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2011年08月02日14:45

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【 GATE 】慈悲の光は千里を照らす (後編)

 
7月30日。
ドキュメンタリー映画『GATE』を上映する住吉区民小ホールは、
僧侶一行がトリニティー・サイトに辿り着くシーンの前から、早くも
会場のそこここで、静かなすすり泣きが聞こえていました。


【 GATE 】慈悲の光は千里を照らす (前編)  2011年07月31日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1756893185&owner_id=1833905



映画が終わり、温かい感動の余韻に包まれている舞台にすぐさま登場したのは、
黒いオフィシャルTシャツを着たマット・テイラー監督。
彼は、大学教授が考え事をするときのように、ずっと舞台を往復しながら
このドキュメントの裏話を語ってくれました。



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編集段階で監督が一番悩んだことは、この作品のターゲットをどこにするか。
つまり、「誰に向けた作品に作り上げるか」で非常に悩んだそうです。

その結果、一切の政治色・宗教色を排し、誰も非難せず、監督の主張も入れず、
ただ「実際にあったことを淡々とありのまま記録する」というスタンスで
編集したそうです。
これは、作り手にとって非常に難しい作業だったろうと私は思います。

実際、この映画には「アメリカ人にとって非常に厳しく、重い事実」が
たくさん含まれています。それに触れること自体は、構成上避けられない。
監督は、その事実で「誰かを責める」ことがないよう腐心した、と語りました。

それに成功したからこそ、この作品はアメリカ全土で自主上映されています。
平和を理解する輪は草の根で広がり、多くの人達が手をつなぎ始めました。
監督はこう語りました。


「この作品の自主上映運動を始めた頃、私は、強い反発があることも覚悟して
 いました。でも、そんな事態は意外なほど起きなかった。

 あるとき、アメリカ南部の退役軍人グループが自主上映会を開きました。
 参加者は皆さん80代の男性です。その年代の男性は、決して涙を流さない。
 私はそれまで、人生のあらゆる場面で、その世代の男性が泣くのを見たことは
 一度もありませんでした。

 その日も終映後に、私は、いつも通り参加者からの質問を受け付けました。
 映画が終わったとき、会場は異様に重苦しい沈黙に包まれていました。
 私は内心どうなることかとヒヤヒヤしながら、皆に質問を促しました。
 すると、一人の男性が手を挙げ、こう発言したんです。

 『映画の中で、1945年の6月には、既にロシアと日本の間で停戦交渉が
  始まっていた、と紹介されていた。それは、真実なのか?』

 私は『Yes.』と答えました。
 その瞬間、参加者達が、一斉にすすり泣きを始めたのです。
 この世代の男性達が泣くのを私が見たのは、本当に初めてのことでした…。」



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マル秘監督の裏話 《 トリニティー・サイトの GATE は、なぜ開いたか ?》


映画の中では「どうしてゲートが開いたかはよく分からない。ただ、僧侶達の話が
ホワイトハウスにまで上がっていたらしい」とだけ紹介されていました。

「けれど、実は裏話があるんです」と、テイラー監督。


僧侶達がトリニティー・サイトを目指して2500キロの行脚を続けている間、
テイラー監督は6度、ゲートを開けてくれるよう国防省へ掛け合いに行ったのだ
そうです。

「日本の僧侶達がやろうとしていることは、抗議活動ではない。
 反戦でも、反核でも、反米でもない。
 破滅の輪を閉じて世界を救うために、原爆の火を元の場所に運んでいるんです」

その話を聞いた担当者達は、決まってこう返事したとか。

「あなたの言ってることは、よく分かった。
 けれど、トリニティー・サイトは戦後60年間、誰にも門を開いていない。
 もし日本の僧侶達を受け入れてしまうと、アメリカが原爆を落としたことを
 謝罪することになってしまう。我々には、それを許可することができない」

何度も門前払いを喰らっているうち、僧侶達は目的地に辿り着いてしまいました。


ええい、こうなったら、出たとこ勝負で行ってみるしかないexclamation ×2と、
監督は肚を括ったそうです。
ところが、8月9日当日、国防省から1人の男性がやってきて、何も言わず
僧侶一行に合流しました。そして、奇跡は起こったのです。

ゲートが開いたことに正直驚きながら、監督は彼にこっそり尋ねたそうです。
いったい、裏で何が起きたのか?と。すると、彼の口から仰天の裏話が…。


「君が国防省に来た時、担当者が書類に一筆書けば、この話は終わっていたんだ。
 でも、6人の担当者達は誰も、それを書こうとしなかった。
 彼らは皆、マスコミ報道で僧侶達のことを知って、却下できなかったんだ。
 そうこうするうち、この話はホワイトハウスの方まで上がってしまい、
 遂にブッシュ大統領の耳にまで届いた。大統領は、こう言ったそうだ。

 個人的には、ゲートを開けて僧侶達を中に入れてやりたい。
 けれど、アメリカ大統領の立場としては、それを許可することができない。
 なので、ゲートを開けるか否かの大統領権限は、8月9日に僧侶を迎える
 トリニティー・サイトの門番の判断に一任する、と。」

  (見ず知らずの門番に大統領判断を委ねるとは、途方もない丸投げexclamation ×2げっそり)

「その話を聞いた時、我々関係者は(ゲートは決して開かない)と思った。
 なぜなら、その門番には、地元で知らぬ者はないエピソードがあったから。
 彼の父は日本軍の捕虜となり、帰らぬ人となった。
 日本軍は、捕虜の数を減らすため、彼らを死ぬまで歩かせ続けたんだ。」


なのに、トリニティー・サイトのゲートは開かれたのです。

監督は、なぜ開ける決断をしたのかを門番に直接尋ねました。 彼は答えました。


「これまで原爆記念日になると、毎年、世界中から、たくさんの平和団体が
 抗議活動にやってきた。
 彼らは皆、拳を振り上げ、怒鳴りながら、トリニティー・サイトに迫ってきた。
 だから私は、国を守るため、断固として彼らを逮捕し、追い返した。

 けれど、日本の僧侶達だけは違った。
 彼らは何も叫ばず、両手も下ろしたままで、笑顔を見せながらやってきた。
 その笑顔を見たとき、私は手に持っていた手錠と警棒を下ろすしかなかった。
 私はゲートを開けようと決め、彼らと握手を交わした。」


そのとき、この老門番は、自らの "心のゲート" をも開いたのでしょう。

憎しみからは、憎しみしか生まれません。
その連鎖を乗り越えるには、過去を許し合うしかないのです。



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テイラー監督は最後に、東日本大震災の話に言及しました。

『福島の原発がメルトダウンした!チェルノブイリ以上の被害だ!』
震災の翌日から、世界中のメディアが一斉に、そう報じていました。

けれど、日本国内だけは「原発の被害はたいしたことない」という報道ばかり。
テイラー監督は(日本は、被災地の子ども達は、どうなってしまうのか…)と
非常に心配していたそうです。

「我々の活動は、核兵器解体だけを目的にしていていいのだろうか。
 今まで予想もしていなかった原発事故。運良く事故が起きなくても、
 原発の廃棄物は数億年にわたって保管し続ける必要がある。
 とにかく今は一刻も早く、被災地の子ども達の健康をサポートしなくては…。」

というわけで、核兵器の買い取り資金にする上映会やグッズ販売の収益の一部を
被災地の子ども達への安全食支援に回すことにした、とアナウンスがありました。

「核兵器をなくすため、被災地に援助をするため、我々には何ができるだろう?
 今日ここにいらっしゃる皆さんは、既にその一歩を踏み出しています。
 入場料やパンフレット・絵本等の収益が、全て支援活動に回されるからです。
 こうした輪を、みんなの力で広げていきましょう!」


映画『GATE』は
監督、出演者その他すべての制作関係者が「無償参加して」作られました。
(すべての権利はGNDファンドに寄付されています)

上映会や読書会も、無償ボランティアスタッフによって運営されています。
その収益や寄付の全額は、核兵器解体と子ども達への支援に使われています。



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テイラー監督に続き、行脚のリーダーを務めた宮本師が舞台に登場しました。

開口一番、
「もしかしたら、我々は門の前で逮捕されていたかもとは。知らなかったです!」

会場はドッと笑いました。

でも、何も知らなかったのが良かったんでしょう。
さまざまなアメリカ人の善意に支えられながら、25日間の旅をしてきたお陰で、
僧侶達の「人を信じる心」は、とても強くなっていったと思われます。
だからこそ、トリニティー・サイトのゲート前で、自然に笑みがこぼれたはず。
もし、彼らが逮捕されるかも知れないと覚悟していたら、
警戒心が態度に出て、うまくいかなかったのでは?と私は感じました。


宮本師は、気さくな雰囲気で話を続けました。

「いや、実際のところ、歩いている時には、よく生卵が飛んで来たんですよ。
 それから、水も時々かけられました。
 あと、『ジャップ』という言葉を生で聞いたのも、初めてでしたわ。

 けど我々は、そういうことには いちいち対応せず、歩き続けました。
 そんなのに対応するために、わざわざ日本から来ている訳じゃないからね。
 自分のやるべきことを、ただひたすらにやるだけ、ですわ。」


映画の中で、そうした生々しいエピソードは、全てカットされていました。
わずかに、サンフランシスコを出た後で、
僧侶達を応援する人達だけでなく、「うざーい」などと冷やかす者もいた、とのみ
触れられただけでした。

ドキュメンタリーとは言え、編集=大幅な取捨選択=が施されている以上、
作品から得られる印象と、現実とは、かなり異なります。

それを忘れて描かれた話を鵜呑みにしてはいけない、と私は気を引き締めました。



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宮本師の話は続きました。

「私は曹洞宗の坊主なので、監督と違い、大きな視点では考えていないんです。
 世界平和とか、そんなスケールの大きなことは考えていません。

 皆さんも、小さなことでいいんですよ。
 無理する必要など決してない。 "自分にできること" をすればいいんです。

 自分の周りにいる、身近な人達と仲良くできなくて、世界を平和にできますか?
 そんなんムリですよ。
 みんなが、自分の周りを平和にする。
 それが広がっていけば、やがて世界は平和になるでしょう。」

肩の力がふっと抜けるお話でした。


上映会終了後、ロビーでサイン会がありました。
私はスターバックスの協賛で制作された絵本『ランタンとつる』を購入し、
監督と宮本師にサインをしていただきました。

宮本師は「慈光 照千里」と書いて、
禅宗でよく用いられる言葉なのだと教えてくださいました。

名もなき人々が、それぞれの守備範囲を慈悲の光で照らせば、
やがてその光は大きな1つにまとまり、千里をも照らし渡すことができる……。
そんなビジョンが見えました。
どこまでも続く平原を行く僧侶達を思い出した私は、ふと質問しました。


「あの、突然ですが、映画を観ていて、気になったことがあるんです。
 25日間で2500kmを歩くって、単純計算で1日100kmのペースですよね?
 でも、宮本さん達は、途中で地元の方達とよく交流をなさっていたから、
 そのロスを取り戻す必要がありますよね。
 結局、皆さんは1日何キロくらい、歩いていらしたんですか?」

私がこう尋ねると、宮本師は笑いながら種明かしをしてくださいました。

「ははは。 1日100キロなんて、とてもじゃないけど歩けませんよ!

 サンフランシスコに着いたとき、たくさんの僧侶がいたでしょう?
 我々は3〜4人で1組になり、40kmくらいずつリレーをしていたんです。
 予め交代地点を決めておいて、次の40kmを歩くメンバーは先回りしてました。
 もちろん、ランタンは常に、歩いている人が持っていましたから、
 2500kmの距離をちゃんと徒歩で運んだことには違いないんですよ。」

「あっ、そうだったんですか! よかったぁ〜あせあせ
 映画では宮本さんがずっと出ていたので、全行程を歩き通したかと思いました。
 皆さんがご無事で、本当に良かったです!
 ありがとうございました。」



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話は前後します。
上映後のトークショー・最後の語り手は、
アメリカで自主上映会を主宰した日本人・ようこスプリングさんでした。

 http://crystal-rainbow.com/gate/GoenPeaceNetwork_j.html

見るからにアクティブなアラフォー女性らしい彼女は、
3人の子を持つシングルマザー。
ミシガンに引っ越してきて、まだ言葉も覚束ない頃に、
『GATE』の自主上映会を開こうと思い立ったそうです。

(彼女のトーク内容がこちらにありました。不具合はありますがリンクします)
  http://crystal-rainbow.com/gate/About_j.html

長崎出身の彼女は、爆心地間近にある家で生まれ育った人です。
幼い頃から、原爆の体験者達と身近に接し、毎年8月が近づくたびに
地域の老人達が反核運動を展開する様を見てきました。


「けれど、お年寄りの方達は、最後に肩を落とすんですよ。
 我々がこんなことを続けていても、世界はちっとも変わらない、と…。
 無力感に俯く皆さんをなんとか笑顔にしたくて、希望を持ってほしくて、
 ミシガンに渡った私は、無謀とも言えるチャレンジをしました。

 アメリカ人達は、私が長崎出身だと自己紹介すると、全員引きました。
 彼らは、日本人にとても恨まれ、悪く思われていると怯えていたんです。
 そこで私が『恨んでない。大好きよ』と言うと、安心したような顔になり、
 力を貸してくれました。
 上映会は私1人の力ではできませんでした。みんなの力で、できたんです。」


ようこさんが語ったこのエピソードは、
誰も恨まず、誰も責めず、ただひたすらに平和を祈って
ランタンとともに歩き続けた僧侶達の姿と重なりました。

ここに、人間の美しい真理があると、私は学びました。



『GATE』上映会に運良く参加できて、本当に良かったです。


 
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