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2012年03月15日19:22

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浮世絵−国芳から芳年へ

町田市立国際版画美術館で開催中の『浮世絵−国芳から芳年へ。』に行きました。町田市立国際版画美術館は、世界でも珍しい、版画専門の美術館でございます。私のお気に入り美術館で、隠れた名美術館だと思うのですが、行は良い良い帰りは恐いの、心臓破りの急坂があります。「あれを上るのかぁ〜・・・」と思うと、二の足を踏む・・・
この美術館って、昔から入館料って、600円でした?値段が上がったのかな?昔は400円だった記憶が。それとも、企画によって、値段が違うのかな?お客さん入りそうな企画の時は、値段が上がるとか。

因みに。国芳と芳年と言う、私の中では、夢の共演だったのですが、お客さんは、そんなにおらず、逆にゆっくり見られて嬉しかったのですが、「皆、六本木の国芳展には行くくせに、こっちは来ないのかよ!」とも思いました。てか・・・ひょっとして知られてないのか?やってるコトを。

では、気になった絵をざっくり紹介。

そもそも、歌川派ってのがいて、その派閥の中に、国芳さんや、芳年さんはいるんですが。「そもそも歌川派って何?」と思うと思うのですが、豊春って人が歌川派の祖らしい。んで、豊国、豊広の活躍により、寛政年間末以降、最大派閥になったんだってサ。狂歌師の梅谷鶴寿が、生涯に渡り公私ともに歌川派を支えていたらしい。へぇ〜。パトロンってコトでもないのかな?狂歌師だし。サポートメンバーみたいなモノ?鈴木春信における、平賀源内みたいな感じかな?知識面でサポートみたいな。

で、まずは、国芳の『唐土二十四孝』。因みに、私、このシリーズの絵、知りませんでした!国芳好きなのにね!!基本、国芳さん、武者絵と戯画と妖怪画が好きなので・・・。ごめんよ、国芳。

このシリーズは、中判なので、皆が「浮世絵」って言って思い浮かべる大判に比べて小さい判です。中国に伝わる孝行の話を元に描いたモノらしい。で、陰影がついてるから、ちょっと妙〜な印象を受ける錦絵だと思う。この頃、西洋から銅版画が入って来ていて、新しモノ好きの江戸の人は、もう、それを見ていて、国芳も「西洋画が本当の絵だ!」と言っていたそうなので、おそらく、その影響。

『楊香』。虎に襲われた時、楊香が「父だけは助けて下さい」と天に祈ったら、虎は逃げて行きました・・と言う話が元らしいのだが。虎が猫っぽいんだな。

『董永』。貧しくて父の葬儀代が出せない孝行息子、董永の元に天女が現れて、絹織物を作ってくれた・・と言うお話らしいのだが、天女と言うより、ちょっと天使っぽいです。天使が飛翔してるみたい。コレも、西洋絵画の影響かな?

『王裒(おうほう)』。母の死後も雷から守るためにお墓へ急ぐ孝行息子。でも、着てるモノが、蓑笠で、日本人ぽいぞ(^_^;)。でも、雷は、国芳の描くギザギザの恰好良い雷だ。

これ、基本、孝行の話がベースなのだが、「その話、本当に孝行の話なのか?」と捻くれ者の私は思ってしまう話も多数ある。

『郭巨』。貧しい郭巨が、母を養う為、子供を犠牲にしようと穴を掘って埋めようとしたら、そこから黄金の釜が出てきました。うん、一見良い話っぽいケド、子供穴に埋めようとするって・・・。コレ、儒教文化なのかな?親優先って、儒教の考え方よね?

『呉猛』。父が夏の夜にぐっすり眠れるように、自分が裸になって、蚊に刺されました。・・・マヌケじゃね?いや、孝行だよ?孝行とは思うケド、他に方法なかったんか!・・・って思う。絵も、それに準じて、父親の横で、でっかい団扇みたいなの持って、蚊を追い払ってる子供の絵なんだケド・・・。

『蔡順』。甘い桑の実だけを母に食べさせようとした蔡順を見て、盗賊も感動しました。と言うお話。蔡順君の喜び方がマヌケだ。「わ〜い\(^o^)/」と喜んでるのだが、オマエ、テンション上がり過ぎだろう!とちょっと言いたい(笑)。

『廋黔婁(ゆきんろう)』。胸騒ぎがして、父の発病を知り、急いで故郷へ戻った・・と言うエピソードなのだが、馬に乗ってる男は、落ち込んでる風なのに、何故か馬は「へへ〜ん」と言う顔をしている(^_^;)。

『黄廷堅(こうていけん)』。沢山の召使いがいた黄廷堅だが、母の下の世話は、自分がやった・・と言うエピソード。尿瓶の尿を川に捨ててる絵なのだが、尿が、「そんな出ますかね?」てなほど、大量に描かれている。横にお母様が寝ているが、見たところ、結構なお年に見えるのだが、それで、こんな大量な尿を?(それとも溜めてた・・ってコトはないよなぁ〜・・・尿瓶だもん・・・)

で、国芳とライバル&門人たちコーナーになった。

役者絵の三代豊国、武者絵の国芳、名所絵の広重・・と江戸では専らの評判だったらしいのだが、版元の依頼を受け、連作や、1枚の絵の共作をするコトもあったらしい。コラボだ、コラボ。

『小倉擬百人一首』。小倉百人一首の歌意別の何かになぞらえる・・と言う企画。今で言うと、元ネタがあるパロディみたいなモノかな。
国芳が51図、広重が35図、豊国が14図担当。1〜50までは、上部にタイトルと名前と和歌があり、51以降には、上部にタイトルはあるが、扇形の中に、歌人の名前と和歌と肖像画が描かれている。

『陽成院』。本歌の『恋ぞつもりて・・』の恋を鯉に変換して、鬼若丸の化け鯉退治の絵にした。化け鯉デカっ!鯉に斬りかかる鬼若丸。

『凡河内躬恒』。本歌の『しら菊の花』から、江ノ島の稚児ヶ淵で建長寺の自休さんと心中した白菊丸の霊を連想。桜姫東文章ですな。美少年の白菊君が、髑髏を口に咥えて海の中から石碑(なのかな?)を持ち上げて登場する絵。コレ、綺麗〜。着物も菊だね。

『春道列樹』これは、累の話だ。与右衛門は、醜い累と財産目当てに結婚。鎌で累を殺して川に捨てるのだが、まさに、その場面。鎌を振り上げポーズをとる与右衛門。足元には籠が転がり、川には、おそらく、累なのだろう・・・女性の着物が見きれている。国芳は、紺屋の息子だったから、相変わらず、紺色の使い方が上手い!

『大中臣能宣朝臣』。コレは、四谷怪談の場面になっている。恋の激しさを詠った歌なので、お岩が、化け提灯となって、仁右衛門(伊右衛門)の目の前に現れた場面。腰を抜かす仁右衛門。

広重の絵もあった。
『素性法師』。本歌の『長月のあり明の月』から、月よに攫われた梅若丸(お能の隅田川ね)を連想。美少年・梅若の袖をひっぱる、信夫そうた。

『源重之』「くだけてものをおもふ」から、皿を割ってしまったお菊を連想。牡丹燈篭ですな。お菊が、袖を噛んで悲しがってる横で、この家のお嬢様・・かなぁ〜・・が、すげえ馬鹿にした顔でお菊を見てるのが凄い。「アンタ、やっちゃったねぇ〜。あぁ〜殺されるよ、し〜らないっ!」みたいな感じ。ムカつく!(苦笑)

豊国(国貞)の絵もあったのだが、どうも、国芳と豊国は、性格が正反対だったらしく、国芳は、一方的に、豊国を嫌っていたそうな。「馬が合わなねぇ」ってやつでしょうかね?

他、歌川派の絵では、歌川芳家なんて絵師がいたが、国芳の彩色担当だったらしいのだが、軽率で国芳に何回も破門されてるそうな(^_^;)。最後、誤って井戸に落ちて死亡って・・・。確かに軽率っぽい。死因も軽率が元っぽい。

あと、芳幾は、江戸っ子には珍しく、貯蓄にいそしんで、悪評を得たそうな(笑)。あぁ〜、江戸っ子って「宵越しの銭は持たねえ!」が信条だもんなぁ〜。財テクやると、嫌われちゃうのか(^_^;)。

で、ここから、私が愛してやまない、芳年コーナー!!
もう、諸々堪らん。今回、かなり初期のモノから、後期の月百姿まで展示されてて、スゲエです。

『山崎大合戦之図』。もう、合戦の大スペクタクル!馬に乗る高山右近が恰好良い〜!!

で、ここからは、芳年フリークにはお馴染み『和漢百物語』。妖怪や魑魅魍魎の絵がいっぱいよ〜\(^o^)/わ〜い。

『貞信公』。藤原忠平のコトを、貞信公って言うらしい。で、その忠平を御簾の中からじっと見つめる鬼。それにビビらない忠平。でも、この鬼、マヌケ顔であんまり怖くないよ。

『清姫』。芳年の中でも目茶目茶有名な絵。川から上がった濡れ髪の清姫。美形の坊主・安珍を追って来たのだ。今回嬉しかったのは、何と、清姫の下絵の展示があった。髪の毛の細かい書き込みがスゲエ。でも、摺りの方では、比較的、ザックリ処理をしてるようにも見える。それとも、摺ってるうちに、版木が摩耗したかな?着物の柄も細かく下絵に描いてるのね。下絵の本物は初めて見た。

『田原藤太秀郷』。竜宮城でのムカデ退治です。弓をひきしぼる藤太。横で、ニヤリって顔で笑ってる乙姫様がちょっと怖いぞ!

『登喜大四郎』。古寺を訪れた大四郎は、多くの化け物に遭遇するのだが、目がイっちゃった大仏の化け物が気持ち悪い!(笑)大仏「どっか〜ん」ってポーズをしてるように私には見える。大仏の腹にも顔。おそらく、こちらが本体なのだろう。(大仏に物の怪が憑りついてるってコトな)

『宮本無三四』。天狗の羽を今まさにバッサリ斬り落とした武蔵。刀の軌跡が描かれていて、その軌跡は朱・・つまり、血っぽく描かれてるのが、芳年っぽいよね。

ここからは、芳年のやはり有名シリーズ『美勇水滸伝』。妖術使いシリーズですな。

『将軍太郎平良門』。良門は、蝦蟇使いとして有名ですが、ここでは、蜘蛛の妖怪を操ってます。蜘蛛がね・・蜘蛛がね・・・可愛いの!!この蜘蛛欲しい〜!ペットにするよぉ〜。

『白縫』。私の超お気に入りの血みどろ絵、いっくよ〜!!
高らかに「オホホホホ〜」と笑う白縫。その前には、杭に縛られ、体中に五寸釘を打たれて血みどろになっている男。この男、白縫の旦那を殺したので、その逆襲なのだが、これ・・・おそらく、男は、まだ死んでないよね?いたぶってるところよね?座って笑う白縫の嘲笑が聞こえて来そうな絵なんだよ。女って・・怖い!

『魁題百撰相』。コレも、芳年の有名シリーズ。因みに、魁題→解題。百撰相→百面相。らしい。もじってるのね。表向きは、歴史上の戦場だケド、どうやら、芳年の念頭にあったのは、戊辰戦争だったみたい。当時は、江戸以前の人物設定にしないと、江戸期のコトは描けなかったのです。でも、見てる人は分かるんだよ。

『森蘭丸』。言わずと知れた、信長のお小姓。美少年蘭丸が、槍を構えてる絵。額や腕に血は描かれてるが、芳年にしては、爽やかムードの血みどろ絵なのは、描かれてる対象が美少年だからかな?

『滋野左ヱ門佐幸村』。真田幸村です。負傷した血みどろの兵士(家臣であろう)を抱き寄せ、水を飲ませてる絵・・なんだケド。こんなんズルいは!!
この絵を見ると、ど〜〜しても、幸村「死ぬな!今水を!」 兵士「いいえ。殿。殿の腕の中で死ねるのなら、本望でございます。」と言う脳内アテレコが私の中で開始されます。
こんな時、「あぁ、私は、本当に、歴女の腐女子なんだな。」って思うんですが。
あと、幸村は、杯で水を飲ませているのだが、「もう、いっそのこと、口移しで飲ませんかい!」と思ってしまう。何か・・・もう・・ごめん、芳年・・・。白い着物に真っ赤な血は、本当に美しく、色っぽい。

『鞍馬山僧正蹊牛孺麿撃刀練麿之図』。ようは、牛若丸が鞍馬山で天狗に稽古つけてもらってる絵。もう1枚牛若丸の絵があって、こっちは弁慶と戦ってる『義経記五条橋之図』。京の五条の橋の上〜♪ですな。
弁慶の攻撃をひらりとかわす、美少年の牛若丸。中央には月。背景の山の緑や灰色の配色も美しい。
どちらも3枚続きの大判絵。『鞍馬山〜』の方、1番右端と真ん中の妖怪の境目が合ってないような気もするのは気のせいだろうか?(でも、木は合ってるんだよね)木の棒を持って、牛若丸は天狗と剣術の稽古をしており、右端には、ボスの大天狗。牛若丸のトレーナーってところでしょう。

で。お次は『大日本名将鑑』。太古の神話から、江戸初期までの神々や武人達・・つまりは、ヒーロー&ヒロインですな・・・のオンパレード。

『大将軍田道』。仁徳天皇の時代に蝦夷に敗れて死んだ田道将軍は大蛇の化け物となり、その後も蝦夷を困らせた。これは、その蛇体変化の田道将軍の絵。灰色の蛇が、田道の身体に巻きついている。

『弼宰相春衡』。春衡は遣唐使として派遣されて行方不明になった父を探して中国へ渡り、生きながら灯台鬼になった・・と言う話が元らしいのだが、コレ、絵で見るとマヌケだよ。頭に蝋燭のっけてるオッサンの絵なんだもん(^_^;)。

『贈正一位菅原道真公』。この絵も大好き。雷神になった菅原道真だが、これは、今まさに、雷神にならんとしている場面・・と思う。道真公の周りには、稲妻がまとわりついている。

ほか、美人画などもあり、私はあんまり。芳年の美人画は好きじゃないんだが、風俗三十二相の『にくらしさう 安政年間名古屋嬢之風俗』は、「もう、やあね!」みたいな感じで、誰かを叩こうとしてる町娘の描写が可愛かった。

『新形三十六怪撰』シリーズも、妖怪画。芳年後期の妖怪画ですね。もう、明治も半ばだ。
『蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒図』。は、まぁ、タイトルのままだが。仁王を投げ飛ばす土岐元貞の絵だが、甲冑の模様がえらく細かい。コレ、彫るんだと思ったら、彫師の腕もスゲエ良かった・・ってコトだよね。

『地獄太夫悟道乃図』。私のお気に入りの絵です。地獄太夫は、室町時代の遊女なのだが、一休法師と問答して悟りをえるのだが、太夫の後ろのうっすら浮かぶ骸骨の描写が頗る良い。あと、着物の空押しね。コレは、印刷だと出ないんだぁ〜。本物見なくちゃね。

『朝野川晴雪月 孝女ちか子』。投獄された父を許してもらう為、祈りながら川に身を投げるちか子。着物のひらりとめくれた感じがとても美しいのです。

そして、最後は、『月百姿』。月にまつわる100枚の絵のシリーズだ。

『名月や来て見よがしのひたい際 深見自休』。侠客の自休さんが粋に、月をバックに立っているのだが、着物の柄がガーベラみたい大振りな花でとてもモダン!

『月のものくるひ 文ひろげ』。何度も読み返した手紙がボロボロになって宙に舞う。女性は放心状態のよう・・・。哀しく美しい絵。

最後の絞めに。年景が描いた芳年の肖像画があるのだが、その絵の芳年は、とても優しそうなイケメンで、とても、発狂死した人には見えないんだよなぁ〜・・・・。

お土産は。芳年のポストカードは、前に来た時全部買っちゃったから(^_^;)、ウォルター・クレインのグリーティングカードや、クリアファイルを買った(半額セールをやっていた)。あと、銅版画のプリントがされた、恰好良いデザインのペーパーバックも買った(280円が、これまたセールで100円だった)。葉書は、マックス・エルンストを買ったよ。

この展示は、4月1日までやっています。芳年好きには堪らないと思うので、心臓破りの坂を根性で越えて行ってみて下さい。
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