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2012年11月02日18:07

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メトロポリタン美術館展　大地、海、空－4000年の美の旅

♪タイムト～ラベルは楽し。メトロポリタンミュージアム～
と言うワケで。東京都美術館で開催中の『メトロポリタン美術館展　大地、海、空－4000年の美の旅』に行きました。チケットはマイミクさんからの頂きものです。マイミクさん、いつもいつも本当に有難うございます。

メトロポリタン美術館。美術館をあまり知らない人でも、おそらく、名前くらいは聞いたコトがあると思う、アメリカは、Ｎ．Ｙのセントラルパークにあるバカでっかい美術館。通称“メット”。因みに、私は、『メット』と聞くと、細野不二彦氏の漫画『ギャラリーフェイク』の主人公、藤田さんを思い出します（笑）。藤田さんが元々勤めていた場所がメット。収蔵品は、集めに集めて200万点だそうな。で、ここから、古代メソポタミア～現代の写真アートまでを、『自然』をキーワードに見て行こう！と言う企画でした。テーマ別で年代別ではないので、最初「何か、バラバラな展示だな・・・」と思った(^_^;)。メソポタミアと、19Ｃの絵画が一緒に展示されてたりするからね。最後まで見終わると、「あぁ～、なるほど。」とは思うのだが。
バルテュスがあって、吃驚でした。しかも、所謂、刺激的でちょっとエロスなバルテュスの少女絵ではなく、穏やかな少女の絵。

東京都美術館は、２年の改装を経てリニューアルオープンしました。バリアフリーになってたよ・・・って、企画展示室しか行ってないんだケド(^_^;)。あと、レストランが増えた！・・・行ってないケド・・・。あとは、劇的な変化はなかったような・・・。

久々に行って忘れてたんですが、都美って広いんですよね・・・。最初の方、人が溜まってたので、説明だけ読んで、後回しにしたら、時間が足りなくなって、駆け足になってしまった。でも、思ったより、混んでいなかったです。人はいますが、キッチキチで絵が見られない・・ってコトはなかった・・と思う。ゴッホのところと、何故か、鳥コーナーが、私が行った時人気だったが。

オーディオガイドを借りたのですが、『リトルチャロ』とコラボしたのもあって、最初こちらを勧められた。きっと、こちらが押しなんだろう。でも、一般用を借りてしまったが。チャロの方は、簡単な英語と日本語で解説があるそうです。

西洋文化における自然ってのは、古典文学との関わりや、芸術家の想像から生む『アルカディア』の牧歌的ヴィジョンが最初は主だったようです。理想化されてるってコトらしい。因みに、アルカディアとは、平穏な田園風景で理想化された概念のコトだそうな。ユートピアとは、また違うんだね。

では、暫し、4000年の歴史の旅にご出立～。

『キャッツキル山地の眺め－初秋』。トマス・コール。文化や国家のアイデンティティの表明としてアメリカの風景を描いた画家・・らしい。薄水色の空に、緑の木々。湖畔には馬が走り、その馬を追う人もいる。水辺で花を摘む少女もおり、遠方には山。本当に牧歌的で、理想化された田園風景。

『風景－「サナトプシス」からの場面』。アッシャー・Ｂ．デュランド。サナトプシスとは、死と言う避けられない現実に直面する人間への道徳的な慰めとして自然の永遠の循環を称賛したもの・・のコトらしい。一見牧歌的な絵に見えます。でも、良く見ると、山は岩山で、断崖絶壁で厳しい感じ。大きな木の下には小さく人骨（頭蓋骨）も埋まる様に描かれている。中央にいる黒い服の人々は、葬列かも知れない。古城や朽ちた遺跡のようなモノも描かれ、『ものの儚さ（ヴァニタスと言うのかな？）』のような、ちょっと寓意が入ってるようにも読める。

自然は、良く、擬人化されて描かれる。『フローラ』。レンブラント・ファン・レイン。この絵、綺麗だったなぁ～。てか、レンブラントって絵、上手いね。今更だケド(^_^;)。フローラは、春・花・愛の女神。その女神が、白いドレープの服を着て、黒の花付き帽子を被り、スカートに花を入れ、右手で差し出すように花びらを持っている。でも、表情は寂しそう・・・。なんでも、10年前にレンブラントは、奥さんのサスキアを亡くしており、この絵は、そのサスキアを投影して描かれている・・らしい。だからちょっと憂い顔なのかな？レンブラントは、この絵をティツィアーノのフローラの絵を見て、着想を得たらしい。ドレープの描き方が見事でね。ベラスケスとかもそうだケド、近くで見ると割と、ザックリ描いてあるんだよ。でも、離れてみると、綺麗なドレープに見えるの。魔法みたいだ。

『パクトロス川の源で身を清めるミダス王』。ニコラ・プッサン。オイディウスの『変身物語』が元ネタ。バッカスに「触るモノが全て金になるように！」と願いをかけたミダス王。確かに、全部金になるようになったケド、食べ物まで金になってしまい、食べられなくて餓死寸前に。ミダス王が「もとに戻して欲しい」と懇願すると、パクトロスの川で身を清めれば元に戻るよ・・と言われる。で、コレは、身を清めてる場面。画面左に「もう勘弁・・・」と言う顔をしているミダス王。画面中央、ミダスの横に全裸の青年が月桂樹の冠をして寝そべっているのだが、コレが、パクトロス川の擬人化だそうな。きっとミダスは、川に「元に戻して～」ってお願いしてるんだね。

で、今度は人々に着目。アダムとエヴァの物語や中世の野人物語では、人物が、葉の冠や動物の皮を見に付けて描かれる。これって、自然物に備わる象徴性を持つ存在としての表れでもあるそうな。

『洗礼者聖ヨハネの生涯が描かれた写本紙葉』。スコットランドのジェイムズ４世の画家。元は、豪華な祈祷書の挿絵だったっぽい。中央に聖ヨハネ。膝の上に本。子羊もいる。で、反時計回りに、キリストの洗礼、説教するヨハネ、ヨハネの投獄・処刑、サロメに渡される首などが描かれている。16.5×11.7㎝の絵に、よくぞ、ここまで細密描写を・・・。顔の表情まで描いてある・・・。これもそうだが、他、タペストリーなども「良く、コレ、５００年も残ってたな！」って思う。大事にされてたんだろうね。

『聖アントニウスの誘惑』。ヘリ・メット・デ・ブレスの工房。小さいながら、結構好き作品。燃え盛る町。魔物も沢山。魔物の描き方が、ちょっとボスっぽいんだよね。

『冥界のアエネアスとシュビラ』。ヤン・ブリューゲル（子）。出たな、地獄のブリューゲル！（ブリューゲルは、お父ちゃんも、子供達もブリューゲルで画家なのだが、「花のブリューゲル」って言われた子と、魔物描くのが得意な「地獄のブリューゲル」がいます）　真っ赤な火の地獄。方や、水（氷？）の地獄だろうか？周りには沢山の死体。群がる群衆。中央に木に縛られた人物。そこに甲冑の男とドレスの女性がいる。この２人が、アエネアスとシュビラだろうね。木に赤い布がかかっているので、芝居の幕のように見え、中央が舞台で、芝居をやっている風にも見えた。ピンスポ当たってる風だったし群衆が観客か。目の赤い怪物は、目からビーム出してるみたいだったなぁ（笑）。

『使者の派遣』。フランソワ・ブーシェ。ロココの画家なので、ガラッと軽やかになります。羊飼いが、鳩にラブレターを託す場面。「愛する彼女に届けておくれ。」そんな感じ。これ、４枚続きの連作で、結果、ハッピーエンドで終わるらしいのだが、他の３枚は行方不明なんだそうな。羊も描かれ実に牧歌的だケド、実際は、キツイ仕事の羊飼いを理想化して描いた物なのだそうな。

『実った大麦のレリーフ』。コレ、紀元前1346～1336年頃の作品らしいよ。大麦が石灰岩に彫られているのだが、麦の髭部分まで掘ってあって細かいし上手い。古代エジプト人は、動植物の観察にたけていたそうだが、きっと、それは、それらが身近なモノだったからだろう。

『鷹』。中世の飾りもの・・なんだろうな。細身のフォルムで恰好良い鷹だった。銅合金で作ってあるらしいが、教会とかにあったのかな？

『狩りの場面を表した皿』。銀板を打ち出した鍍金皿なのだが。狩人の他に動物が描かれ、牛や鹿と一緒に、ドラゴンまでいる(^_^;)。空想上の動物もいっしょくたなのね。後ろを見たら、後ろもちゃんと文様を打ち出していた。手を抜かないのね。

『音楽を奏でる男女の羊飼いのタペストリー』。ミルフルール（千の花）。ラッパ水仙、デイジー、パンジー。羊や鳥などの動物。その中に、男女２人が座ってる。男性はバグパイプを吹き、女性は楽譜を持っているから唄っているらしい。何か、文字が書いてあって、それは、２人の台詞らしく、女性は「草の上で歌を唄いましょう。」と言い、男性は「君の歌声は、僕を魅了する。それでも、僕は仕事をする。」と書かれているらしく、恋愛模様の絵らしいです。コレ、手で織って作ってるんだもんなぁ～・・・。タペストリーって、飾りの意味もあるケド、当時の屋敷は石むき出しで寒かったから、防寒の意味が大きかったらしいです。

『ヤマウズラと小さな獲物の鳥』。ヤン・フェイト。細密描写の猟でとられたヤマウズラの絵。羽の描写が本物みたい。木イチゴも描かれアクセントになってる。こういう獲物の絵は。田舎に地所を持つような有閑な人物の誇示もあったそうな。「狩りが出来る場所持ってますよ。」ってコトだよね。金持ちの見得（笑）。

『歩きはじめ、ミレーに拠る』。フィンセント・ファン・ゴッホ。あ、糸杉の他にも、ゴッホさんの絵って来てたのね。このコーナー、ミレーの絵も展示してあったのだが、ゴッホさんはミレーが好きだったのね。で、コレも、ミレーさんに拠ったもので、農民夫婦を描いたもの。奥さんの前に子供。その子供は、手を差し出した農夫の夫のところへ行こうとしている。全体的に淡い水色で明るいケド、もう、ゴッホタッチの厚塗りうねうね絵でした。でも、明るいので、狂気はまだ感じないね。

次は、動物コーナー。このコーナーの鳥コーナーが密かに人気だった（笑）。キリスト教は、あらゆる種に象徴的な意味を与えるらしく、また、古代エジプトの異教の神を動物として表したらしい。

『カバの頭部』。メソポタミア。紀元前1390～1352年の物。アラバスターらしいのだが、まる～んとした感じのカバで、可愛い。正面から見ると、マヌケ顔で更に可愛い。頭部でこれだけ大きいなら、全体はかなり大きかったんだろうな。でも何故カバ？カバって神様ってワケじゃないよね？？

『猫の小像』。猫と言えば、エジプトだよね。エジプトはプトレマイオス朝のもの。猫は豊穣と多産の女神バテスト女神と同一視された。で、この小像は、中が空洞になっていて、猫のミイラを入れたものらしい。当時、猫のミイラは結構頻繁に作られたそうな。で、この小像の猫は耳飾りもしてるし、胸にウジャトの眼と言う魔除けも描かれているので、バテスト女神への捧げものだったんじゃないか？とのコト。

『ライオンの頭の兜』。金メッキのライオンの頭を模した兜。目にはガラスも嵌っている。ギリシャ神話に獰猛な獣ネメアのライオンってのが出て来るんです。武器も通さない固い毛皮なんだケド、コレをヘラクレスが引き裂いて退治するのね（良く、西洋絵画のモティーフにされる）。で、その毛皮をヘラクレスが甲冑代わりに頭から被った・・と言う伝説があるので、毛皮＝不屈の力や勇気の象徴・・になったそうな。なので、これもライオンの頭。毛並までちゃんと彫られている。彫金やってる人とか分かるだろうケド、コレ、大変な作業だろうね・・・。で、当然、こんな金ぴか兜は、実用ではなく、パレードの時に使用したものであろう・・と言うコトだった。牙も生えてて芸こま。因みに。14Ｃ～16Ｃは、古代風ブームだったそうな。ルネサンスからバロックくらいまででしょうかね。

何故か人気だった鳥コーナー。『ネクタネボ２世を守護するハヤブサの姿のホルス神を表す小像』。ハヤブサ・・・てか、ちょっとフクロウっぽいとも思ったのだが(^_^;)。ハヤブサの足下にネクタボネ２世らしき人物がいる。ハヤブサはホルス神を表すから、王様は神に守られてますよってコトなんだろう。紀元前360～紀元前43年くらいの物。

『福音書記者聖ヨハネのワシがいる聖書台』。ジョヴァンニ・ピサーノ。目立つところにバカでかい鷲がいるな・・と思ったら、聖書を乗せる台だった。鷲が背中に台を背負ってるように見える。威厳があるように作るんだろうね。
他、背中に蓋がついた鳩の形の聖パン入れや、ティファニー製のステンドグラスなどもあった。

次に行くのは、楽園（パラダイス）。パラダイスとは、そもそも『囲われた庭』を意味するペルシャ語らしい。ユダヤ教もキリスト教もこの世の楽園はエデンの庭って言う考え方。栽培された自然。花で満たされた庭。人工的な庭なんだね、エデンって。自然も自分達で作れるぞ！ってのが、パラダイスらしい。ちょっと私のイメージと違ったよ。

『ガラス花瓶の花束』。ニコラース・ファン・フェーレンダール。チューリップや薔薇が飾られた花瓶。縞模様のチューリップが描かれているが、フランドルでブームが起きた品種で、貴重品だったらしい。オランダは、チューリップの球根で、人類史上初のバブルが起きるんだな。チューリップバブル。皆、チューリップに投資して、そして、はじけた。
綺麗な花の絵だケド、テーブルに落ちた薔薇は儚さを象徴。薔薇からの雫もそんな意味があるらしい。ほか、オスマン時代の花モチーフのタイル板があったのだが、コレが、凄くトルコぽかった。青色があると、トルコやイランっぽい・・って思うよね。

ここから急に写真コーナーになる。『フォトグラフ』は『光によって書く』と言うギリシャ語らしい。へぇ～。写真が出来て、絵画も変化するのだが、それは後ほど。『修道士』と言うエドワァール・バルテュの岩壁の写真が気に入ったケド、どうして、修道士って言うタイトルなんだろう？鶏の卵白を塗った印画紙を使用してるらしいのだが、これにより、きめ細やかな写真になったそうな。陰影がクッキリ出ていて綺麗。
杉本博司氏の『ボーデン湖、ウットヴィル』と言う写真があったのだが。湖面と空を画面半分くらいで切り取った写真なのだが、コレが、後に出て来る絵と印象が似ていて、ちょっと吃驚。コレも後ほど。

風景画は、16Ｃに独立したジャンルになる。それまでは、人物画の添え物だった。古典的なアルカディアから自然主義へ移行していくそうな。19Ｃ初頭の欧米では精神的、美学的、道徳的なものが重んじられ、それが、絵にも反映したらしい。

『ピエーヴル川の堤、ビセートル付近』。アンリ・ルソー。ルソーの絵って面白いねぇ。デッサンや遠近法も狂ってるんだケド、そんなコト関係なしに見ちゃう。ふにゃんとした木の枝。中央の黒い塊は何かの影なんだろうか？空には塗り残しのような部分があるし(^_^;)。川の遊歩道の絵なので、散歩する人物もいて、ほのぼの感満載。でも、変！（ゴメン、ルソー）

『緑樹』。デザインは、ジョン・ヘンリー・ダール。織りは、モリス商会のジョン・マーティンの、でっかいタペストリー。栗、どんぐり、洋ナシの木。鹿がいて、狐もいて、狐の横には、雉が飛び、狐の視線の先には野兎が逃げて行く様子が描かれる。上部に文字が書いてあるのだが、モリスの謎かけっぽい詩が書いてあるんだそうな。何でも、西洋梨→彫刻。栗→屋根の重木。カシ（どんぐり）→帆船・・と、切り倒された後の用途が書いてあるらしい。
19Ｃ末の英国。産業革命が起こる。その頃、モリスやバーン＝ジョーンズは、「中世の手工業を見直そう」と言うアーツ＆クラフツ運動に取り組む。で、このタペストリーも、その商品。でも、手作業だから時間かかるし、金もかかるよね・・・(^_^;)。今で言う『ロハスな人』とか『ナチュラリスト』が言いそうなコトだよな・・・って思います。いつの世も、産業が発展すると、精神のゆとりがなくなって、ゆとりをもとうよ！と言う運動が起こるんだな・・・って思うよ。英国は特に、古いものに価値を見出す文化があるしね。

『糸杉』。フィンセント・ファン・ゴッホ。これが今回の目玉作品。日本初公開のゴッホの絵。うねうねした黒緑の糸杉。空は青とピンクで美しいが、やっぱりうねうね。しかも、、晴天なのに、何故か三日月が出ている。うねうね糸杉にちょっと圧倒されてたじろぐ。この絵は、ゴッホが、サン＝レミの療養所へ入院した時の作品。ゴッホは「糸杉はオベリスクと同じくらい美しい。」と言っていたそうな。地中海では、墓地に植えられるコトも多いので、死のイメージが糸杉にはあるらしく、ゴッホも知っていたと。この３か月後（だったと思う）。ゴッホは頭を拳銃で打ち抜き自殺します。草も黄と緑のうねうねぐるぐるで、とにかく、うねってる。もう、ゴッホさん、精神が逼迫して、にっちもさっちっもいかない状態になってたんじゃないかなぁ～・・・。
この絵。ポスターにも使われているのだが、ポスターの絵だと凄さが分からないので、本物を見た方が良いです。うねっと感覚は、ちょっと“来るもの”がありますね。私、ゴッホさんの絵、そんなに好きじゃないんだケド、凄さは十分理解出来たよ。天才・・だったんだね・・・。

次は岩と山がテーマの風景画。まずは『マーセド川、ヨセミテ渓谷』。アルバート・ビアスタット。渓谷の風景。奥に山があり、霧にけぶっている。鈍色の空。下には木立ち。馬もいて、先住民らしき人物も描かれる。湖には小舟も浮かんでいる。ヨセミテなんて行ったコトないのに、「あぁ、こんな風景なんだろうなぁ」と思う。で、この風景画。前述した写真の影響が大きい絵画なんだそうな。ビアスタットは、ヨセミテの写真を見てヨセミテ渓谷に来たんだそうな。政府の調査隊と西部を訪れ、デッサンして、写真も沢山撮ったらしい。この絵は、最初に構えたキャンプ地から見たものに着想を得たそうな。
写真に影響とあったが。この絵が、細密絵画で写真みたいなんだ。特に後ろの山。離れると、大きな写真みたい。

『夏』。バルテュス。バルテュスと言うと、ちょっと過激で刺激的な少女の作品を思い浮かべません？『ギターのレッスン』は、女教師が少女に性的虐待してる絵・・だし（そうよね？）。でも、コレは、そうじゃないの。バルテュスが好きだったと言うスイスの山なのだろう。灰色の山並み。緑の草原に、少女が寝そべっている。少女は赤い服と黒いスカート姿で杖を抱えて眠っている。疲れたんだろうか？色彩も明るく、穏やかで、思わず「バルテュスこんな絵も描くんだ！」と吃驚した。この絵。どうせ、ポストカードになってないだろう・・と思ったら、なっていた。買っちゃったよ(^_^;)。

ジョン・フレデリック・ケンセットの『海上の日没』と言う絵画があったのだが。この絵の構図が、前述の杉本氏の写真と同じような水平線の構図で、面白いなぁ～と思った。人って、こういう水平なモノに美を見出すんだろうか？

『日の出』。ジョージ・イネス。全体的に暖かなな茶と黄色の絵。ファンタン＝ラ・トゥールのように、ぼやんとした感じで、木立ちの中に人が立っている絵。

『トゥーライツの灯台』。エドワード・ホッパー。アメリカの国民的画家だよね。ホッパー。何処か都会の孤独を感じさせる絵でお馴染み。この絵は灯台の絵。黒い屋根の灯台守の小屋。下に黒いヤマモモの茂み。突き抜ける青空。たなびく２すじの雲。ハイライトがくっきりついていて、灯台はスクと建ってるケド、何処か孤独だ。ホッパーは毎年このエリザベス岬で過ごしたらしい。パリから帰って来たら、アメリカが粗野で生っぽく思えて、凄く嫌になって、ニューイングランド州のこの場所を良く訪ねたんだそうな。この「アメリカ粗野で嫌」感覚から脱却するのに、ホッパーは10年かかったんだって。その辺りもこの絵の孤独感に繋がるのかな？

最後は水の世界がテーマ。古代バビロニアの『カエルの分銅』が可愛かった～。丸いカエル。分銅ってアヒルの形が一般的だケド、カエルやスフィンクス、ハエなんてものまであったらしい。紀元前2000～紀元前1600年の物。小さいのに4000gもあるらしいよ。石だからだな。

『水の生物の大皿』。ベルナール・バリッシー派。飾り皿なんだろうケド。。皿の真ん中に、蛇がド～ン！皿の周りに、リアルなカエル、トカゲ、魚、海老、貝などが沢山あって、ぶっちゃけ、気持悪いっ！コレ、どういう気分の時に飾るんだろう？？何か、もう、盛り過ぎだし、グロテスクだし・・・。まぁ、吃驚させるのには良いけれど・・・。

ティファニー社の『カエルモチーフの盆』は、和風。銀盆なのだが、和風の月と水辺のカエル。蜻蛉もいる。ちょっと配置は琳派っぽいし、腹を抱えて笑うカエルは鳥獣戯画っぽい。しかも、表面は鎌倉彫りのような凸凹加工。ジャポニズム・・ってやつなんだろうな。

海に目を移すと、おおう！カナレット。『ヴェネツィア：サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂』。右に聖堂。彫刻の細密描写も丁寧。行きかう人々。運河には舟。遠方には街並み。画面の半分は青空だ。私の中で、イタリア風景画＝カナレットです。

で、先だって沢山見た、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーがここにも。『ヴェネツィア：サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む』。あら。くしくも、カナレットと同じモチーフ描いてる。しかし、思わず思ったコト。「空が青い！ターナー、青空描けんじゃン！」　先だって見たターナーが、やたら鈍色の空の作品ばかりで、イタリアすら鈍色の空だったので、思わすこの感想(^_^;)。画面全体も明るい。運河を渡る舟。右に聖堂。左にサン・マルコ広場。帆船の帆の色合いも華やかで美しい。水面に映る人物や舟も美しいよ。
こんな明るい絵を描くのか、ターナーも！と思った。と、同時に、英国って、ホント、曇天なんだろうな・・って思う。

ジョン。ジンガー・サージェントの『アルプスの小川』。水辺の岩の見え方が変化する様子を、ザックリとした筆致で描いたもの。何処からが水面なのかイマイチ分からないのも面白い。

他、モネやルノアール、ゴーガンなどの絵もあります。
お土産は、ポストカード５枚。4000年の美の歴史を知りたい方は、行ってみるのも一興かと思います。

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