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2012年03月03日00:26

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新常識

前回に引き続き常識話をひとくさり。

 常識とは、その時代の社会人が一般に持つべき知識のことですが、それは永遠普遍のものではなく、時代が移るとともに変化していきます。しかし、常識というのは無条件に与えられる公理(論証がなくても自明の真理として承認される根本命題)のような印象があり、ややもすると固定観念として植えつけられ、変化に対応できなくなるきらいがあります。アインシュタインは「常識とは、18才までに身につけた偏見の寄せ集めのことである」と言っています。言い得て妙ですね。歳をとると、長年刷り込まれた常識を新たにするのはなかなか難しく、新常識に馴染まない態度は周囲から頑迷固陋と煙たがれることになりがちです。当人だけがかたくなに古い常識に固執しているだけならまだいいのですが、その人が社会に関わっていて少なからぬ影響力があったりすると、周囲の人間にとってはけっこう迷惑な話となります。若い時の世間知らずは許されますが、齢を重ねた常識知らずは、そういった意味で罪悪とも言えるでしょう。気を付けたいものです。
 例えば、ちょっと前までは子供に対して、「マンガばかり読んでいるとバカになる」と大人は叱りつけたものですが、今やマンガ・アニメは日本の文化政策の目玉として「クールジャパン」と世界に誇っています。バカになるどころの話ではありません。だいたい今の子供はゲームに忙しくてマンガをあまり読みません。マンガを読んでいるのはむしろ中高年の大人の方で、彼らは子供の頃からマンガに浸っていたので、マンガ的表現作法に慣らされています。そのため、それが現在の小説や映画といった、これまで上位にあったとされる表現にまで影響を与えているという現象さえあるのです。未だに「マンガは子供の読むもの」と思っていたら、それは常識知らずとバカにされますのでご用心。

 マンガに限りませんが、暗い所で本やテレビを見ると目が悪くなる。というのは、かつては常識のように言われていました。が、今はそれが医学的根拠のない思い込みだったことがわかっています。目が疲れるのは確かですが、それが近視の原因ではないのです。ご存知でしたか。

 歯の磨き方に関しては、常識はよく変わります。昔は歯に対して縦に掃くように磨く「ローリング法」と呼ばれる磨き方が、歯の隙間の歯垢を落とすのに良いと教えられたものですが、今は「スクラビング法」や「バス法」と呼ばれる、一本一本の歯にブラシを小さくこすりつける磨き方が良いとされ、子供たちにしつけられています。また、歯磨きのタイミングの常識も変遷しています。かつて、長らく起床時の目覚ましに洗顔と歯磨きをするのが習わしだったのが、朝の歯磨きより夜の歯磨きの方が重要と、常識が改められました。その後、寝る前や起きてすぐではなく、歯垢がつく三度の食事の後すぐに磨くべきと、またも常識が変わります。しかし、今ではそれも誤りであることが歯科医学界では常識です。食後すぐは、食べ物によっては口腔内が酸性に傾き、その酸が歯のエナメル質を柔らかくしています。そんな時にブラシをかけたら歯が磨り減ってしまうのです。歯垢のphの変化を表すステファンカーブというグラフがあるのですが、それによると食後30分後には唾液によって口内は中性に戻るので、歯磨きはその後にするべきなのです。更にいうなら、歯垢自体が酸性に変化するのは40時間を経てからなので、直ぐに取り除く必要はなく、歯磨きは一日一回寝る前に念入りに一回やれば良いのです。それ以外は、朝起きた時うがいをして口内を清潔に保ったり、お茶のようなアルカリ性の飲み物を食後にとる方がよほど虫歯予防になるというのが、歯科医学の世界では常識となっているのです。

 ケガをした時、消毒してガーゼや包帯で傷口を覆う手当も、今は誤りとされます。消毒剤はばい菌だけでなく、傷を治すのに必要な細胞まで殺してしまうので、傷口は水でよく洗い流すだけで十分。また傷の治癒には滲出液と呼ばれる細胞成長因子を含んだ体液が重要なので、それをガーゼで吸い取ってしまっては逆効果。常に滲出液で湿った状態を保つ方が治りも早く傷跡も残らないのです。

 風邪をひいたら風呂に入ってはいけないというのも、今では非常識です。外風呂しか無かった昔は、風呂あがりに湯冷めしてしまうのでそんな常識がまかり通っていましたが、体を温め発汗を促す風呂が風邪に悪いわけがなく、風邪気味の時はゆっくり風呂に入ってすぐに横になって休むのがなによりなのです。ただし、熱が高く体が弱っている時はダメ。特に熱い湯に肩まで浸かるのは心臓への負担が大きく危険です。リラックスさせると言われる入浴も、実は一概に体を休めるとは言えず、案外スタミナを消耗するものだということが今や新常識となっているのです。

 風邪といえば、症状は似ていても風邪とインフルエンザは違う病気だというのは、今ではだいぶ世間に認知されてきました。かつてはその混同により多くの犠牲が払われました(特にスペイン風邪の時など)。それでも未だインフルエンザに関しては常識が定まらず、色々な説が飛び交っています。そんな中あまり迂闊なことは言えませんが、ワクチン接種は全く有効ではないとか(WHOが「インフルエンザワクチンで感染の予防はできないし、有効とするデータもない」とはっきり言っています)、解熱剤で無闇に症状を抑えることが脳に重篤な副作用をもたらすという説もあり、現行日本でとられているワクチンやタミフルといったインフルエンザ対策が、世界の常識からは外れてきているというのも事実と言えるでしょう。

 ケガや病気といえば病院ですが、病院での携帯電話の使用は、精密な医療機器に影響をあたえるのでご法度というのが常識だと、今でも思われているようです。電車での携帯使用も、隣に座る老人のペースメーカーが誤作動する危険性があるなどと真しやかに言われますが、それらは微小な可能性に対する杞憂であって、実際にはそのようなことが無いことは、10年も前から総務省の度重なる調査で実証されているのです。それら機器を2センチ位まで近づけたらちょっと影響があったので、それに10倍の余裕をを上乗せして22センチ離せば問題なしというのが、総務省の検証から導きだされた結果です。つまりペースメーカーをつけた人が自身で携帯を使っても、ほとんど危険はないということです。そうアナウスされていても、東日本大震災の瓦礫受け入れを拒む人たちのように、かたくなに危険視する人たちがいて、未だに病院での携帯電話使用は蛇蝎の如く忌み嫌われています。安全マージンをとることは大切ですが、そのあまりコンビニエンスな機器の使用を禁止するというのは行き過ぎた反応です。そんな常識は改めるべきであり、欧米ではすでにその方向にあるようです。

 このように医学関係で常識がコロコロ変わるというのは、我々一般庶民からすれば迷惑な話なのですが、逆に見れば、それだけ斯界が常識に囚われず真摯に現実に向き合い、研鑽を重ねている証拠ともいえます。我々も面倒臭がらず、新常識を常に意識し取り入れていきたいものです。
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