば流れるほどの胡粉がかたまっているだけ」だったらしい。外側から茶墨の滲みが自然に胡粉のところで止まるようになっていたそうなのだが。そして、確かに、中央に咲くメインの芙蓉は、重そうなんだ。胡粉をたっぷり使ったからだろう。

『盆栽梅(未完)』。この絵の制作途中、御舟は腸チフスにかかり、あっけなく、40歳で、その生涯を閉じてしまう。
この絵も不思議だ。まず、妙に横に長い紙。何か描き足すつもりだったのか?俯瞰から捉えた盆栽に、雀が戯れている。御舟は、きっと、この絵にも何か仕掛けをしようとしていたのだろう。今となっては、御舟が何をしようとしていたのかは分からないけれど・・・。

第2会場の方に『炎舞』はあった。重要文化財指定をされいる絵ですね。
朱色を混ぜた墨の色の背景に、仏画に描かれるような炎。その炎の中に蛾が舞い踊っていく。蛾はきっと焼け死ぬだろう。綺麗な羽をバタつかせ、焼け死ぬのだ。蛾の自殺とも言えるし、昇華なのかも知れない・・とも思う。炎の音、蛾の羽が焼け落ちるパチッと言う音まで聴こえてきそうだ・・・。
御舟は、軽井沢の別荘で、ずっとたき火をして、その火を眺めていたのだそうだ。

この絵。不思議なんだ〜。前述したが、絵自体が光っているように思える。ただの墨ではなく、朱色を墨に混ぜて塗ったらしいのだが、当の本人の御舟でさえ「もう2度と出せない色」と言っていたそうな。御舟会心の作だったんでしょうね。

この絵と、白芙蓉はずっと見ていて飽きない。ずっと見ていられる。

お土産は、マイミクさんに日本画の好きな方がいるので、その方のお土産に絵葉書や、自分へのお土産の絵葉書、母のお友達にも絵葉書のお土産を買う。

他にも、小倉遊亀の絵などもあります。
あと、面白かったのが、『山種美術館』のあの字は、安田靫彦が書いたってコト。その書が展示してあった。
10月14日までやっています。御舟が好きな方、院展の絵画好きな方、幻想絵画が好きな方も楽しめるかな・・と思います。
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