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2012年08月15日11:25

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解糖系とミトコンドリア系 その2

 僕たち人間の細胞は、酸素を用いずにエネルギーを生み出す解糖系と酸素を用いてエネルギーを生み出すミトコンドリア系(クエン酸回路+電子伝達系)のふたつを備えています。解糖系1に対してミトコンドリア系は18倍ものエネルギーを生み出しますが、解糖系は危機的状況における瞬発力の源となり、ミトコンドリア系は持久力やスタミナが求められる状況に対応します。

 安保さんは、これまで自律神経と内分泌系と白血球の関連について下記の通りに描いてみせてくれていました……

1) 交感神経優位→アドレナリンの分泌増加→顆粒球活性化
2) 副交感神経優位→アセチルコリン分泌増加→リンパ球活性化

 ストレス過剰の現代人は、どうしても1)のタイプの交感神経優位型に片寄りがちなため、ガンや糖尿病などさまざまな慢性疾患や陥りやすいので、副交感神経が働きやすい環境を工夫する必要があるという論点でした。

 ……『人が病気になるたった二つの原因〜低酸素・低体温』では、この図式に新たに細胞での二つのエネルギー産生システムである解糖系とミトコンドリア系が加わりました。神経・内分泌系・免疫系の相関図に、解糖系とミトコンドリア系という細胞内レベルでの項目が加わったことは画期的だと思います。これで異なるスケール間の相互関係の橋渡しにひとつの先鞭がついた感じがします。

 僕はかねてより細胞内小器官である核染色体とミトコンドリアとリボソームの三位一体的な構造についてお話してきたのですが、細胞内でのエネルギー産生における解糖系の役割については十分に意識が届いていませんでした。それが安保さんによる、ミトコンドリアとの対比における解糖系の働きについて知ることで、今まで不明だった領域のベールがまた一枚はがれた感じがしています。

 なによりも「細胞というのは低酸素状態では、先祖戻りをして、無酸素状態でも生き延びようとしてガン化し、解糖系を使って猛烈に分裂増殖をする」というオットー・ワールブルク以来の発見を再発掘した功績は大きいと思います。

 ところで、ミトコンドリアには核染色体以外の独自の遺伝子をもっており、それは母系遺伝するということは講座でもよく話をしてきました。また、生命エネルギーの根源を提供する器官であるだけでなく、細胞の死の引き金を引く器官でもあることから、赤い大地の女神のような存在であることを伝えて来たのですが、安保さんも同じような印象を抱かれているようです。


 以下、『人が病気になるたった二つの原因〜低酸素・低体温』(第五章:意外に知られていない男女の違い)より引用

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 いずれにせよ、ミトコンドリアが母系の要素が強い、とても女性的な器官であることが見えてくるでしょう。これに対して、これから検討していきますが、分裂を繰り返す解糖系細胞は非常に男性的です。なかでも精子は、卵子とは対照的に、ミトコンドリアが極端に少ない解糖系で生きる細胞です。

 ミトコンドリアが母性の器官であることは、卵子の働きを調べていくことでも確認することができます。成熟したひとつの卵子には、じつに10万個ものミトコンドリアが存在するといわれています。ミトコンドリアが多く集る赤筋、あるいは心臓や脳jでは、一細胞あたりのミトコンドリアの数は4,000〜5,000ほどですから、これをはるかに上回る、膨大な数にのぼることがわかるでしょう。

 「
 卵子は酸素が少ない胎生期に分裂を済ませてしまうため、女性は生まれた段階で、一生使う分の卵子を確保しています。この卵子が温められながら成熟していき、初潮を迎える15歳前後の時期までに、ミトコンドリアを10万個にまで増やしていくわけです。以降、女性には毎月一回の割合で生理が訪れ、こうして成熟させた卵子を一つづつ排卵していきます。閉経の時期が50歳頃とすると約35年、一生うちにだいたち300〜400個の卵子を使うことになります。

 一方、この卵子と合体する精子は、ミトコンドリアがほとんどなく、解糖系エネルギーを使って分裂を繰り返します。具体的には、一つの精子のミトコンドリアの数は100個前後しかありません。ミトコンドリアの持ち込んだ分裂抑制遺伝子が少ないため、分裂ができるといってもいいでしょう。

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 この一文を読むまで、僕は卵子と精子のミトコンドリアの量がこんなにも違うことを知りませんでした。成熟卵子のミトコンドリア100,000:精子300~400……もうこれ以上に分裂増殖する必要のない卵子には、たっぷりのミトコンドリア……億の単位で増殖してゆかなければならない精子は少量のミトコンドリアで解糖系を優位に使う……なるほどです。

  以下、再び『人が病気になるたった二つの原因〜低酸素・低体温』(第五章:意外に知られていない男女の違い)より引用します。

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  分裂することで生産された多数の精子→解糖系
  温めて成熟することで作られた卵子→ミトコンドリア系

 この二つが合体して女性が妊娠すると、出産までの十月十日は、ひたすら分裂を繰り返す解糖系のエネルギーの時代です。意外に思うかもしれませんが、胎児の分裂の過程はガン細胞の分裂と条件がとてもよく似ています。これまで繰り返してきたように、細胞分裂は低酸素・低体温の環境下で進むものだからです。

 もちろん、肝心の母体が低体温になってしまうわけにはいきません。そのため胎児は、子宮内着床とともに、胎盤を介して酸素分圧を四分の一にして低酸素の条件をつくり出し、分裂を繰り返すのです。この酸素分圧四分の一という低酸素の世界ではミトコンドリアの働きが停滞するため、分裂の条件を獲得することになるのです。

 ……胎児の成長とは受精卵の細胞分裂を意味します。具体的な経過を追ってゆくと、受精直後は卵子が持ち込んだミトコンドリアが多いため、受精卵の分裂はゆっくり進みます。それが二個の受精卵が四個に、四個が八個にという感じに増えていくうちにミトコンドリアは減ってゆき、分裂スピードは増していきます。そして十月十日がすぎるころに分裂がピークになり、たった一つだった受精卵が2,000〜3,000グラムの胎児になるまで成長するわけです。

 この時点では、ミトコンドリアはほとんどなくなってしまうほど希釈されていますが、オッギャアと生まれ外界の空気に触れることで酸素が一気に入ってきて、それとともに細胞の分裂が抑制され始めます。こうして自前の肺呼吸が始まり、徐々にミトコンドリアが増えてゆくことになるのです。

 胎児の細部に備わった解糖系とミトコンドリア系の働きが、見事なまでにコントロールされていると思いませんか? 胎児期にピークだった分裂は、この世に生を受け、ミトコンドリアが増え始めてからもゆるやかに続いていき、先ほどもお話ししたように、心臓や脳、赤筋などは3歳頃までに分裂を繰り返し、大きくなっていきます。そして、大人の細胞の数に達したところで、分裂はピタッと止まります。まさに「三つ子の魂百まで」という言葉の通り、この3歳までに形成された組織・器官が、その人の一生の土台となるのです。

 精巣内の精子や皮膚組織のように、ミトコンドリアが少ない場所は、たえず分裂が続いていきますが、体全体では徐々にミトコンドリア系が優位になっていき、20歳を迎えるころを期に、解糖系とミトコンドリア系の調和の時代が始まります。

 
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 確かに、ミトコンドリア系は女性的であり、解糖系は男性的と言えないこともないと思われます。無酸素状態の地球を生き抜いた単細胞生命を男性とすれば、その後地球を覆い尽くすことになる「先住単細胞生命にとっては猛毒である酸素」をエネルギー換えるすべを得、先住生命との共生を選択した新生生物ミトコドリアは女性的……

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