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2011年12月09日08:39

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情報弱者・情報強者

 交通弱者や災害弱者のような、社会的に制約や疎外を被る少数派の人たちを「社会的弱者」と呼びますが、近頃そこに「情報弱者」という分野が加わったようです。

 つまり、情報を享受・活用できない(しない)人は、社会的な弱者としてカウントされるわけです。具体的には、テレビや新聞はもとより、インターネットや携帯電話などによって常に外部からの情報を受け取る事ができず(事をせず)、なおかつ自らも発信できる能力を持たない(発信しない)ような人のことを「情報弱者」と呼ぶようです。一般にデジタルディバイド(ITを使いこなせる者と使いこなせない者の間に生じる、待遇や貧富、機会の格差。個人間の格差。あるいは国家間、地域間の格差のこと)の問題として語られます。実際今の世の中、情報に弱い人は何かと不利になります。消費生活においても就職においても、下手をすると騙されたり犯罪に巻き込まれる場合もあるのです。そんなことで、情報を持たない人は身体障害者のような社会的弱者とみなされるわけです。

 ただし、他の社会的弱者とちょっと違うのは、情報弱者は負の存在であり、排斥される対象と捉えられているところです。排斥というと言葉がきついですが、とにかくそういう弱者が「いなくなる」ようにするのが社会のあるべき姿として捉えられているのです。

 どんな田舎も光ケーブルを敷設してブロードバンド化する。どんな山奥だろうとケータイの電波の届かない場所をなくす。目や手の不自由な人でも使える情報デバイスを開発する。その上で、誰もがeメールが使え、eコマースで物が買えるようITリテラシーを啓蒙していく。そうした情報にアクセスしやすい社会を作るのが、社会が現在目指している目標のようです。

 つまり、情報弱者であり続けることを社会は許してくれないのです。そういった状況は、換言すれば交通弱者問題は子供や老人がいなくなればなくなるんだというような、乱暴な考え方のようなものだと言うことができるかもしれません。そうした乱暴な考えが生まれるのは、情報というものが人間にとって空気や食べ物のような生存に関わる基本的な要素と捉えられているからかもしれません。呼吸困難におちいった人には人工呼吸をするように、拒食症の人に対しては食べない自由を認めるのではなく、無理矢理にでも食べさせるように、情報不足の人にはまともな社会生活が出来るように嫌でも情報を流し込まなければならない、という論理です。果たして情報とは、生命維持に関わるような大層なものなのでしょうか。

 一見、誰もが情報にアクセスできるようになり、便利になるのは良いことで何も間違ってはいないと思えますが、一つの価値観が圧倒的な正しさを持って受け入れられるという状況は、得てして大いなる危険を内包しているものです。

 情報弱者が撲滅されるべきものとして社会に定着したら一体どうなるのか。情報弱者は常に敗者として認識されるようになるでしょう。その反対の情報強者という言葉がありますが、それは勝者として弱者に対し支配的優位に立つ人のことを指すようになるでしょう(今現在もそうなりつつあります)。本人の努力やインフラの整備にかかわらず、情報量の非対称は必ず発生します。その時、情報の多寡によって格差が生まれヒエラルキーが構築されるのです(例えば都市と地方では必ず情報量の差が生まれます。人が少なければ情報量だって必然的に少なくなりますから)。そうした格差社会は情報ジャーナリストの佐々木俊尚氏も予測し、受け入れざるをえないものとしています。その上で、その上下関係に流動性のある協働関係が生まれることを思い描いていますが、この両者は支配と被支配の対立関係になり、そこに互恵や協働の思想が介在することは難しいでしょう。なぜなら直接経済活動に直結する事なので競争原理が働いてしまいますし、更に先に書いたように、情報の少ない者(≒情報弱者)は駆逐されるべきネガティブな存在と捉えられているからです。

 具体的にそれはどんな社会なのか。例えば、敗戦後まもなく、GHQの占領下で国粋主義的思想は追いやられ、急速に欧米思想に染められていった時代、それまでの体制側の人間(それと共産主義者)が、社会から排斥されていった状況を思い起こせば、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。
強力な価値観は得てして、それに与さない者に対して強権的暴力となるものです。

 障害者や老人子供のような弱者は、それもひとつの個性、社会の要素として認め庇護し活かしていくというのが、昨今のバリアフリーやユニバーサルデザインの基本哲学となっています。情報弱者についてもその埒外とせず、情報が少ない人でも不利にならない社会を作ることこそが、本当に求められる姿なのではないかと思うのですが、それは不可能事のようにも思えるのです。
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